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日本初「S&P1000指数」のファンドを設定へ=米国の中小型株に投資、Tracersの第8弾-日興アセットの金澤氏に聞く

2024年10月24日 08時30分

金澤拓也氏

 日興アセットマネジメントは、米国の中小型株に投資する「Tracers S&P1000インデックス(米国中小型株式)」を11月12日に新規設定する。「S&P1000指数(税引後配当込み、円換算ベース)」に連動する投資成果を目指すファンドは、日本で初めて。

 少額投資非課税制度(NISA)の「成長投資枠」の対象ファンドで、ネット専用のノーロード・ファンド「Tracers(トレイサーズ)」シリーズの第8弾になる。商品開発部バイスプレジデントの金澤拓也氏にこの指数の特徴やファンドの魅力を聞いた。

◆「S&P500」の次の1000銘柄

-ファンドの概要は

金澤氏 このファンドは、米国の上位500銘柄で構成する「S&P500指数」の時価総額で次に位置する中小型株式約1000銘柄が投資対象だ。

米国株式市場の時価総額(2024年8月時点、57.8兆ドル)のうち、「S&P500指数」が86.3%を占めている。「S&P1000指数」は7.7%なので、この二つの指数を合わせると、米国の時価総額の約94%をカバーすることになる。

(出所)日興アセットマネジメント(出所)日興アセットマネジメント(クリックで表示)


◆中小型株の成長力と株価上昇率

-「S&P1000指数」の過去のパフォーマンスは

金澤氏 1999年1月を100ポイントとして、「S&P1000指数」と「S&P500指数」の推移を比較すると、2024年8月時点で「S&P500指数」は800ポイント程度に上昇した。一方、「S&P1000指数」は1300ポイント程度と、さらに大きく上昇している。創業期や発展期にある中小型株式の中には、急速に成長を遂げて売上高や利益を伸ばす企業があることが、その要因だと思われる。

 毎年の騰落率を比較すると、2000年から05年までは「S&P1000指数」が「S&P500指数」を上回った。また、08年にリーマン・ショックがあり、そこから量的緩和に向かう局面でも「S&P1000指数」の方が強かった。ただ、14年以降の年間騰落率は、ビッグテック株の株価上昇を背景に、「S&P500指数」が「S&P1000指数」を上回る年が多かった。

◆米国中小型株、少ない選択肢

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-「S&P1000指数」に注目した理由は

金澤氏 当社は5月、「S&P500指数」の時価総額上位10銘柄で構成される指数「S&P500トップ10指数」に連動する「Tracers S&P500トップ10インデックス(米国株式)」を設定した。この商品は「変わりゆく主役級の企業10社に集中投資する」ことがコンセプトであった。そのため、一方の「投資対象を広げたい」と考えるお客さま向けの商品も開発してはどうかと検討していた。

 過去を振り返ると、米国が利上げを実施した後の局面は、中小型株がアウトパフォームすることが多い。今後、米国の中小型株の注目が高まることも考えられる。ただ、日本の既存の公募投信を見ると、米国の中小型株のインデックスファンドは本数が少ない。

 そこで「次々に新しい企業が生まれる米国に注目するなら、成長力のある幅広い中小型株に投資したい」と考えるお客さまのニーズに応える商品として、「こんなファンドが欲しかった」を実現する「Tracers」シリーズにピッタリの指数だと考えた。

◆未来のS&P500指数の候補銘柄

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-「S&P1000指数」の魅力は

金澤氏 一つ目は「未来のS&P500指数の候補銘柄」に投資できることだ。「S&P1000指数」は、「S&P500指数」の次の時価総額の企業群であり、構成銘柄は随時入れ替わるため、「S&P500指数」へとステップアップする企業も数多く含まれていることが期待される。「S&P1000指数」に投資することで、そうした企業に成長ステージのより早い段階から投資することができる。

◆「S&P500」と共通する財務基準と流動性

金澤氏 二つ目は、財務や流動性について、一定の基準をクリアした企業群で構成されていることだ。中小型株というと一般的には「大型株に比べて財務の健全性が低いのではないか」、「上場直後の赤字企業が入っているのではないか」と思われるかもしれない。

 しかし、「S&P1000指数」の採用基準は、「S&P500指数」と共通する部分が多く、流動性については「各半期における売買高が最低25万株」となっている。また、財務については「直近四半期および連続する4四半期の利益合計が黒字」としている。

◆「業種構成」や「企業規模」の分散

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金澤氏 三つ目は、日本人が見逃している投資機会にアクセスできることだ。「S&P500指数」は、グローバルに展開するビッグテック企業を中心とする指数になっている。一方、「S&P1000指数」は、日本人にあまり知られていない、米国を中心に活躍する企業が多数含まれている。

 構成銘柄を業種別(2024年8月末時点)に分析すると、「S&P1000指数」は「資本財・サービス」(20.5%)がトップで、次いで「金融」(17.9%)、「一般消費財・サービス」(14.2)、「ヘルスケア」(10.3%)となっている。一方、「S&P1000指数」は「情報技術」が31.0%を占めている。二つの指数が異なる値動きをする背景には、こうした業種の違いが影響している。

 日本の投資家に人気の「S&P500指数」や「NASDAQ100指数」「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」は、いずれも大型株を対象とする指数だ。一方、「S&P1000指数」は、中小型株が対象だ。この指数に投資することで、活力のある米国の中小型株式を取り込み、そして、企業規模の点からの分散投資の効果も期待できる。

◆外国株投資に新たな選択肢

-想定する投資家は

金澤氏 「S&P500指数」や「NASDAQ100指数」、「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」などをベンチマークとするインデックスファンドを保有する投資家の皆さんの中で、「さらに幅広い銘柄に投資したい」と考えている方にとって、新しい選択肢となるのではないかと考えている。

 過去のパフォーマンスを振り返ると、中小型株は利下げ局面で高いパフォーマンスを残してきた。こうしたデータに注目する方や、米国の大型株に割高感を感じている方、他の人と違う投資したい方など、幅広い投資家に利用していただけると思う。

 コスト面でも、低コストのインデックスファンドに投資しているお客さまにご納得いただけるよう、競争力を意識した水準に設定した。

 

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