お金の「見えない化」が進む=キャッシュレスで若者の金銭感覚に変化-Japan Asset Managementの盛永氏に聞く
2024年03月11日 08時00分
IFA法人のJapan Asset Management(本社東京、堀江智生代表)は、「金融経済教育のトレンドと今後の展望」をテーマに勉強会を開いた。高校家庭科に金融経済教育が導入されて、まもなく2年が経過する。経営企画部マネジャーでJAM ACADEMY学長の盛永裕介氏に、現状や今後の方向性について聞いた。
◆中立の立場で生涯の資産運用をサポート
-Japan Asset Managementとは。
盛永氏 金融の専門家であるIFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)が運営する金融商品仲介業者だ。お客さまに寄り添った中立の立場でアドバイスし、生涯の資産運用をサポートしている。2018年の創業で、2022年には金融経済教育を行う「JAM ACADEMY」を社内に設立し、全国の小中高や大学等で4000人以上に提供してきた。
◆お金は使えば減る 楽して稼ぐ方法はない
-若者のお金の感覚は。
盛永氏 成人年齢が引き下げられ、18歳になればクレジットカードが持てるようになった。さらに、キャッシュレス決済が当たり前になり「お金の見えない化」が進んでいる。このため、「お金は使えば使うほど減っていく」という感覚や、「お金の価値やありがたみ」を感じにくくなっている。
さらに、SNS等では「仮想通貨で億万長者」というような見出しが躍り、「楽して稼ぐ」ことを持ち上げるような書き込みが散見される。また日米の株価が最高値を更新する中、リスク等に関する理解が不十分のまま「とりあえず株式を購入しておけば」という風潮が広がっているようにも感じる。
こうした時代だからこそ、「お金は使えば減るし、楽して稼ぐ方法はない」ことを伝え、「お金の価値を感じつつ、正しく殖やす方法として『投資』がある」ことを教えることの重要性が増していると考えている。
◆世の中にだまされない知識
-高校生までに求められる金融リテラシーは。
盛永氏 ポイントの1点目は「世の中にだまされないためのお金の知識を身に付けること」だ。闇バイトや投資詐欺にひっかからないようにするために、どうしたらいいか。不適切な投資商品の見極め方や、コスト感覚、契約の重要性を理解しておくことで、自分の身を守り、マイナスに陥ることのないように、お金を守る準備が必要だろう。
2点目は、「より豊かに生きるための方法を知ること」だ。厚生労働省(※)によると、「日本では、2007年に生まれた子供の半数が107歳より長く生きる」と海外の研究を基に推計されている。人生100年時代において、ただ長生きするだけではなく、その時間の質を高めることが重要である。より豊かに生き抜くためには、お金を守ることに加え、賢くお金を稼ぎ、貯め、増やし、そして使う方法を学ぶことは不可欠だ。まずは家計の収入と支出について理解を深め、将来設計の生活設計を立てるポイントや、金融商品の仕組みと資産形成を教えている。(※)厚生労働省「人生100年時代構想会議 中間報告(2017)」
3点目は、「リスク・リターンの概念」だ。多くの学生は、リスクを「不確実性」と捉えているが、金融では「変動幅」のことを言う。大きなリターンを得るには、リスク(変動幅)も大きくなる。「低リスクで高いリターンを獲得する商品」や「絶対にもうかる商品」は無いことを、しっかりと理解してもらっている。
◆クイズやゲームで導入
-工夫している点は。
盛永氏 生徒たちは、私たちが思うよりも、お金の話を身近に感じていない。生徒に関心を持ってもらうため、四択のクイズやゲームを、授業の導入部分に取り入れている。
◆「アントレプレナーシップ」×「金融経済教育」
-今後の方向性は。
盛永氏 教育現場では、アントレプレナーシップ(起業家精神)を組み合わせた金融経済教育に対する関心が高まっている。当社は、ボードゲームを使って、「家計管理」から「起業」「資産形成」を一気通貫で学んでもらうことを検討している。
授業については「楽しかった」で終わることがないように、ゲームの後にその内容を省察し、概念化して、正しい知識に落とし込んでいくことが大切だろう。