公募投信で最も高いパフォーマンス=「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」-野村AМの加藤氏に聞く
2024年03月05日 13時30分
野村アセットマネジメントの内外株式ファンド「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」は、設定来騰落率が17.6倍(1月末)となり、あらゆる公募投信と比較して過去10年で最も高いパフォーマンスのファンドになった。2月19日には純資産総額が2000億円を突破した。
人工知能(AI)の拡大で、それを支える国内外の半導体関連株が上伸していることが主因。このファンドの組入銘柄トップの米半導体大手エヌビディアは、2月21日に発表した決算で売上高と最終利益が過去最高を更新し、時価総額は2兆ドルを超えた。
このファンドを運用するシニア・ポートフォリオマネジャーの加藤明氏に話を聞いた。
◆あらゆるテクノロジーに不可欠な「半導体」
-運用方針は。
加藤氏 当ファンドは、投資対象を「世界の半導体関連企業の株式」に特化したファンドだ。各国・地域のマクロ投資環境見通しを考慮しつつ、技術力、価格決定力、利益構造、財務内容などの観点からファンダメンタルズ分析を行い、組入銘柄を決定している。
2009年8月の設定で、運用期間は約15年に及ぶ。この間、大型コンピューター、パソコン、スマートフォン、クラウド、電気自動車、生成AIなど、さまざまなテクノロジー関連のテーマが入れ替わってきたが、当ファンドは、いずれのテーマにも欠かすことのできない「半導体」の需要拡大の波に乗り、大きく成長してきた。
◆組入トップは「エヌビディア」
-運用状況は。
加藤氏 1月末の設定来騰落率は17.6倍と、あらゆる公募投信と比較して過去10年で最高のパフォーマンスになった。基準価額は、分配金控除後でも11万8399円(1月末)と、10万円を超える高いパフォーマンスを残してきている。純資産総額は2月19日に2036億円となり、2000億円を突破した。
組入銘柄を見ると、1位は、AI半導体でシェアトップのエヌビディアで、組入比率は28.7%(1月末)とポートフォリオの約3割を占める。2位は、通信インフラ向け半導体のブロードコム(米国)で同13.0%(同)。3位は、世界最大の半導体受託生産会社の台湾セミコンダクター(TSMC)で同6.8%(同)。2月に最新工場を九州・熊本に開設したばかりで、日本の一般ニュースでも取り上げられ、話題になった。
当ファンドは、新NISA(少額投資非課税制度)の成長投資枠の対象になっており、そうしたことからも資金流入が増加した。
◆巨額投資と在庫サイクル
-半導体業界の特徴は。
加藤氏 半導体企業の特徴の一つとして、参入障壁の高さがある。企業によっては、年間数兆円の巨額の設備投資を何年も続けて行っていたり、たくさんの特許を保有していたりと、新規企業の参入が難しい。より強い企業がより利益を拡大していく傾向がある。特にメモリー半導体は、企業淘汰が進み、利益を得やすくなってきた。市場も拡大しているので、企業が得る利益はさらに増加している。
半導体市場には在庫循環によるサイクルがある。需要と供給の間にギャップが生まれるためだ。過去を振り返ると、3~4年で拡大と調整のサイクルを繰り返してきた。当ファンドは、在庫循環に注目し、半導体メーカーや卸売業業者、最終顧客の在庫を観察し、好業績であっても在庫がたまりつつあるタイミングでは、その株式の保有ウエートを削るなどして、超過収益を稼いでいる。
◆「業績の底打ち」を見極める
-運用の難しさは。
加藤氏 ポートフォリオの運用で難しいのは、投資のタイミングだ。半導体企業の株価は、企業業績に半年ぐらい先行するので「どこで業績が底打ちするか」をしっかり見極めることが重要だ。反対に業績が好調であっても、業績の伸びが落ち始めると、株価が下落してしまうことが過去には何回も起こっており、こちらも注意が必要だ。
また、「新しい言葉」にも注意が必要だ。在庫循環の拡大サイクルの終盤になると、薄れつつある期待感を補うかのように、「スーパーサイクル」「メタバース(オンライン上の仮想空間)」、「仮想通貨ブーム」といった、革新的ながらも、現実味を欠くように思えるトレンドを示す言葉が、世間の関心を集めるようになる。こうした「新しい言葉」が、本当に半導体市場に影響をもたらすのかを冷静に見極めることが大切だ。
◆デジタル半導体とアナログ半導体
-足元の半導体市況と対応は。
加藤氏 半導体は、デジタル半導体(AI、一般のデータセンター、パソコン、スマートフォン向け)とアナログ半導体(自動車、産業機械向け)に分けることができる。現在、デジタル半導体は、AI向けが好調を維持、パソコン、スマホは在庫処理が終わった。一般的なデータセンター向けは今年前半にも在庫処理が終了し、業績に底打ち感が出てくるだろう。全体として市場をアウトパフォームできる環境になってきた。
一方、アナログ半導体は、21~22年はコロナ禍で供給が不足し、自動車メーカーなどの顧客が在庫を積み上げた。現状は経済が回復し供給体制が整ってきたことで、顧客が在庫を元の水準に戻しており、業績の底打ちが見えていない。
当ファンドは、こうした投資環境に対して、デジタル半導体銘柄のウエートを増やして対応している。
◆AIとIoTによる「第4の波」が到来
-半導体市場の歴史は。
加藤氏 1980年代は、メインフレームと呼ばれる企業の基幹システム向けの大型コンピューターが半導体拡大の「第1の波」を作った。90年代はパソコンやインターネットによる「第2の波」が、2000年代は、スマートフォンやデータセンター、クラウド向けの需要が増えて「第3の波」が、それぞれ到来した。
2020年からは、AIやIoT(モノのインターネット)により「第4の波」が始まった。半導体市場は「第4の波」に乗って、新たな成長サイクルに入ったと見ている。
◆GDP成長率の2~3倍のペースで拡大
-半導体市場の見通しは。
加藤氏 過去50年を振り返ると、半導体市場は、世界のGDP(国内総生産)成長率の2~3倍のペースでコンスタントに拡大してきた。今後も「AIやIoT機器の普及によって、2030年まで高い成長が継続する」とする見方が、市場関係者の一般的な予想になっている。
半導体の市場規模は現在の5000億ドル程度だが「2030年までに1兆ドルに拡大する」という予想が、多くの市場関係者の基本シナリオだ。ただ、こうした見方が広まったのは数年前であり、現状のAI需要の拡大状況を勘案すると、市場規模はさらにアップサイドに修正の余地があるかもしれない。
◆イノベーションは過小評価されてきた
-AIやIoTの先行きは。
加藤氏 イノベーションが出始めた時、投資家は中長期のポテンシャルを過小評価しがちだと思う。例えば、パソコンが登場したとき「これが仕事にどう使われるのか」と疑問に思った人が多かった。インターネットにつないだときも「取得できる情報が限られている」と半信半疑だった。スマートフォンが出てきた時も、当時主流だった「ガラケーで十分」という声が上がった。
年明け以降発表された半導体各社の決算を見て「クラウド大手や企業によるAI半導体に対するこれだけの巨額投資は、AIの普及にかなりの確信がないとできない」という認識を強めた。投資家によるAIに対する過小評価が修正される段階で、「AIストーリー」に乗ることができる半導体関連銘柄には、アップサイドの余地が残っているのではないかと分析している。
◆企業取材で在庫チェック、経営戦略を分析
-運用の仕事内容は。
加藤氏 半期や四半期ごとに半導体企業等を訪問し、情報を収集している。その際「在庫状況がどうなっているか」「最終需要に合わせて出荷が出来ているか」といったことに注意して話を聞いている。在庫循環の見極め、いつ企業業績が回復するか、その確信度をいかに高められるかが勝負だ。
さらに、その企業がAIやIoTの流れにどうやって乗っていくのか、経営戦略にも注目してインタビューしている。
◆先入観に惑わされない
-投資哲学は。
加藤氏 過去10数年にわたって、米国を中心に成長株を見てきた。先入観に惑わされず、常に公平な企業価値評価を心がけている。
また、個別企業のファンダメンタルズに変化がないのであれば、株価が上ってきたらアップサイドが縮小するし利益確定しなければいけない。反対に、株価が下落しているのであれば、アップサイドが拡大していることを意識し、中長期的に良好なパフォーマンスを目指している。
さらに、市況が良い時だけでなく、むしろ悪い時にこそ、しっかりと説明責任を果たしたいと考えている。海外の株式は、一般の投資家の皆さんが入手できる情報が限られるので、しっかりフォローしていきたい。市況が悪い時にもしっかり当ファンドをご購入いただくことで、将来的に喜んでもらえるお客さまをたくさん作ることができると考えている。また、ファンドを中長期的に大きく育てることができるだろう。
◆有望企業に効率よく投資できる
-アクティブ運用の魅力は。
加藤氏 インデックスファンドは、時価総額に応じて組入銘柄を決め、ポートフォリオを構成しているものが多い。一方、アクティブファンドは、ファンドマネジャーやアナリストが企業を調査して組入銘柄を決めている。
一つ一つのアクティブファンドには、ストーリーがあり、いろいろな想いや考えで銘柄を選んでいるので、それに共感し、インデックスを上回る成長が期待できる点に魅力を感じていただけるのであれば、アクティブファンドを投資先の一つとして検討されても良いのではないかと考える。
アクティブファンドは、運用チームのクォリティの見極めが大切だ。当社は、運用者を開示して、「ファンドマネジャーが何を考えているか」などを文章まとめてホームページに掲載している。
アクティブファンドは、相対的に信託報酬が高い。ただ、インデックスの構成企業は玉石混交なところがあるが、アクティブファンドは、そうした「もったいない投資」をせず、成長が見込まれる有望企業を対象に、効率良く投資することが期待される。
◆長期の積立投資で資産形成
-投資家へのアドバイスは。
加藤氏 当ファンドは「半導体市場の中長期的な成長」の成果を享受することを期待されるお客さまにご購入していただくのが良いと考える。
半導体市場はこれまで、世界のGDP成長率を上回るペースで成長を遂げてきた。半導体は「ありとあらゆるハイテク分野で活用される」という構造的な成長ドライバーがあり、これから先も同様に成長していくことが期待される。
ただ、半導体市場はサイクルがあり、価格の上がり下がりがあるので、いつ投資すればいいか投資タイミングをとらえるのは難しい。投資タイミングを選ばない積立投資は、有効な手段になるだろう。
2月26日に当社のホームページに掲載したレポートに当ファンドの積立投資のシミュレーションを掲載した。設定月から毎月5万円を積み立てると、870万円の投資額に対して、積立評価額は6985万円になった。
【野村アセットマネジメント】(ご参考資料)「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」の純資産総額が2000億円を突破!!
https://www.nomura-am.co.jp/news/20240226MWTH2PTP.pdf