お客さまの資産運用をサポート=ゴールベースアプローチサービスで伴走-証券ジャパンの綿川社長に聞く
2023年06月21日 11時30分
証券ジャパンは、ゴールベースアプローチサービス「ユメミライテラス」の取り扱いを2月より開始した。アドバイザーが、お客さま一人ひとりのライフプランに合わせた運用プランを立て、長期にわたって伴走し、資産形成や人生の目標(ゴール)の達成をサポートする。綿川昌明社長に、サービス導入の狙いや、このサービスを浸透させるためのポイントなどを聞いた。
-サービスの概要は。
綿川社長 当社は、IFA(独立系アドバイザー)や地域金融機関・地域証券会社のアドバイザーを通じて、お客さまのゴールやリスク許容度に基づいた運用プランを策定するとともに、お客さまと投資一任契約を締結して、資産運用サービスを提供している。
IFAなどのアドバイザーは、長期にわたってお客さま一人ひとりのライフプランに伴走するコンサルティングを提供するなど、きめ細やかなアフターフォローを実施し、お客さまが望む未来(ミライ)の夢(ユメ)の実現を継続的にサポートしていく。
資産運用に当たっては、岡三アセットマネジメントの専用ファンド「グローバル資産分散投資ファンドA~Eコース」を活用する。また、運用プランの策定やコンサルティングを支援するツールとして、日本資産運用基盤グループとQUICKが開発したフロントソリューションを利用する。
-ゴールベースアプローチ(GBA)型ラップサービスを開始した狙いは。
綿川社長 証券会社のビジネスは、「この株が値上がりする」といった情報に重点を置いて、お客さまに投資機会を提供してきた。このため、お客さまが証券会社で運用する資金は、いわゆる「サテライト資産」と呼ばれるリスクを取っても良いお金が中心だ。一方で、例えば老後資金や家の改築費用など「コア(中核)資産」と呼ばれる守りお金は、銀行等の預貯金になっている。
私は、「全ての投資がリスクの高いものではない」ことを、もっと国民の皆さんにご理解していただき、証券口座を広め、コア資金を証券会社で運用していただくことが重要だと考えている。そのため、GBA型ラップサービスの取り扱いを開始した。
当社は「ゆたかな未来へあなたとともに」をコーポレートスローガンに掲げている。私は、ライフイベントに対する不安を取り除いてもらうことが、このスローガンを実現する上で重要だと考えた。GBA型ラップサービスであれば、コンサルティングを通じて将来のライフイベントに対する備えをお客さまと一緒に考え、その備えを預貯金ではなく、投資でやっていただくお手伝いを将来にわたって提供することが出来る。
-GBA型ラップサービスで期待される効果は。
綿川社長 GBA型ラップサービスでは、お客さまと契約を結ぶことが、ゴールではなく、スタートになる。定期的にアフターフォローを実施して、お客さまのお話をうかがい、お子さまの誕生など家族構成の変化に対応したり、運用状況をチェックしたりして、プランを見直すことができる。アフターフォローが定期的に行われることでお客さまは安心するだろう。アドバイザーは、伴走者としてお客さまを継続的にサポートする。
退職後の資産の取り崩しも重要なサービスになるだろう。個人のお客さまが自分で資産の取り崩し計画を作成するのは、なかなか難しい。GBA型ラップサービスであれば、アドバイザーが運用環境や資産額を確認しながら資産寿命を試算し、お客さまに適切なアドバイスをすることによって最適な取り崩しサービスが提供できるようになる。
退職前世代についても、60歳になって老後の生活資金を考えるより、50歳の時にセカンドライフを考える方が、スムーズに準備ができる。「ユメミライテラス」には、運用プラン作成のツールがあるので、早いうちに老後に向けた備えを始めることで、将来の不安を解消してもらえるだろう。
-GBA型ラップサービスを浸透させるには
綿川社長 お客さまには、身近なゴールを提案し、GBA型ラップサービスを経験していただくのが良いと考えている。何千万円のゴールを目指してスタートするよりも、例えば「お子さまの学資ゴールを作りましょう」といった身近なゴールを設定して、このサービスに触れていただくことが重要だろう。
社員については、「ゴールベースアプローチが今までのサービスとは違う」ことを理解し、お客さまに説明できることが大切だと考えている。なぜゴールベースアプローチサービスが必要なのか、社内で啓発活動を行っている。
GBA型ラップサービスでは、お客さまが必要とする情報も、従来の証券営業とは大きく異なるだろう。これまでであれば「今後の株式相場の動向」といった話が中心だったかもしれない。ゴールベース型ラップでは、例えば、「新年度で新制度がスタートする。税制がこう変わる」といった話題が重要になるだろう。お客さまのライフプランに影響する変化を、しっかりと説明できることが大切だ。「公的年金の実質的な受取額がこう変化する」といった話から、将来の取り崩し額の見直しに話が進むかもしれない。
また、世の中には知らないために損していることもある。例えば、20歳になると公的年金の保険料を払い始めるが、親が代わりに支払うと所得控除の対象になる。こうした気づきを与えるアフターフォローを行うことも必要だろう。
-これからの証券ビジネスは。
綿川社長 株式や投資信託の販売手数料など、いわゆる「フロントフィー」が低下している。お客さまの資産をお預かりして手数料(フィー)をいただく、ストックビジネスへ転換することが重要だと考えている。
ストックビジネスの対象となるのは、銀行等の預金となっている「コア資金」だ。「サテライト資金」を対象とした証券ビジネスを継続しながら、コア資金を取り扱うストックビジネスを拡大していく。GBA型ラップサービスを、当社の中核事業に育てていければと期待している。
当社は、4月にスタートした第6次事業計画の基本方針で、「資産形成の普及・拡大の担い手として付加価値の高いサービスを提供する」ことを掲げた。「お客さまのゆたかな未来を共創する『リテール・プラットフォーム・カンパニー』」として、2028年3月末にはストック型預かり資産残高で1500億円を目指す。
リテール・プラットフォームとして、GBA型ラップサービスに加えて、5月からは企業型確定拠出年金プランの取り扱いを始めた。来年1月に新NISA(少額投資非課税制度)がスタートする。一人でも多くのお客さまにこの制度を利用していただくことが、当社の社会的使命だと考えている。