〔深読み米国株〕S&P500、2カ月連続で下落中=10月相場に乱高下の芽
2023年09月19日 13時10分
9月18日のS&P500指数は8月終値を1.2%下回っている。このまま月末を迎えれば、昨年に続く2カ月連続安で9月の取引を終えることになる。こう着状態を続けた後の相場は乱高下しやすいとされ、「荒れる10月」の可能性が意識される。
米国株については、秋に値下がりするアノマリー(理論的な説明の難しい経験則)が知られている。有名な相場格言「Sell in May and go away, remember to come back in September.(5月に売って市場を去り、9月に戻れ)」もそのひとつだ。格言通りなら、株価の安い9月は安値を拾う好機だ。
たとえばS&P500の「9月末買い・12月末売り」トレードは、昨年までの10年で9勝1敗だった。値下がりに終わった2018年も含めた平均騰落率はプラス5.4%と、単なるアノマリーで片付けるのがためらわれるほどの好成績を収めている。
では、今年も「9月買い」に勝算はあるのか。米国株情報の日本語メディア「バロンズ・ダイジェスト」は9月17日付で「先週の株式市場は反発した後にスタート地点に戻る」と題する記事を配信した。同記事は経済指標は見方や注目点によって良くも悪くも見えることを挙げ、「連邦準備制度理事会(FRB)の次の動きは強気にも弱気にも解釈できそうだ」と指摘。相場の方向性が出てくるのは「もう少し先」との見方を示した。
一方、今年10月以降、相場が上下どちらかに動きだせば、値動きは一段と大きくなる可能性がありそうだ。というのは、投資家の損益状況が似通っているためだ。
市場は日々、それぞれ異なるバックグラウンドを持った無数の投資家が取引している。5ドルの株は2ドルで仕込んだ投資家にとって含み益の厚い虎の子だが、10ドルで買った投資家には含み損を抱えたストレスの種かも知れない。
ところが、足元のS&P500は多くの投資家にとって6%内外の含み益を持つ状態になっている。月末終値の平均値(今年9月は9月18日終値)を取ると、直近1年で4191、2年で4224、3年で4150と狭い値幅に集中している。S&P500が4%上昇すれば、1年スパンで保有する投資家も3年にわたって月末終値で積み立て投資してきた投資家も一斉に含み益が10%前後に膨らむ。6%ほど下落すれば含み益はほぼゼロになる。損益状況が同じ市場参加者が、売りでも買いでも同じ投資行動を取れば、株価は上下どちらにもオーバーシュートすることになる。レンジ相場に慣れきったタイミングで急騰・急落はやってくる。(編集委員・伊藤幸二)