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フィデリティ、独自の気候格付けで企業を評価=温室ガス・ネットゼロに向けて

2021年11月02日 09時00分

企業はスコアに応じて、5つのグループのいずれかに分類される企業はスコアに応じて、5つのグループのいずれかに分類される(クリックで表示)

 大手運用会社のフィデリティ・インターナショナルは、独自のクライメートレーティング(気候格付け)で企業を評価し、投資判断に活用する。今後、日本企業300社を含む、世界4000社に格付けを付与する方針だ。こうした対応により、2050年までに投資先企業の温室効果ガス排出量をネットゼロにすることを目指す。

 この格付け作業には、各国に駐在する400人超のアナリストやスペシャリストが参加し、企業の取り組みとネットゼロ目標の適合性について、5段階で評価する。「ネットゼロを達成した企業」や「責任を持って計画を実施している企業」は、ポートフォリオの対象とする。「対応が不足している企業」については、投資を継続しつつ、エンゲージメント(建設的な対話)や議決権行使によって、ネットゼロに向けた対応を促す。

 ただ、エンゲージメントを3年程度実施しても、目標に向けて進展が見られない企業については、売却を検討する。また、燃料用石炭セクターについては、投資を段階的に削減する方針で、経済協力開発機構(OECD)加盟国では2030年、世界全体では40年までに投資を止める。


◆「隠れグリーン企業」が多い=日本企業の特徴

フィデリティ投信(本社東京)の井川智洋ヘッド・オブ・エンゲージメント兼ポートフォリオ・マネージャー

 フィデリティ投信(本社東京)の井川智洋ヘッド・オブ・エンゲージメント兼ポートフォリオ・マネージャーは、日本企業の現状について、「企業の開示データのみに基づいてレーティングすると、欧米企業と比べて、ネットゼロの取り組みが遅れているように見える。しかし、各国に駐在するアナリストに『野心的な削減目標を掲げている企業の割合』を調査したところ、日本企業では6割超と欧州企業に次いで高いことが分かった」と指摘した。

 その上で「こうしたギャップが、運用会社にとっては投資機会につながるので、ネットゼロに野心的に取り組む企業を発掘し、投資していきたい。同時に、エンゲージメントを実施することで、情報開示を促したい」と述べた。


◆日本経済が低成長を脱するチャンス

 また、ネットゼロを推進するグリーン戦略の効果について、「日本経済が長年にわたって低成長に陥ってきた、二つの原因を解消するチャンスだ」と指摘した。

 井川氏は、日本企業の抱える積年の課題として「付加価値に見合った価格設定をしていない」「労働生産性が低い」を挙げた。その上で、価格設定については「グリーン戦略の中でイノベーション(技術革新)を実現すれば、それに見合った値上げをする機会になる」と述べた。また、労働生産性については、「企業が新規事業に取り組んだり、活発に事業再編を行ったりする中で、人材の流動化が進み、労働生産性が向上するだろう」と指摘した。

 

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