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不動産も国際分散投資を=住宅市況は世界的に上昇-ドイチェAMの小夫氏

2021年12月03日 09時00分

ドイチェAMの小夫氏

 ドイチェ・アセット・マネジメントは「コロナ後の不動産投資市場の見通し」をテーマに勉強会を開催した。オルタナティブ調査部長アジア太平洋不動産リサーチヘッドの小夫孝一郎氏は「株式と比較すると、不動産の国際分散投資は遅れているように思う」と指摘、不動産投資の現状と魅力について語った。

◆上昇するマンション価格

-不動産市場の現況は。
 
 住宅価格が高騰している。東京23区の新築マンションの平均販売価格は9000万円台に上昇し、過去最高水準だ。中古マンションも平均6000万円台に上昇している。東京の不動産市況は東京五輪が終わったら下落すると言われていたが、そうした予想を覆し、コロナウイルスのまん延で経済活動が停滞する中でも上昇している。
 
 世界的にも不動産市況は好調で、欧米やアジアの主要都市では、中古マンションを1億円以下で買える都市が、ほとんどなくなってきた。かつて「日本の住宅価格は、世界一高い」と言われていたが、そうした状況が変わってきた。

-中国の不動産市場は。
 
 不動産開発大手の中国恒大集団が経営不振に陥っており「中国の不動産バブルが崩壊するのではないか」と懸念する声が聞かれる。ただ、現地の状況を見ると、マンション需要は非常に強い。価格調整はあると思うが、暴落することはないだろうと見ている。

-東証REIT指数は。
 
 東証に上場するJ-REIT(上場不動産投信)の全銘柄の時価総額を加重平均した東証REIT指数は、コロナショックで一時急落したものの、現在はコロナショック前の水準をほぼ回復している。
 

東証REIT指数の推移東証REIT指数の推移(クリックで表示)

 セクター別にみると、「物流施設」がコロナ前の水準を大きく上回って回復している。Eコマース(電子商取引)需要が、コロナ対応で加速しているためだ。「リテール(商業施設)」「ホテル」も、経済活動の再開に伴って回復してきた。ただ、「オフィス」は、出遅れている。

◆オフィス賃料は調整

-オフィス賃貸市場は。
 
 在宅勤務が広がったことで、オフィスの空室率が上昇している。このため、オフィスの募集賃料は下がり始めている。先行きについては、見方が分かれており、働き方改革の中で在宅勤務が一定程度続くとする声がある一方で、情報セキュリティーの観点からどこかの時点でオフィス勤務に戻す動きが出てくるという声もある。このため、募集賃料は、しばらく調整局面が続くが、リーマンショックのときのような大きな下落はないと見ている。

-賃貸マンション市場は。
 
 首都圏の賃貸住宅の賃料は、都心部に近く、学生や飲食業界に勤める単身者が利用するような小さな物件で下がり始めている。ただ、山手線の外側の物件などは、コロナの影響を受けていない。賃貸マンションを保有しているJ-REITの中には、新規の募集賃料を一時的に引き下げているものもあるようだ。

-物流施設の賃貸市場は。
 
 東京、大阪とも今年、大きな物流施設が完成した。このため、来年は一時的に空室率が上昇すると見ている。物流網の移転には時間がかかるためだ。ただ、物流需要は今後も堅調に推移すると見ており、賃料が大きく調整することはないだろう。

◆リスク対比の高リターンが魅力

-不動産投資の課題は。
 
 日本では、海外への不動産投資が活発ではない。株式と比較すると、不動産への国際分散投資は遅れているように思う。
 
 過去20年のデータを使って、日米英で実物不動産に投資した場合のトータルリターンを比較したところ、米英に投資した方が日本に投資するより大きなリターンになった。その要因は、米英が「人口が伸びている国」「インフレがある国」だからかもしれない。
 
 実物不動産投資の魅力は、リスク対比のリターンが高く、現在はデータ整備も進んできたのでそれを統計的に証明できるようになってきた。債券や株式に投資した場合に比べると、実物の不動産投資ではボラティリティ(価格変動率)を抑えることができる。超低金利で債券からの利息収入が期待できない中で、賃貸収入が期待できる不動産投資は、今後も魅力的な投資対象だろう。

-不動産とESGの関連は。
 
 ESG(環境・社会・ガバナンス)が、不動産の分野でも注目されている。物件ごとのESG対応や、ポートフォリオに占めるESG物件の状況など、ディスクロージャー(情報開示)が強化されている。欧米では政府機関が環境認証を取ったオフィスしか利用しないといった動きも出ており、重要性が増している。

 

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