〔深読み米国株〕フィンテック、勝負の分かれ目はワンストップ化
2023年07月27日 17時00分
SNS大手ツイッターが7月24日、X(エックス)に名称を変更した。ツイッターのオーナーで電気自動車大手テスラを率いるイーロン・マスク氏が目指す、金融取引もできる万能アプリ導入に備えた措置だ。金融とITを融合したフィンテック分野の主導権争いは、金融機関とテクノロジー企業の「ワンストップ化」競争になりつつある。
マスク氏は今年3月、ツイッターの多機能化構想を披露。送金サービスなどを盛り込むことで「世界最大の金融機関になれる」と語った。既存のプラットフォームに金融サービスが加わることで、やりたいことに応じて異なるアプリを立ち上げるわずらわしさから顧客は解放される。
米国株情報を日本語で伝える「バロンズ・ダイジェスト」は7月26日、「マスク氏は『X』で何を目指すのか」と題する記事を掲載した。同記事によれば、マスク氏の多機能アプリ構想はツイッター買収より前の1999年にさかのぼり、消費者金融、コミュニケーション、エンターテインメントを組み合わせたアプリが土台になっているという。
すべてのサービスを単一のアプリで完結する「ワンストップ化」はコンセプトこそシンプルだが、実現は容易ではない。先のバロンズ・ダイジェスト記事は、グーグルの親会社アルファベット(GOOGL)とアマゾン・ドット・コム(AMZN)が広告や電子商取引、決済、クラウドなど多様なサービスを提供するが、「スーパーアプリ企業ではない」とする現地アナリストの見方を紹介している。
ただ、こと金融に関しては「ワンストップ化」という方向性は正しいようだ。米フィンテック企業のウィブル・フィナンシャル(フロリダ州)は証券取引や金融・経済教育、顧客が自発的に形成する「コミュニティ」での交流などが可能な専用アプリの提供を2018年に開始し、約1000万人の顧客を獲得。今年4月には日本法人ウィブル証券(東京)を開設するなど世界展開を進めている。米国では、最初に無料取引アプリのロビンフッド・マーケッツ、次にウィブルで口座を開くと言われるほどの勢いだ。
ウィブルのデニエー最高経営責任者(CEO)は自社の特長について「学ぶ、共有する」を挙げ、さらに専用アプリの多機能化を急ぐ方針を強調した。さて、ワンストップ化が実現したら次は何で競争するのだろう。(了)