「アドバイス」が付加価値の源泉に=ファンドラップで提携広がる-日本資産運用基盤グループの大原社長
2022年04月13日 12時02分
大手証券や運用会社が、地銀・独立系ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)と提携し、顧客資産を包括的に管理する「ファンドラップ」の提供体制づくりを急いでいる。ファンドラップは、お客さまのライフプランに合わせて運用計画を立て、アドバイスを提供しながら、長期に資産運用するための金融商品だ。
日本資産運用基盤グループの大原啓一社長は、その背景について「販売手数料(コミッション)や信託報酬の引き下げ競争が激化し、証券販売(ブローカレッジ)や資産運用(アセットマネジメント)分野の利潤が低下する中で、利潤が残る最後のフロンティアとして『資産運用アドバイス』が注目されているためだ」と分析している。
ファンドラップは、個人投資家と金融機関が投資一任契約を結び、資産運用から管理までの包括的なサポートを、長期間にわたって提供する金融サービスだ。サービス開始時には、顧客のライフプランを作成、それに合った資金計画を立て、国内外の株式や債券などに分散投資するポートフォリオで運用する。その後も、定期的に運用状況を報告し、家族構成の変化などに合わせて計画を見直す。
ファンドラップは、預かった資産残高に応じて一定比率のフィー(管理報酬)を受け取る仕組みだ。お客さまにアフターフォローしながら、長期の資産運用をサポートしやすい。売買手数料(コミッション)を収益の源泉としないため、短期間に売買を繰り返す必要はなく、お客さまとの利益相反を防ぐことができる。
行政の動向を見ると、金融庁は昨年1月、「顧客本位の業務運営に関する原則」を改訂した。同原則の実効性を高め、さらに進展させるために、金融機関に対して「顧客の意向を確認した上で、まず、顧客のライフプラン等を踏まえた目標資産額や、安全資産と投資性資産の適切な割合を検討し、それに基づき、具体的な金融商品・サービスの提案を行うこと」を新たに求めた。販売後についても「顧客の意向に基づき、長期的な視点にも配慮した適切なフォローアップを行うこと」とした。
一方、個人投資家は、金融庁の報告書をきっかけに「老後資金2000万円問題」の議論が盛り上がったことや、コロナウィルスの感染拡大で経済の先行きに不安が広まったことで、資産形成に対する関心を高めている。ただ、コロナショックやウクライナ情勢などで価格変動の大きなマーケットに直面していることから、「『自分たちだけで資産形成するのは難しい。専門家のサポートがほしい』として、アドバイスを求める声も強まっている」(大原社長)という。こうした環境の中で、ファンドラップが大きな広がりを見せるかもしれない。
金融庁「顧客本位の業務運営に関する原則」(改訂版)
https://www.fsa.go.jp/news/r2/singi/20210115-1/02.pdf
金融庁「顧客本位の業務運営に関する情報」
https://www.fsa.go.jp/policy/kokyakuhoni/kokyakuhoni.html