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〔指標予測〕大企業製造業の業況判断DI、マイナス31=6月短観―7月1日発表

2020年06月19日 17時32分

AFP時事
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 日銀が7月1日に6月の企業短期経済観測調査(短観)を公表する。6月19日午後5時時点で民間調査機関など17社の予想をまとめると、大企業の景況感を示す業況判断DIは製造業がマイナス31、非製造業はマイナス20で、ともに前回(3月)調査から大幅に悪化する見通し。新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大したほか、国内で緊急事態宣言が発令されて経済活動が停滞した影響が大きく表れ、「幅広い業種において一段の悪化が示される公算が大きい」(みずほ証券の上野泰也氏)という。マイナス幅はリーマン・ショック時に並ぶ記録的な落ち込みとなりそうだ。

 注目される製造業のDIは6四半期連続の悪化。前回調査からの悪化幅は23ポイントで、リーマン・ショック後の2009年3月調査に記録した34ポイント以来の大きさとなる。新型コロナの感染拡大による需要の縮小で輸出や個人消費が急速に落ち込んでおり、「全ての業種が悪化する」(三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎氏)とみられる。特に、世界的に販売や生産が落ち込んでいる「自動車」の悪化幅が大きくなりそうだ。

 非製造業DIの前回調査からの悪化幅は28ポイントとなり、製造業を上回る見通し。「悪化が深刻」(野村証券の棚橋研悟氏)なことを示しそうだ。緊急事態宣言を受けた外出の自粛やインバウンドの激減が響き、「宿泊・飲食サービス」など、個人向けのサービスが大幅に落ち込む見通し。

 3カ月後のDIは製造業がマイナス24、非製造業はマイナス15。経済活動の再開を受けていずれも改善が予想されるが、「景気回復は緩慢とみられるほか、(新型コロナ)感染『第2波』への警戒もあり、改善は小幅にとどまる」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏)とみられている。

 20年度の設備投資計画(大企業全産業)は前年度比2.4%増。5G(次世代通信規格)や都市開発需要が底堅いとの分析があり、前回調査の1.8%増から小幅に上向く見通し。ただ、収益の落ち込みや新型コロナの再拡大に対する懸念が重しとなり、例年と比べて小幅な上方修正にとどまる公算が大きい。

▽丸山義正・SMBC日興証券チーフマーケットエコノミスト=前回の3月調査ではコロナ禍の悪影響が十分に反映されず、大企業全産業の現状判断DIは中立を意味するゼロを確保し、縮小局面入りを回避した。製造業はマイナス8とマイナス圏へ転落したが、非製造業がプラス8とプラス圏を維持したためだ。しかし、緊急事態宣言の発令などに伴い日本経済、そして企業業績は4、5月に大きく落ち込んだ。月次の景況感調査などを見る限り、6月も景況感の改善は進んでいない。6月調査において現状判断DIは大幅な悪化が避けられない。

 関連する景況感調査に加え、ハードデータの動向などを踏まえ、6月調査で大企業製造業の現状判断DIはマイナス29、非製造業のDIはマイナス22へ、ともに大幅な悪化が予想される。3月調査の先行き判断DIは製造業がマイナス11、非製造業はマイナス1だったため、大幅な下振れである。中小企業の業況判断は大企業以上の悪化が避けられないだろう。大企業に比べ資金繰りにおける制約が厳しく、景況感の悪化につながるためだ。加えて休業要請の影響を色濃く受ける宿泊・飲食サービスなどのウエートが大きい点も響く。

 設備投資計画は、2019年度実績と20年度計画とも、大幅な下方修正が避けられないだろう。20年度は今後上方修正される見込みだが、現段階では不透明感が企業の投資を妨げる。20年度計画は3月調査の段階で大企業全産業が前年度比1.8%増となった。しかし、業況判断の大幅悪化が示す業績の落ち込み、そして不透明感の高まりなどを踏まえ、6月調査では6.9%減へ顕著な下方修正が施されるだろう。

▽上野泰也・みずほ証券チーフマーケットエコノミスト=前回3月調査では、大企業製造業の業況判断DIは5四半期連続の低下で、2013年3月以来のマイナスだった。一方、大企業非製造業のDIは、3四半期連続で低下したものの、プラス8で踏みとどまった。

 もっとも、3月調査は2月25日~3月31日に実施されており、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言の下での、さらなる景気悪化を織り込んでいなかった。今回の短観では、幅広い業種において景況感の一段の悪化が示される公算が大きい。

 20年度の設備投資計画は、内外で景気が断層的に悪化した上に先行き不透明感がきわめて強い中、例年対比でやや慎重な修正になるだろう。

▽宅森昭吉・三井住友アセットマネジメント理事・チーフエコノミスト=大企業製造業の業況判断DIはマイナス38と3月調査から30ポイント程度悪化するとみた。リーマン・ショックの影響が大きく残っていた09年6月調査(マイナス48)以来の低水準になろう。新型コロナウイルスの感染拡大予防のための緊急事態宣言は5月25日に全面的に解除されたが、経済活動縮小の悪影響で景況感が急激に悪化しよう。

 大企業非製造業の業況判断DIはマイナス15程度と、一気に2桁のマイナスに転じるとみた。非製造業がマイナスになるのは11年6月調査のマイナス5以来で、リーマン・ショック後の09年12月調査のマイナス22以来の低水準になるだろう。6月調査の大企業製造業の業況判断DIが予測通りの場合、3月調査の「先行き見通し」のマイナス11を27ポイント下回る。事前の予想を大幅に下回り、思ったよりは景況感が相当下振れたことになる。また、大企業非製造業が予測通りならば、3月調査の「先行き見通し」(マイナス1)を14ポイント下回る。非製造業でも前回調査時の先行き予想を大幅に下回ったということになろう。

 日銀短観の大企業業況判断DIの9月までの「先行き見通し」は、QUICK短観やロイター短観などを参考にすると、製造業で6月実績と比べて7ポイント改善のマイナス31、同非製造業は6月実績から3ポイントの改善のマイナス12と予測した。

 20年度の大企業全産業の設備投資計画は前年度比1.3%増と予測した。3月調査の1.8%から増加率がやや鈍化すると予測した。他の統計の設備投資計画や、過去の修正パターンなどを参考にした。

▽小林真一郎・三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員=業況判断DI(最近)は、大企業製造業では前回調査(3月調査)から23ポイント悪化のマイナス31と予想。新型コロナウイルスの感染拡大が大きく影響し、6四半期連続で悪化すると予測する。先行きは、感染抑制と経済活動の均衡を探るフェーズに移行したことで足元が景気の底だとの認識が支配的となりつつあり、7ポイント改善するだろう。大企業非製造業の業況判断DI(最近)は前回調査から17ポイント悪化のマイナス9と予測。前回調査で急激に悪化した宿泊・飲食サービスをはじめ、新型コロナウイルスの影響で需要が激減したサービス関連業種を中心に悪化が続こう。先行きは製造業と同様に改善するも、一部に需要が遅れて落ち込む業種があるため、2ポイント改善のマイナス7と、改善は小幅にとどまろう。

 20年度の設備投資計画は、6月調査で大きく上方修正されるケースが多い中、新型コロナウイルス感染拡大が企業業績を下押しし、将来の不透明感を高めており、例年よりも弱い修正幅にとどまろう。ただし、景気に左右されにくい省力化投資などに下支えされ、プラス成長は維持されよう。

▽大和総研の山口茜研究員、小林俊介シニアエコノミスト=前回調査後、新型コロナウイルスの影響が深刻化して売り上げが落ち込み、業況判断を悪化させたとみている。 足元では国内外ともに経済活動が再開され、景気は緩やかな回復基調に転じているとみられることから、先行きの業況判断DIは製造業・非製造業ともに改善する見込みだ。ただし、引き続き一定の感染拡大防止策が実施されていることや、新型コロナウイルス感染の第2波への懸念が強いことから、上昇幅は小幅にとどまろう。

 20年度の設備投資計画は全規模全産業(含む土地、ソフトウエアと研究開発投資額は含まない)は前年度比2.6%減となり、前回調査(0.4%減)から下方修正されると予想する。通常、6月短観の設備投資計画は、中小企業を中心に上方修正されるというクセがある。しかし、3月時点の計画で投資額の伸び率が極めて高かったほか、新型コロナの影響を踏まえて設備投資計画の見直しが広がると考えられるため、今回はリーマン・ショック時以来の下方修正を予想した。

▽棚橋研悟・野村証券エコノミスト=コロナ禍により、リーマン・ショック以来の景況感大幅悪化を予想する。業況判断DIは大企業製造業、大企業非製造業とも、前回調査(3月)比でいずれも大幅悪化が予想される。大企業非製造業のDIは東日本大震災後の11年6月調査以来のマイナスが見込まれる。参考にしたQUICK短観とロイター短観で業況判断DIが製造業、非製造業ともに大きく悪化し、リーマン・ショック以来の低水準となっている。どちらも悪化幅は大きいが、特に非製造業の悪化が深刻である。新型コロナの感染拡大に伴い、外出自粛で経済活動が大きく阻害されていることが影響したもようだ。

 業況判断DIの「先行き」は、大企業製造業で1ポイント下落、大企業非製造業は1ポイントの上昇を予想。先進国では感染の第1波を越え、経済活動が再開し始めている。日本国内も5月25日に緊急事態宣言が全面的に解除され、徐々にではあるが経済活動が戻り始めており、「最近」のDIで見られるような景況感の大幅悪化は、先行きにかけては一服するだろう。しかし、感染の第2波到来の可能性はくすぶり続けており、先行きの景況感の明確な回復は見込まず、横ばい程度にとどまると予想する。

 20年度の設備投資計画は6月調査では09年度以来の下方修正が予想される。公表済みの20年4~6月期の法人企業景気予測調査で、20年度の設備投資計画(全規模・全産業、ソフトウエア除き土地投資含む)は前年比減7.7%と、1~3月期調査から下方修正された。リーマン・ショック後の09年度は調査回が進むにつれ下方修正されており、20年度も今後の調査で下方修正が続く可能性を視野に入れておく必要はあるだろう。

▽三菱総合研究所の田中康就研究員=大企業製造業の業況判断DIは6四半期連続で悪化し、世界金融危機の影響を受けた09年6月以来約11年ぶりの低水準を予測する。中国向け輸出は横ばい圏内で推移しているものの、新型コロナウイルスの感染拡大による輸出や生産の急減が、自動車を中心とした幅広い業種において、製造業の業況を大幅に押し下げると見込む。

 大企業非製造業の業況DIは、世界金融危機時(09年3月調査のマイナス31)を下回る水準を予測。新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の抑制やインバウンド需要の減少、資金繰り懸念の強まりなどが、宿泊・飲食サービス、対個人サービス、運輸、小売などの業況を大きく押し下げるだろう。非製造業の業況判断DIの悪化幅は2四半期連続で製造業を上回る見込み。

 先行きの業況判断DI(大企業)は、製造業、非製造業とも悪化を予測する。新型コロナウイルスの感染終息や経済活動正常化の時期が見通せず、さらなる拡大や長期化も予想される。また、世界的な雇用・所得環境の悪化が内外需の重しとなる見込みだ。先行きの業況に対する不安は、製造業・非製造業を問わず強いとみられる。

 20年度の設備投資計画(全規模全産業)は前年比1.9%減と予測する。6月調査時点としては、09年度(17.1%減)以来の減少となる見込み。昨年12月調査以降、製造業(全規模)の生産・営業用設備判断DIは「過剰超」に転じている。また、売上の急減を受け、企業の資金繰り懸念が高まっているほか、先行きの経済見通しの不透明感は強い。新型コロナウイルスの影響が拡大・長期化すれば、年度中に設備投資計画の減少幅が一段と拡大していくリスクがある。

▽河野龍太郎・BNPパリバ証健チーフエコノミスト=業況判断DIは、軒並み3月調査以上の極めて大幅な落ち込みになるとみられる。前回調査の回答基準日は3月11日で、まだ国内外の感染拡大の影響は本格的には現れていなかった。DIの水準は、製造業の方が低いが、悪化幅の点では前回調査同様、非製造業の方が大きくなる可能性が高い。また、リーマン・ショック後との比較でも、製造業は、当時の最悪期ほどの水準には落ち込まないとみられるものの、非製造業はそれに近い水準まで低下すると予想される。

▽上野剛志・ニッセイ基礎研究所シニアエコノミスト=6月短観では、緊急事態宣言発令後の経済活動失速の影響を受け、リーマン・ショック後に匹敵する急激な景況感の落ち込みが示されると予想する。大企業製造業では海外でのロックダウンに伴う輸出の減少、外出自粛による国内製品需要の落ち込み、サプライチェーン混乱による部品の調達難などを受けて景況感が大幅に悪化すると見込まれる。非製造業も、入国規制に伴う訪日客の途絶に加え、外出自粛や休業に伴う売上の急減などから景況感が大幅に悪化するだろう。

 なお、既に国内外で経済活動が段階的に再開されており、今後の景気回復が見込まれることから、大企業の先行きの景況感は持ち直しが示されるだろう。ただし、景気回復は緩慢との見方が一般的なほか、感染第2波への警戒もあり、改善は小幅にとどまるだろう。

 20年度の設備投資計画(全規模全産業)は、前年度比3.0%減に下方修正されるみる。例年、6月調査は計画の具体化に伴って上方修正される傾向が極めて強い。しかし、今回は新型コロナの感染拡大に伴う収益の大幅な悪化や、事業環境の強い先行き不透明感を受けて、企業の一部で設備投資の撤回や先送りの動きが台頭し、この時期としては異例の下方修正になるだろう。

 今回の短観は、緊急事態宣言発令後の経済活動失速が企業にどの程度の悪影響を与えたかを計る大きな材料と位置付けられる。全体的に悪化が見込まれるが、業況判断DIの足元の低下幅、先行きにかけての方向感、設備投資計画の下方修正状況など注目すべき点は多い。そうした中、とりわけ注目されるのが資金繰り判断DIの下落幅だ。前回調査以降、休業や売上の急減に伴って企業の資金繰りは逼迫(ひっぱく)度を増したとみられる。政府・日銀は資金繰り対策を打ち出してきたが、その効果が問われることになる。

▽熊野英生・第一生命経済研究所首席エコノミスト=大企業製造業の業況判断DIは、前回比マイナス26ポイントと大幅悪化する見通し。マクロ景気は、この4~6月が大底となり、企業の景況感も悪化するだろう。注目点は、雇用判断DIがどこまで悪くなるか、企業収益の見方がどこまで厳しくなるかである。資金繰りや貸出態度の変化も警戒して見ておきたい。

▽北辻宗幹・日本総合研究所研究員=新型コロナの世界的な感染拡大に伴い経済活動が落ち込んだことから、製造業、非製造業ともに景況感が大幅に悪化する見込み。

 大企業製造業の業況判断DIは、業種別で見ると、世界的に販売台数が急減した自動車や、外需低迷の影響が顕著な一般機械をはじめ、ほとんどの業種で低下する見通し。一方、大企業非製造業の業況DIは、インバウンド需要の消滅や自粛ムードの残存を背景に、宿泊・飲食サービスの低迷が続くほか、運輸・郵便や対個人サービスも大きく落ち込む見通し。その結果、大企業全産業のDIはマイナス20と、対象企業見直しの系列を含め、2009年4月調査以来の低水準になるだろう。もっとも、製造業では輸出の下振れが小さい電気機械、非製造業ではテレワークによる需要増がみられる情報サービスなど、落ち込み幅が軽微となる業種もあることから、リーマン・ショック時ほどの落ち込みまでには至らない見通し。

 先行き(9月調査)は、全規模全産業で6月調査対比2ポイントの上昇を予想。足元で経済活動が再開しつつあるため、最悪期は脱するものの、消費活動が限られている面もあることなどから、DIの持ち直しは総じて緩やかにとどまる見込み。回復に時間を要するとみられるインバウンドや輸出の影響を受けやすい産業では低迷が続く見通し。

 20年度の設備投資計画は、全規模全産業ベースで前年度比3.8%減と予想。例年、計画未定の案件の確定や前年度未執行のずれ込みにより上方修正される傾向に反し、前回調査対比4.8ポイントの下方修正となる見込み。新型コロナによる経済活動の停滞で、企業の収益環境が悪化しているほか、先行きの業績も見通しにくく、力強い回復を見込めないことが重し。

▽川畑大地・みずほ総合研究所エコノミスト=大企業製造業の業況判断DIは、予測通りとなれば、リーマン・ショック後の09年12月調査(マイナス24)以来の低水準となる。新型コロナウイルスの感染拡大によって世界経済は急速に悪化した。諸外国では、感染拡大防止のためのロックダウン(都市封鎖)が実施される中、工場の稼働停止や店舗休業の影響で経済活動が大きく落ち込んだ。国内でも3月ごろから感染者数が急増し、4月7日から5月25日まで緊急事態宣言が発出された。感染予防の必要性や部材調達の遅延、需要の減少などを背景に、工場の稼働停止や生産調整が行われたことが、業況を下押しするとみられる。

 素材業種は、自動車減産の影響などから鉄鋼や非鉄金属等が悪化すると予想される。加工業種は、世界的な自動車販売の減少を受けて、輸送用機械が悪化するだろう。また、自動車の不振に伴う工作機械の需要減のほか、企業収益の減少を背景に国内外で設備投資の先送りや規模縮小が生じることから、生産用機械やはん用機械も悪化する見込みだ。

 大企業非製造業の業況DIは10年3月調査(マイナス14)以来の低水準となる。緊急事態宣言の発令による、外出や営業の自粛を背景に売上が減少した宿泊・飲食サービスや対個人サービスが悪化するだろう。また、運輸・郵便や卸売も、人の移動の減少や製造業の工場稼働停止などを背景とした物流の減少を受けて、悪化する見通しだ。小売は、外出自粛を受けた日用品の買いだめや巣ごもり需要の増加の恩恵を一部の業態が受けるものの、全体としては来客数の減少が響いて悪化する見込み。一方、新型コロナウイルス感染拡大防止策の一環としてテレワークの導入が進んだことなどから、ソフトウエア投資増の恩恵を受ける情報通信サービスは改善が見込まれる。総じてみれば、一部業種の業況改善は見込まれるものの、新型コロナの感染拡大がサービス業を中心に業況を大幅に押し下げ、非製造業の業況DIは大幅悪化が避けられないだろう。

 製造業・業況判断DIの先行きは5ポイント改善と予測。国内では、緊急事態宣言の解除後に生産活動が持ち直すとみられるほか、欧米諸国でもロックダウンの解除後、徐々に経済活動が再開していることを受けて、生産や輸出が緩やかに回復していくものとみられ、業況は改善に向かうだろう。また、テレワークの拡大に伴い、サーバーやPCなどの需要増が見込まれるため、情報関連業種の業況が改善するだろう。ただし、感染防止策が当面続くことから、本格的な経済活動の再開には時間を要するほか、感染再拡大への警戒感も残存しているため、業況の大幅な改善は見込みづらい。

 非製造業の先行きDIは8ポイント改善を見込む。休業要請の緩和を受けて多くの企業が営業を再開した、小売業や飲食業等で業況の回復が見込まれる。また、テレワークの浸透に伴い、ソフトウエア投資の増加が見込まれることから、情報通信サービスも改善するだろう。一方、感染再拡大への懸念により不要不急の外出は引き続き控えられることや感染予防策の継続が予想されるほか、インバウンド需要の回復が見込みがたいことが、運輸・郵便や宿泊業、対個人サービスを中心に業況改善の重しになりそうだ。

 20年度設備投資計画は6月調査としては異例の下方修正を予測。全規模全産業で前年度比6.4%減(3月調査は0.4%減)とみている。製造業は、6月調査時点では設備投資計画が上方修正されるのが例年のパターンだが、新型コロナの感染拡大に伴う企業収益の減少や海外経済の急減速を背景に、中小企業を中心に設備投資の規模縮小や先送りが顕著となるだろう。非製造業の投資計画も、テレワーク需要や5G関連投資の増加に伴い、情報通信サービス業などでは投資増が予想されるものの、経済活動が再開した後でも感染再拡大への懸念から不要不急の外出自粛や営業時間短縮などの感染防止策が継続することから、企業収益の急回復は見込みづらく、ほとんどの業種では設備投資計画が下方修正されるだろう。

▽南武志・農林中金総合研究所主席研究員=3月調査では調査時期の関係で新型コロナの影響が企業経営者の景況感に対して十分反映されたとは言い難かったが、6月調査では経済活動の悪化が反映され、景況感は大きく悪化するだろう。5月中下旬には緊急事態宣言が段階的に解除されたが、再稼働は順調とは言えず、先行きの改善見込みも小幅にとどまるだろう。また、20年度の設備投資計画も、業績悪化や資金繰りの厳しさから、この時期としては異例の下方修正と予想する。

▽角田匠・信金中央金庫上席主任研究員=新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大したことから、自動車など輸出関連企業を中心に製造業の景況感は大幅に悪化するだろう。また、緊急事態宣言の発出を受けて人々の行動が制限されたため、非製造業の景況感は個人消費関連を中心に大きく悪化したとみられる。(了)
発表予定日:2020年7月1日

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〔指標予測〕について
日銀短観やGDP、鉱工業生産など国内経済統計の予想値を時事通信がシンクタンクに取材・集計した記事です。各シンクタンクによる予測の背景説明を詳しく紹介します。統計発表の1週間程度前に配信しています。

 

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