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銀証ファイアウオール、規制緩和に懸念の声=金融庁作業部会、企業調査を公表

2021年04月15日 16時41分

時事時事

 金融庁は15日、金融審議会(首相の諮問機関)市場制度作業部会を開催した。金融グループ内の銀行と証券会社の間で、顧客の同意なしに顧客の非公開情報を共有することを禁じる「ファイアウオール規制」について議論。銀証間の情報共有の在り方について、金融庁が取引先企業の意見を聞き取り調査した結果を提示した。企業からは、自社情報は自ら管理し、個別事案ごとに情報共有の範囲を選択したいとの声が多数出た。経営難など機微に触れる情報が証券会社の営業活動に勝手に利用されることへの不安の声など、銀行の優越的地位の乱用を懸念する声も寄せられた。

 調査は、経団連とも連携し、2020年9月から21年3月にかけて計37社を対象に実施。内訳は上場企業31社、非上場企業6社。この中で、企業からは、個別事案ごとに情報共有の可否を判断したいとする企業が21社に上った。理由は、銀行の持つコベナンツや決済の情報について、グループの証券会社に共有されることへの懸念(5社)のほか、国内金融機関では、必ずしも銀証連携によるメリットを感じない(3社)との意見もあった。

 情報共有の管理に関し、守秘義務契約による対応に一定の理解を示す回答が多数(15社)あった一方、情報共有を拒否できるような法令上の仕組みの維持を求める企業(12社)もあった。「大企業以外の場合、実務負担の増大や守秘義務契約の内容に関する交渉力に懸念がある」との指摘もあった。

 特に優越的地位の乱用に関しては、「仮に企業業績が悪化した局面を想定すると、独立系証券会社からは銀行の債権放棄も含めた提案がありうる一方、銀行系証券からはそのような提案は難しい」との懸念も示された。

 逆に、銀証連携によるメリットを享受できたとの回答もあった。

 欧米金融機関では、ファイアウオール規制がない代わりに、必要のない役職員が顧客情報を共有すること禁じ、独立したコンプライアンス部門が情報管理している。また、米国では重要未公開情報を不正に利用すると、金融機関に民事制裁金が課せられる。

 委員からは「国際競争上、規制緩和は必要かと思うが、民事制裁金などの罰則が欧米にはあり、日本と異なる点だ」との指摘があった。優越的地位の乱用の観点から「上場企業か非上場か、大企業か中小企業か、顧客の属性に応じた規制もあり得る」との声もあった。

 また、「企業側からは非公開情報の共有は個別に判断したいとの回答を得ており、自社情報は自社で管理したいとの声を尊重してほしい」との慎重論も出た。「顧客の利便性向上につながるなら緩和もあり得るが、利点がよく分からない」との意見もあった。

 作業部会は今後、国内の大手銀行や大手証券の実務の実態について検証する予定だ。(了)

 

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