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〔財金レーダー〕デジタル化に集中投資=骨太骨子案、拭えない既視感

<2020年6月30日>

2020/06/25 14:00

〔財金レーダー〕デジタル化に集中投資=骨太骨子案、拭えない既視感

経済財政諮問会議に出席する(左から)西村康稔経済再生担当相、安倍晋三首相、菅義偉官房長官=22日、首相官邸
経済財政諮問会議に出席する(左から)西村康稔経済再生担当相、安倍晋三首相、菅義偉官房長官=22日、首相官邸

 政府は6月22日の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)に、7月の取りまとめを目指す経済財政運営の基本指針「骨太の方針」骨子案を提示した。中期的に取り組む課題の筆頭に「デジタル化への集中投資・活用とその環境整備」を挙げ、西村康稔経済財政担当相は記者会見で「政府自らの投資、民間を呼び込むような投資、民間自らの投資を組み合わせ、政府と民間のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進める必要がある」と抱負を述べた。しかし、「デジタル化への集中投資」と言うと聞こえはいいが、どうしても既視感を拭えない。  

◇給付めぐり混乱

 今年の骨太議論のデジタル化推進の根底には、新型コロナウイルスの感染が広がる中、デジタル化の遅れから国・地方でさまざまな混乱が生じたことへの危機感がある。マイナンバーカードと預貯金口座がひも付けされていないため、各種給付金が迅速に払い込まれないとの批判が生じた。

 一律10万円を配る「特別定額給付金」のオンライン申請をめぐっては、手続きに必要なマイナンバーカードの暗証番号を忘れた人が多く、再設定のためにサーバーへのアクセスが集中して処理が遅れた。役所のロビーにはパスワード再設定で訪れる人があふれる事態となった。新型コロナ感染者数の集計がオンラインでなくファクスで行われた事例も世間に衝撃を与えた。

 「コロナ危機を社会変革の契機と捉え、日本の社会・経済を10年ぐらい一気に前進させたい」(西村氏)との言葉にはデジタル化の遅れに対する率直な問題意識もうかがえる。  

◇行政のデジタル化、笛吹けど踊らず

 とはいえ、政府がデジタル化を骨太方針で掲げるのは今回が初めてではない。昨年の骨太方針でも「デジタル化の推進に当たっては、国・地方の行政分野が自ら率先して範となるべく取り組み、デジタル・ガバメントを構築していく」と明記。17、18両年の骨太方針にも行政のデジタル化推進が採り上げられている。

 新型コロナで露呈したデジタル化の遅れによる諸問題を目の当たりにすると、骨太で掲げてきた目標は達成できていないと断じざるを得ない。「第2波が来る前に国も地方もデジタル化をやらなければ駄目だ」(経済官庁幹部)といたずらに危機感をあおっても、このままでは笛吹けど踊らずとなるのが関の山だ。  

◇官庁エコノミスト活用を

 16日開催の未来投資会議では「今後のウィズコロナ、ポストコロナ時代の成長戦略の立案に向けた方向性」と題して、民間議員からテーマごとに整理された40弱の意見が示された。このうち三菱ケミカルホールディングスの小林喜光会長による「優先すべき施策の社会実装を促進するには『なぜこれまでできなかったのか』という要因分析と、それを踏まえた規制改革やインセンティブ設計に力を入れていく必要がある」との指摘は至言だ。政策担当者には謙虚に耳を傾けてもらいたい。

 もう一点注文を付け加える。「一丁目一番地」(西村氏)と位置付けている以上、デジタル化への集中投資の中身をもう少し具体的に説明してほしい。記者会見での質問に対し、西村氏が具体的な金額も含めて言及したのは、昨年まとめた総合経済対策に盛り込まれたIT導入補助金など約1兆円の予算だけにとどまった。

 内閣府には他省庁がうらやむ官庁エコノミスト集団がいる。彼らを活用して、国や地方のデジタル化投資が進めば行政の効率化がどの程度向上するのか、さらに民間への波及効果などについても分析・試算を示してほしい。1年間内閣府を取材してきたが、このささやかな願いを胸に同府担当としてのペンを置くことにする。(経済部・奥野伸)