ウォール・ストリート・ジャーナル
バロンズ・ダイジェスト

マーケットニュース

本格的なアクティブハウスをめざす=クオリティーグロース株に厳選投資-なかのアセットの中野晴啓社長

2024年05月17日 08時00分

中野晴啓社長

 独立系運用会社「なかのアセットマネジメント」(本社東京、中野晴啓社長)は、株式投信「なかの日本成長ファンド」と「なかの世界成長ファンド」の運用を始めた。中野社長に新会社の経営やファンドの方針を聞いた。

-新会社設立の狙いは。

中野氏 多くの方に「新しい運用会社を立ち上げてほしい」という声をいただいた。私自身も資産運用の執行をやりたいという強い思いを持っており、再出発することにした。ゼロからのスタートになる。資産運用業界が抱える社会的課題を解決し、資産運用業界が求められる需要に対応する。当社がめざすのは「本格的なアクティブハウス」だ。

 16年前にセゾン投信を立ち上げたときは、生活者の長期資産形成がまったく一般化していなかったし、積立投資も知られていなかったので、そうした点にフォーカスして運用会社を作った。

 現在、環境は大きく変化し、国民の資産形成の拡大が金融行政の柱の一つになった。こうした中で、日本の資産運用業界に欠けたピース(断片)をきちんと高いレベルで埋めていきたい。

 「とことん顧客本位を貫く」といった根幹の姿勢が変わることはない。それをアセットマネジメント会社として、今の需要に合致した形で提供していきたい。それが「本格的なアクティブハウス」だ。

-真の顧客本位とは。

中野氏 お客さまはそれぞれに運用目的を持っている。アセットマネジメント会社は、それを成就させることをめざし、最善の努力を尽くすことが「顧客本位」だ。

 フィデューシャリーデューティー(受託者責任)を課された運用会社にとって、残高拡大は決して究極の目的ではない。お客さまが求める、幸せに至る成果を、運用会社は全力を尽くして実現していく。そこから結果として、顧客支持が高まり運用会社に利益が返ってくる。このロジックが、しっかり組織に根付いていることが重要だ。

-アクティブハウスを掲げた理由は。

中野氏 インデックス運用は、市場の動きを運用成果とする手法だ。ただ、インデックス運用が最も合理的な運用成果を上げるとは言い切れない。

 それをはるかに凌駕するようなアクティブ運用の本来の魅力が出現しやすくなる環境変化が今、起き始めている。それは、世界的にディス・インフレが終焉したことだ。インフレを前提に経済が動き出す中で、「強い会社」「良い会社」が浮かび上がり、「見える化」されるようになるだろう。

 そして、インフレに打ち勝つことができる少数の会社がより強くなり、インフレを克服できずに消え去っていく会社が、これまで以上に増えるだろう。産業界の淘汰・再編が、自然なことになるので、じっくりと良い会社をリサーチし、地道に長期保有するファンドが、成果を上げる時代になると感じている。

 こうした中で、これからの重要なリターンの源泉は、エンゲージメント(企業と投資家の対話)だ。エンゲージメントによって企業が変化することで、投資家は能動的にリターンを上げることができる。エンゲージメントは、アクティブ運用が果たすべきミッションだ。企業の成長を高め、企業価値向上に直結する。その巧拙がアクティブ運用の差別化につながる。なかのアセットの重要な注力分野だ。

-新会社の経営形態は。

中野氏 この会社の設立に当って、顧客本位を実践し尽くすことができるように、理想の経営ガバナンスを追求した。

 資本については、金融機関3社に均等に株式を共同保有していただいた。また、複数議決権株式を活用することで、私が議決権の半数超を保有する形にした。

 3社の業態を見ると、運用会社、保険会社など多様性がある。それぞれから資産運用への知見の深い方を取締役に出していただき、より良い会社を実現するために、どんどん意見していただく。理想的なかたちで、独立系の運用会社をつくることができた。

-新ファンドは。

中野氏 「なかの日本成長ファンド」と「なかの世界成長ファンド」の2ファンドを4月25日、新規設定した。どちらも本格的なアクティブ運用のファンドだ。

 米国では、独立系の運用会社がそれぞれの個性を前面に打ち出して、支持を獲得してきた。その健全な競争の中で、魅力ある運用会社が多様性を持って育ってきた。当社も、個性をしっかりとアピールしていく。それが「クオリティーグロース」だ。

 その意味だが、成長する力のある企業ということで「グロース」になる。「クオリティー」を付けたのは、より絞り込むという意味だ。長期にわたって持続的な成長力があると確信を持てる企業であり、経営陣が中長期の時間軸でビジョンを描いている企業だ。エンゲージメントを徹底して実施し、愛情を持って、高いレベルに引き上げていければと思う。

 運用会社の社会的使命は、投資を通じて日本社会の将来をより良いものにすることだ。資本市場を通じて、産業界にしっかりとした意志を持った産業資本を提供する。その提供先は。日本経済をより強くより高いレベルで高度化させる能力を備えた企業であり、そうした意志を強く持った覚悟ある経営志向の会社だ。そうした企業により強くなってもらうために、意志を体現するかたちで投資を行う。

 目論見書には「10~20年において数倍から数十倍になる投資リターンの達成を目指します」と書いたが、決して絵空事ではない。インフレ環境下ではこうした目覚ましい成長を遂げる企業が出てくる。

 アクティブ運用は、ロマンの共有だ。「こんなにりっぱな会社を10年前から支えていたのだ」と、投資家の皆さまに誇りに思ってもらえるような運用をしたいと思う。

 新しい少額投資非課税制度(NISA)は、非課税期間が無期限化された。当社のファンドは、投資家の皆さんにずっと保有していただける「生涯投資」のファンドにしたいと考えている。

-日本株ファンドのポートフォリオは。

中野氏 「なかの日本成長ファンド」は、世界で活躍する、歴史を持った中・大型株をポートフォリオの中心に据える。成熟した企業が安定的な成長力を持っていることは、とても重要なことだ。さらに、どうしても保有しておきたい小型株もあるので、そうした企業も交えながら、ポートフォリオを構築する。銘柄数は、25社から最大で30社程度に絞り込む。

 企業は、規模に関わらず、成長という目標を失ってはダメだと考える。事業再編を徹底したり、新しい経営指標を取り入れたりして、命がけで成長重視の経営を実施している企業がある。そうした企業をサポートし、徹底して愛情を注いでいく。「もっと素敵な会社にしましょう」「もっと尊敬される会社にしましょう」と、企業と一緒に考えていきたい。

-世界株ファンドのポートフォリオは。

中野氏 「なかの世界株ファンド」については、「クオリティーグロース」のスタイルを、当社と同じレベルで実践してくれる海外のマネージャーを探し、ファンドオブファンズの形式で、3~5のマザーファンドで運用する。

 世界は広く、魅力的な企業が多数存在している。そうした企業をリサーチして、評価できる力のあるマネージャーに銘柄選択をゆだねる。同時に、一つ一つの銘柄にこだわりを持って運用を監視していく。個別企業をどういう形で選んで、ポートフォリオに組み込んでいるか。深い対話を行い、その考え方や能力をとことん吸収しようと思っている。

 今後、なかのアセットマネジメントが運用する、世界株に投資する私募ファンドを立ち上げる方針だ。当初は2~3社を自分たちの目線で選ぶ。その上、この私募ファンドを「なかの世界成長ファンド」のマザーファンドの一つ組み入れる。この比率を次第に高めて、5年後には、ファンドの半分程度を当社のオリジナルファンドで運用できればと考えている。

 アクティブ運用のポイントは、銘柄選択だ。事業をきちんと見極め、その価値を合理的に算定し、将来キャッシュフローについて長い目線で仮説を立て、一つの蓋然性を持って投資する。それを繰り返し行っていくことに、プロとしての高いレベルのチャレンジがあると思っている。

-新ファンドの設定状況は、

中野氏 2ファンドで38億円の資金を集めてスタートした。我々の思いに共感し、ゼロからスタートする当社に、強い信任を持って託していただいたお金は、私たちにとって宝物だ。投資家の皆さまの資金の重さを社員全員で実感し、真の運用会社による本格的なアクティブ運用をコツコツと実践していく所存だ。

-投資家とのコミュニケーションは。

中野氏 運用会社の財産は、投資家の皆さまとの相互信頼だ。真面目に誠実に、高い規律を持って行動しているからこそ、短期的な運用成果に左右されることなく、高度な信任によって支えていただける。こうした投資家と運用会社の関係性は最強だと思う。

 この高い信任をいただくため、高い透明性に挑戦していきたい。具体的には、日本株ファンドについて、投資する全銘柄の開示を行う。できるかぎり、リアルタイムで行う。また、情報開示を充実し、投資先企業の事業の魅力や、意志のある経営がどのような形で実践されているかを、投資家の皆さまに伝えていきたい。

-今後やりたいことは。

中野氏 一人一人の生活者を、長期投資家にいざなう活動を続けていく。

 さらに、当社を「新しい運用会社設立のモデルケース」とすることで、「自分も運用会社を設立しよう」という人がどんどん出てくる流れを作っていきたい。日本を「資産運用立国」にし、資産運用業の国際競争力を高め、尊敬される産業に変えていく。

 金融を目指す若者が、資産運用業を選択し、そこで腕を振るうことによって世の中に貢献することが、当たり前に社会に定着する流れを作っていきたい。

 顧客本位の追求にゴールはないので、運用会社の顧客本位について、新しく発明し実践していきたいと考えている。いくつか、ぜひやりたいことがあるので、実行に移していく。

 

ウォール・ストリート・ジャーナル
オペレーションF[フォース]