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バブル期の最高値も視野に=「稼ぐ力の向上」がカギ、日本株の中長期見通し-三井住友DSの市川氏

2023年06月29日 15時00分

三井住友DSの市川氏

 三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは「日本株の上昇は本物か?~株高の持続性について考える~」をテーマに記者勉強会を開いた。この中で、日本株の見通しについて「日経平均株価は、バブル期の1989年12月につけた最高値(3万8915円)までの戻りも視野に入るが、実現にはまだ数年を要する可能性がある」と分析した。

 その上で「持続的な株高には、日銀の異次元緩和を背景とした『金融相場』から、企業の好決算に裏付けられた『業績相場』への移行が重要であり、企業の資本効率改善と稼ぐ力の向上が、カギを握ることになろう」と指摘した。主なポイントは以下の通り。

◆日本株に五つの好材料

-日本株が急上昇した要因は。

市川氏 日本株に五つの好材料が浮上した。①インバウンド(訪日外国人)需要が回復した ②日銀が植田新総裁のもと異次元緩和を継続することが確認された ③東証が上場企業に資本コストや株価を意識した経営を要請した ④米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が日本株の追加投資を示唆した ⑤企業に賃上げの動きが広がった-だ。

◆日経平均株価、長期上昇トレンドが継続中

-日本株の見通しは。

(出所)三井住友DSアセットマネジメント(出所)三井住友DSアセットマネジメント(クリックで表示)


市川氏 現在の株高を支える要因を考えると、日銀の異次元緩和によって形成された『金融相場』がベースになっている。2012年12月に第二次安倍内閣が発足し、13年4月に日銀が量的質的緩和を始める中で、日経平均株価の長期上昇トレンドが形成され、現在も継続中だ。年末の日経平均株価は3万5400円を予想している。

◆バブル期の最高値も視野

-中長期のトレンドは。

市川氏 チャート的には、日経平均株価は過去最高値までの戻りが視野に入っている。上昇トレンドが継続すると仮定し、チャートの上値抵抗線と下値支持線と延長すると、過去最高値の全値戻しはまだ数年を要しそうだ。

 持続的な株高には、EPS(1株当たり純利益)の上昇が必要だ。日銀も将来的には金融緩和を修正するので、その時に「金融相場」に代わって「業績相場」で株価を支えられるかがポイントになる。東証の要請を受けて、企業が本格的・継続的に資本効率の改善に取り組むことが必要だ。

◆リセッションは回避-米国

-米国経済は。

市川氏 米国の金融不安は引き続き要注意だが、金融危機に発展するリスクは小さいだろう。中堅・中小銀行を中心に(融資に関わる)信用条件が引き締まると、リセッション(景気後退)入りの懸念は残るものの、当社のメインシナリオとしては、米国経済はリセッションを回避すると見ている。米国の雇用が安定しており、個人の過剰貯蓄が残っているので、米国の消費が大きく落ち込むことはないと考えているためだ。

◆年内に2回の利上げ=来年は利下げへ-米国

-米国の金融政策は。

市川氏 米国経済が底堅く、リセッションを回避する中で、米連邦準備制度理事会(FRB)は7月と9月に0.25%ずつ利上げを行うと予想している。その先は、来年(2024年)4-6月に0.25%の利下げに転じると見ている。米国の金融政策は、年内は円安要因、来年は円高要因になるだろう。

◆マイナス金利は不変=YCCは許容幅拡大

-日本の金融政策は。

市川氏 日銀は、早ければ7月にも、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を見直し、10年国債利回りの許容変動幅を上下1.0%程度(現在は上限0.5%程度)に拡大すると予想している。ただ、マイナス金利政策は不変で、基本的な金融緩和の姿勢は当面維持されるだろう。YCC見直しで一時的に円高に振れることはあっても、年内は円安基調が続くと見ている。年末の円相場は1ドル=140円を予想している。

 

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