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デジタル通貨の研究を加速する日銀

<2020年7月7日>

2020/07/02 18:36

〔金融観測〕日銀、CBDCの研究加速=技術面など具体的課題を検討

日本銀行本店
日本銀行本店

 日銀は中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)に関する研究を加速させている。背景には、民間の技術進歩が速く、将来発行が必要になった場合に備えなければならないとの危機感がある。日銀は今年2月、決済機構局内に専門の研究チームを発足。抽象的な調査・研究の段階を終え、具体的な機能要件や実装する上での技術面の課題などを検討する新たなフェーズに足を踏み入れている。

 日銀は2日、「中銀デジタル通貨が現金同等の機能を持つための技術的課題」と題するリポートを公表した。CBDCが現金と同等の機能を持つには「誰もがいつでもどこでも安全確実に利用できる」ことが重要だと指摘。具体的には①特定の利用者を制限しない「ユニバーサル・アクセス」②災害などによるシステム障害時でもオフラインで決済できるなどの「強靭(きょうじん)性」―の2点を挙げた。その上で「日銀としては実証実験などを通して技術面からみた実現可能性を確認していくとともに、海外中銀や関係機関と連携をとり検討を進めていく」と結んでいる。

 また、日銀は7月30日にCBDCに関するフォーラムを開催する。CBDCには最先端の技術が必要で、民間の知識の活用が不可欠。金融機関やノンバンクのほかIT企業などに幅広く参加を呼び掛けている。

 中銀デジタル通貨では、中国人民銀行が一部都市で試験的な導入に動くなど先行。日銀も今年1月、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行など計6中銀で共同研究を進めると表明するなど、世界的にCBDCの研究が進んでいる。

 もっとも、日本では現金流通高のGDP比が2割を超えるなど海外と比べて高く、現金志向の強さが目立つ。日銀も今のところ「現時点において発行する計画はない」と説明している。新型コロナウイウイルスの影響で在宅勤務が増え、デジタル決済が一段と浸透することも考えられるが、実際にCBDCを発行することになれば大規模な国家プロジェクトになるのは間違いなく、コストも莫大(ばくだい)だ。民間のキャッシュレス決済も広がる中、「なぜCBDCを発行するのか」という議論が深みを欠いたまま、日銀は内外の競争についていかざるを得ない情勢となっている。(経済部・宇山謙一郎)