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若い時からしっかり投資を=「ライフサイクル投資術」を紹介-大和アセット

2020年11月20日 10時51分

 「若い人は『リスクを取れるのにお金がない』ので十分に投資ができない」「高齢者は『大きなリスクを取れないのにお金がある』ので投資をやり過ぎてしまう人がいる」-。米国の経済学者イアン・エアーズ氏は、こうした個人投資家が抱える「お金とリスク許容度のミスマッチ」に、斬新なアイデアとデリバティブ(金融派生商品)で挑戦した。

大和アセットマネジメントWebサイトより大和アセットマネジメントWebサイトより

 大和アセットマネジメントは同氏の著書「ライフサイクル投資術(LIFECYCLE INVESTMENT)」(日本経済新聞出版、翻訳:大和アセットマネジメントの望月衛氏)をホームページで紹介している。同社ベータ・ソリューション運用部の土本直樹シニア・ファンドマネジャーに書面で取材した。

 エアーズ氏は、生涯を通したライフサイクルの中で資産運用を考えることを提案、①若年期にはデリバティブを使って少ない投資金額でも十分なリスクを取り、積極的にリターンを獲得する ②高齢期には、十分な資産を保有しているので、リスク量を抑制した運用をする-ことで、それぞれの年齢に合ったリスクを取ることができるとしている。

 土本氏は、エアーズ氏の主張のポイントについて「レバレッジを用いて株式への投資を行うことで、人的資本を含めた総資本に対して一定の比率で投資を行うことができ、ゴール時点のリスク(富のばらつき)が小さくなるというものだ」と分析。「米国の過去データや日本・英国のケース、株式の期待リターンが減少した際のシミュレーションなど豊富な事例が本書にある。投資額のいわゆる分母を、現在の資産ではなく、ゴールに置いたことが斬新なアイデアだ」とコメントしている。

 米国では、異なるアセットに分散投資するモダンポートフォリオ理論が浸透し、資産運用に1度目の革命が起きた。ただ、エアーズ氏の提案に対して「米国ではいわゆる『炎上』のような形で批判が目立った。アイデア自体の革新性、出版時点から現在までの高い株式リターンの追い風もあったが、ファンドや運用プロダクトに結実せず、2度目の革命は起きなかったのが現実だ」(土本氏)という。

 一方、大和アセットマネジメントは、「『ライフサイクル投資術』を実践できるツールを意識して、『iFreeレバレッジ』シリーズの設定を行っている。さまざまなシミュレーションを行っており、ホームページに動画等を掲載している」(土本氏)という。また、販売用資料として「資産運用を加速させる!“ツミレバ”という選択肢 『iFreeレバレッジ』シリーズ活用術」を作成した(ツミレバは、長期積み立て投資の「積み」とレバレッジの「レバ」を組み合わせた言葉)。

 デリバティブと言えば、例えば「投資額がゼロになるだけでなく、それを超えた負債を負うのではないか」など、怖いイメージがある。これに対して土本氏は「投資信託では基準価額がマイナスになることを避けることが大前提であり、デリバティブ取引の扱いも投資信託協会が定める規則で定められている。『iFreeレバレッジ』シリーズは、レバレッジ倍率の設定など商品組成の段階から、基準価額がマイナスとなるリスクを回避する設計を最優先事項としている」としている。

このファンドシリーズで運用を考える際の注意点について、土本氏は、「ボラティリティが大きい商品で下落時に恐怖心から投資をやめてしまうことが最大のデメリットといえる。メリットとしては、ボラティリティが大きな商品には高いリターンを期待して投資していると考えられるが、それが実現したときには大きな成果が期待できる」としている。

 この商品で積み立て投資をする場合、加齢に応じてポートフォリオのリスク水準をそれぞれのリスク許容度に応じて引き下げることも大切だろう。土本氏は「『100-年齢』などで株式エクスポージャーを減少させていく簡便化した方法は理解しやすく、ゴール達成後のリスク調整に用いることができる。ルールを定めて機械的にこなしていくのが理想的だ」とコメントしている。

 最後に、若年層へのアドバイスについて「日本では、若年期の投資比率が低く、リタイア近辺で比率が上昇する『山形傾向』が諸外国と比べても顕著だ。本書の内容は異端ではあるが、若いうちにしっかり投資する議論の一助になればと思っている」としている。
(了)

 

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