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パウエルFRB議長、「トランプ対応」に苦慮=利下げかじ取り困難
<2019年8月30日>
2019/08/24 15:19
【ジャクソンホール(米ワイオミング州)時事】米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は23日の講演で、今後の追加利下げの幅やタイミングを明言しなかった。ただ、トランプ大統領が仕掛けた貿易摩擦に振り回され、市場の利下げ圧力は日増しに強まっている。一方で、FRB内には金融緩和への反対も残り、議長は政策のかじ取りで厳しい状況に直面している。
「貿易政策の不確実性を金融政策に取り込むのは新たな挑戦だ」
ワイオミング州ジャクソンホールで開かれた経済シンポジウムでの講演で、議長は米中間の貿易問題を念頭に、困難な対応を迫られている現状をこう説明した。また「貿易摩擦に対処する政策の前例はない」と語り、金融政策には限界があると嘆いた。
実際、このところの議長の政策運営は裏目に出てばかりだ。FRBは7月末、景気悪化を未然に防ぐ「予防策」として約10年半ぶりの利下げを決定。だが、直後にトランプ氏が対中制裁関税「第4弾」を9月に発動すると突如表明し、金融緩和の効果が薄れる結果となった。
この日の講演後には、トランプ氏が対中制裁関税の引き上げ方針を公表。予測不可能な同氏のツイッターへの投稿一つで、金融政策を左右する景気見通しが変わってしまうだけに、議長にとって頭痛の種であることは間違いなさそうだ。
金融市場は、短期間の大幅利下げを執拗(しつよう)に迫るトランプ氏の口先介入に追随する形で、金融緩和を催促している。9月17、18両日の金融政策会合での金利引き下げ決定をほぼ織り込んでおり、一部市場関係者は0.5%の大幅な利下げを見込む。
ただ「好景気での利下げ」は政権や市場の圧力に屈したと映り、FRBの信認を傷つける恐れがある。また、複数のFRB高官が資産バブルにつながる恐れなどを懸念して利下げに反対しており、パウエル議長は今後も困難な政策運営を強いられる。(了)