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資産運用の重要性に気づく=新型コロナ感染拡大が影響-フィデリティ調査

2020年11月18日 16時27分

 フィデリティ・インスティテュート退職・投資教育研究所(野尻哲史所長)が10月に実施した「ビジネスパーソン1万人アンケート」によると、新型コロナウイルスの感染拡大が、資産形成の必要性を認識させる機会になったことが分かった。

フィデリティ・インスティテュート退職・投資教育研究所(野尻哲史所長)

◆「減額・中止」は約1割にとどまる
 調査は10月に、会社員と公務員合わせて約1万2000人を対象に、インターネットで実施した。この中で、新型コロナウイルスの感染拡大が資産運用に与えた影響を尋ねたところ、投資を「減額したり、中止したりした人」は10.9%と約1割にとどまった。一方「増額したり、始めたりした人」は9.6%だった。残りの約8割は、「投資を継続した人」や「もともと投資をしていなかった人」で、影響を受けなかった。

 それぞれに理由を尋ねたところ、減額などをした人では、「相場急落で怖くなった」は31.0%にとどまり、「収入減で余裕がなくなった」が61.2%を占めた。一方、増額などをした人では「収入減などで資産運用の重要性に気が付いた」(46.5%)、「相場急落で(安く買えると)投資に前向きになった」(39.8%)の順番だった。

 野尻所長は「減額・中止した人の理由では『収入が減った』が6割を占め、『相場変動が大きくて怖くなった』という人が意外に少なかった」と指摘した。一方、「増額や運用を始めた人では、『相場下落がチャンスだ』と思った人より、『資産運用の重要性を実感する機会になった』という人が多いことに驚いた。雨の日に備えることは大切だ」と述べた。

◆コロナで4割が収入減
収入面では、「変化はない」が約6割を占めたが、「毎月の収入が減少」(18.9%)、「ボーナスが減った」(16.5%)、「収入が全くない」(2.3%)と約4割がマイナスの影響を受けた。内容を分析すると「若い世代や、年収が相対的に低い人が大きな影響を受けている」(野尻所長)という。

 年収が減った人(約4500人)に対応策を尋ねたところ、「支出を削減した」が52.8%と半分を占めた。さらに「支出削減に加えて資産に手を付けた」(29.0%)、「支出を減らさず、資産に手を付けた」(18.3%)と、半数の人が資産を減らしていることが分かった。
 
 野尻所長は「コロナの影響で約4割の人の収入が減り、そのうちの半分が資産を取り崩しており、国民の家計に大きな影響を与えていることがデータからもうかがえる」と述べた。

投資家比率(投資をしている人の比率)が上昇

◆投資家比率は4割と過去最高
 この調査は2010年から実施している。投資をしている人の割合は全体の40.5%で過去最高になった。15年は30.4%と最低だったので、5年間で10ポイント上昇した。野尻所長は、増加の要因について「NISA(少額投資非課税制度)の導入などにより、男女とも20代、30年代が全体平均を上回って上昇していることが影響している」と分析している。

 また、長期・分散・積み立て投資の理解度も上昇した。「長期投資」については 54.7%が、「分散投資」は52.0%が、「積み立て投資」は37.1%が、それぞれ「有効だ」と回答した。このほか、iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の認知度は57.8%と前年(50.6%)から大きく上昇し、確定拠出年金の56.5%を上回った。
(了)

 

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