シンガポール証取、アジアで初めてSPAC上場解禁=市場活性化を期待
2021年09月02日 20時28分
【シンガポール時事】シンガポール取引所(SGX)は2日、シンガポールの証券取引所への特別目的買収会社(SPAC、スパック)上場を3日から認める方針を表明した。ロイター通信によると、SPAC上場が解禁されるのはアジアで初めて。東南アジアの新興企業が「SPACブーム」に沸く米国での上場に向かう流れに歯止めをかけ、大型案件を呼び込んで市場活性化を図りたい考えだ。
SGXは、SPAC上場を申請する際に適用する基準を発表した。SPACの時価総額の最低額は1億5000万シンガポールドル(以下ドル、約123億円)に設定した。当初は3億ドルを想定していたが、市場関係者の意見を踏まえ、ハードルを下げた。
SPACは、投資家から資金を募る時点では買収先が決まっておらず、「白紙小切手会社」とも呼ばれる。SPAC自体は事業を行わないのが一般的で、上場後、急成長を見込める新興企業などを買収・合併する。一定期間内に企業買収が実現しない場合、清算される。SGXは清算に至るまでの期間を、「上場から24カ月。条件を満たせばさらに12カ月の延長を認める」と定めた。
SGXの規制部門幹部は声明で、「SPAC(解禁)により企業は資金調達の別の手段を得られる。投資家にとっても選択肢が増える」と強調した。
SPACとの合併を通じた上場は「空箱上場」とも呼ばれる。手続きが比較的簡易なため新興企業が速やかに上場して資金を調達できる利点がある。しかし従来の新規株式公開(IPO)で求められる厳格な審査を経ないため不透明さが残り、「裏口上場」との指摘もある。
シンガポールで急成長を遂げる新興企業も相次ぎ、米国でのSPAC上場計画を打ち出している。配車サービス大手グラブは、米投資会社アルティメーター・キャピタルのSPACとの合併を通じた米ナスダック上場を目指している。不動産情報サイト運営のプロパティーグルも7月、ナスダック上場のSPACとの合併を通じてニューヨーク証券取引所に上場すると発表した。(了)