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東証市場再編まで1年 対応急ぐ上場企業

<2021年4月6日>

2021/04/02 12:23

〔証券情報〕上場企業、「流通株」重視へ対応急ぐ=東証市場再編まで1年

EPA時事
EPA時事

 東京証券取引所が2022年4月4日に現在の「東証1部」など4市場を廃止し、「プライム」など3市場とする再編まで1年となった。市場ごとの上場基準を厳しく見直して特徴を明確化し、高いガバナンス(企業統治)水準も求め、国内外から活発な投資を呼び込む狙いだ。注目点の一つは、1部上場企業がプライムに円滑に移行できるか。できなければ最上位市場に上場するとのステータスを失い、株価や資金調達、採用活動などにも悪影響が及びかねない。このため、企業は新基準で重視される、取引先などの保有分を除き実際に売買可能な「流通株」をより重視する方針にかじを切るなど対応を急いでいる。

 ▽700社「不合格」も

 1部には現在、約2200社が上場する。株価に発行済み株数を掛け合わせた「時価総額」で見ると、首位のトヨタ自動車が27兆円を超える一方、100億円に満たない企業も多く、顔ぶれは「玉石混交」の様相を呈している。

 従来のルールでは、1部に新規上場する際の基準は時価総額250億円以上などだった。2部やマザーズから昇格する場合は40億円以上で済むほか、上場後に時価総額が下がっても、10億円未満が一定期間続くなどしなければ廃止基準に抵触せず、そのまま「1部上場」を名乗り続けることができた。

 新基準でプライムに上場するには、流通株の数に株価を乗じた「流通時価総額」で100億円以上が必要。発行済み株式に流通株が占める割合も35%以上を維持しなければならない。企業は取引先などとの安定的な持ち合い株式を減らし、一般株主との対話を積極化するよう促される。

 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の試算によると、現状では1部上場企業のうち、約700社が流通時価総額など何らかの点でプライムの上場基準を満たしていないという。

 ▽持ち合い解消、M&Aも

 東証は今後、今年6月末時点の流通時価総額などを踏まえ、上場各社に新市場ごとの適合状況を通知する。企業側は年末までに希望する移行先を表明する手順となる。1部上場企業はプライム基準に未達の場合でも、当分の間はプライムに残留できるが、基準に合致するためどう取り組んでいくかを計画書で示さなければならない。

 トヨタ紡織は2月、大株主のトヨタ自動車が保有株の一部を売却したと発表した。「プライム上場を目指すため、トヨタ自動車に持ち株の売却を要請し、応諾された」と説明し、流動株式比率35%以上を確保できる見通しが立ったという。

 ある大手証券会社の幹部は「プライム基準に達するかが不透明な上場企業から、合併・買収(M&A)に関する相談が寄せられている」と明かす。現在の主力事業の隣接分野をM&Aで増強して規模拡大を図り、時価総額と成長性を高める狙いとみられる。

 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の花倉恒徳エクイティ・キャピタル・マーケット部長は「トヨタ紡織のように市場再編を理由として明示せずとも、新市場の基準を満たすために行動する企業はさらに出てくるだろう」と予想する。

 ▽企業文化変えられるか

 一方、東証と金融庁は今月にもコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)を改定し、プライム企業に関する規定を従来の1部企業から変更する。利害関係を持たない独立社外取締役の登用について、現行の「2人以上」から「取締役全体の3分の1以上」とするよう改め、女性や外国人など多様性の確保も求める。指針に強制力はないものの、順守しない場合は企業が対外的に理由を説明する必要がある。

 企業の間では、社外取締役の候補人材の不足を懸念する声も多いが、ガバナンス問題に詳しく、東証の親会社日本取引所グループ(JPX)の独立社外取締役を務める久保利英明弁護士は「プライム企業が専門性を持つ優秀な人材を厚遇し、社外取締役に迎える努力をするのは当然だ」と強調する。

 東証では「国際派」の呼び声高い山道裕己新社長が4月1日に就任したばかり。日本経済をけん引する企業のガバナンス機運を向上させ、企業文化そのものに前向きな変化をもたらせるか、その手腕にも注目が集まりそうだ。(了)

 

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