〔マーケット見通し〕流動性リスクが浮上、上下に振れやすい市場に変化も-ピクテ投信・萩野社長
2021年04月20日 11時42分
米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントの株式関連取引の失敗で、世界の大手金融機関が巨額の損失を被った。ピクテ投信投資顧問の萩野琢英社長は、個人投資家へのメッセージとして「市場が『流動性リスク』を意識し始めたことを伝えたい。これまで以上に上下に動きやすいマーケットになる可能性がある。また、楽観的だった市場のセンチメントを少しずつ変化させるきっかけになるかもしれない」と話している。
萩野社長 マーケットが楽観論に包まれている間は、流動性のリスク(低さ)はプラス(株価上昇)要因に働く。時価総額の小さな銘柄をみんなで買っていけば、大きく上昇する。この1年間はこうしたモメンタム(方向性)が強化されて、世界の株価が急上昇した。
もし、マーケットが悲観論に傾けば、流動性リスクがマイナス要因に働き、これまでとは逆の回転が起こる。アルケゴス問題をきっかけに「流動性リスク」が顕在化したことで、株価は上下にぶれやすくなるかもしれない。
さて、機関投資家だけでなく、個人投資家の中にも、ハイテクや環境など特定のテーマの指数に連動する上場投資信託(ETF)を利用する人が増えている。ETFそのものは流動性の高い金融商品だが、流動性が低い少数の株式銘柄で構成された指数に連動するものがあり、こうしたETFは急騰・急落しやすい。指数会社の中には、指数を構成する株式の銘柄数を従来の30銘柄から100銘柄に増やして、リスク分散を図る動きが出ていた。
アルケゴス問題が起こったのは、こうした流動性に対する警戒感が出始めた最中(さなか)だった。アルケゴスは、株式を担保に自己資金の何倍もの売買を行うレバレッジ取引を使い、少数の銘柄に集中投資して、大きな損失を発生させたと言われている。
アルケゴス関連で、世界の大手金融機関が被る被害額は、1兆円を超えると言われる。金融機関の財務体質は健全であり、この損失によって経営が揺らぐことはなく、システミックリスクになることはないだろう。ただ、金融機関の経営陣は、今まで以上に金融取引に慎重になるとみられる。それが、少しずつマーケットのセンチメントを変化させる可能性がある。
世界を見渡すと、アルケゴスのような個人資産管理会社(ファミリーオフィス)を使って、富裕層がレバレッジ取引を行うことが、アジアを中心に頻繁に見られる。今後、こうした投資家がどのように投資行動を変化させるか、という点も注視しておくことが必要だろう。
■ピクテ投信 マーケットの「今」を語る対談動画-マーケット・ラウンジ
(4月16日、アルケゴス問題が発するシグナル!)
https://www.pictet.co.jp/investment-information/market/market-lounge.html