旗艦3ファンドの運用担当者が来日=市場見通しや運用方針を説明-フィデリティ投信
2024年05月22日 11時00分
フィデリティ投信の旗艦3ファンドを運用する米国のフィデリティ・インベスメンツの担当者が来日し、市場見通しや銘柄選択のポイントを語った。
◆「フィデリティ・世界割安成長株投信(愛称:テンバガー・ハンター)」
このファンドは「日本を含む世界の株式を対象に、企業の長期的な成長力と株価の割安度に着目し、企業の本源的価値を見極める運用をめざす」。シリーズの純資産総額は、同様の投資方針で運用する「フィデリティ・日本割安成長株投信(愛称:テンバガー・ハンター・ジャパン)」を合わせて、1兆3762億円(5月17日時点)だ。
ポートフォリオ・マネージャーのモーゲン・ペック氏は、銘柄選定のポイントについて「市場が気づいていない成長企業に割安な株価で投資することが重要だ」と強調した。その上で、企業を評価するポイントとして、①フリーキャッシュフローの強い創出力 ②差別化できる独自のビジネスモデル ③質の高い経営陣 ④健全なバランスシート ⑤適切な資本配分と資本コストを上回る資本利益率 ⑥将来に向けた高い適応力と回復力-などを挙げた。
また、ポートフォリオ・マネージャーのサム・シャモビッツ氏は、日本株式について「中小型株式の投資機会が豊富だ」と指摘した。その理由として、(A)企業数が非常に多く、M&A(合併・買収)など企業再編が期待されること (B)資本効率が大きく改善してきており、株主重視の姿勢が強まっていること-などを挙げた。
その上で「日本のコーポレートのガバナンス改革はまだ初期段階であり、中小企業に浸透していく段階にある。今後、企業の効率性がさらに高まり、投資リターンが期待される」と述べた。
◆「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド」
このファンドは、「米ドル建て高利回り事業債(ハイ・イールド債券)を中心に分散投資し、高水準の利息収入と値上り益をめざす」。シリーズの純資産総額は、8995億円(5月17日時点)だ。
ポートフォリオ・マネージャーのアレキサンダー・カラム氏は、銘柄選択のフレームワークについて「マクロ経済や産業セクターについてしっかりとした見通しを持ったうえで、徹底的なボトム・アップ・リサーチで個別企業のファンダメンタルズを分析し、トータルリターンのポテンシャルやリスク・リターンを見極めている」と述べた。
また、このファンドの運用チームは、ハイ・イールド市場の中でもリターンが魅力的なディストレス債券の運用に強みを持っており、綿密な企業分析や、債務再編を主導するアプローチなどで、大きなリターンを上げてきたことを紹介した。
今後のハイ・イールド債市場の環境については「スプレッドがタイトで割高な状況になっており、慎重に投資することが重要だ」と指摘した。その上で、興味深いテーマとして、安定した預金ベースを持つ地方銀行や、コロナ禍からの回復が続く航空機リース業界、医療・ヘルスケア業界などを挙げた。
◆「フィデリティ・USリート・ファンド」
このファンドは「主として米国の取引所に上場されている不動産投資信託(リート)に投資する」。シリーズの純資産総額は、8366億円(5月17日時点)だ。
ポートフォリオ・マネージャーのスティーブ・ビューラー氏は、市場環境について「米国リートの配当利回りはコロナ禍後の2%台半ばから4%台半ばまで上昇している。今後、配当自体は業績に見合った成長が期待される」と指摘した。
その上で、米国リート関連のメガトレンドとして、①高齢化の進展により介護付き施設の需要増加が見込まれる ②小規模で地域密着型のショッピングセンター(ストリップ・センター)の供給は限定的で、賃料の堅調な伸びが継続すると見られる ③人工知能(AI)の普及がデータセンターの需要を底上げすることが予想される-を挙げた。
また、個人投資家へのアドバイスとして「不動産は、長期の資産運用に適した資産クラスだ。株と債券の中間に位置し、債券のような利回りと、株式のような値上がり益が期待される」と指摘した。