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ロボアドバイザー、分散投資の普及に活躍=バランス型で「つみたてNISA」-楽天証券

2023年02月17日 08時00分

(出所)楽天証券「2022年12月期 決算説明資料」(出所)楽天証券「2022年12月期 決算説明資料」(クリックで表示)

 楽天証券のロボットアドバイザー「らくらく投資」が好調だ。昨年12月末時点の利用者数は前年同月比3倍の14.1万人に増加し、資産残高は同5.5倍の238億円に拡大した。このサービスは、お客さまのリスク許容度に合った運用コースをロボアドバイザーが提案し、コース専用のバランスファンドを「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」などお客さまが選択した口座で投資できる。

 若者の投資スタイルを巡って、例えば米国株式のインデックスファンドなど1種類のアセットクラスだけで積立投資をする人が多いことについて「時間分散はできているが、資産分散が不十分ではないか」と指摘する声がある。ただ、「らくらく投資」を使えば、手軽に株式・債券・不動産に分散投資するバランスファンドで積立投資をスタートできる。

 3日開かれた決算説明会で、楠雄治社長は「新NISA(少額投資非課税制度)のスタートで投資家の拡大が見込まれる中、簡単にポートフォリオ運用を始められるという点において、ロボアドバイザーは非常に重要な位置付けを占めてくるのではないか」と指摘した。

楽天証券アセットビジネス事業部リーダーの増満彩氏


 「らくらく投資」を担当する楽天証券アセットビジネス事業部リーダーの増満彩氏に、投資を始める若者の悩みや、それに応える「らくらく投資」の工夫などを聞いた。

◆三つの悩み

-投資を始めるときの若者の悩みは。

増満氏 お客さまから多くいただく悩み事が、三つある。一つ目は「どこで始めるか」。二つ目は「どの商品で積み立てるか」。三つ目は「毎月の積立額をいくらにするか」だ。

 投資未経験の方は、ネットやSNSで「みんなが『つみたてNISA』をやっている」ことを知り、投資について関心を持つことが多いようだ。口座開設先の金融機関については、ネット証券を紹介しているサイトが多い。サービス内容を比較するコンテンツを見ながら、「自分は楽天市場をよく使って楽天経済圏で暮らしているから、楽天証券にしよう」というように、自分の生活に合った金融機関を選んでいると思う。

-商品選択は

増満氏  投資する商品については「たくさん商品があって、どれを選んでいいか分からない」「本当に自分に合っている商品はどれだろう」といった悩みを、セミナーやアンケートでいただくことが多い。

 ネットやYouTubeで、米国の代表的な株価指数である「S&P500」に連動するインデックスファンドが紹介されているのを見ても、「それで本当に良いのだろうか」「みんなにとってはそれが良いのかもしれないが、自分に合っているのか分からない」と考えるお客さまも多くいる。

 特に最近は、株式市況のボラティリティ(価格変動率)が上昇している。「S&P500」でネット検索すると、これまでは「『S&P500』、最強!」「『S&P500』で間違いなし」といった声が多かったが、このごろはさまざまな考え方が示されるようになり、悩むお客さまが増えているように思う。

 若い方であっても「自分には未来に向けて時間がたくさんあるのだから、リスクの高い商品1本で大丈夫だ」という人ばかりではない。「リスクの高い商品だけで大丈夫なのか」と心配するお客さまは非常に多い。時間分散、資産分散、リスク分散を考える方は、若者にもたくさんいる。

◆「簡単・手軽」「お任せ・安心」

-「らくらく投資」を選択した若者の理由は。

増満氏 ロボアドバイザーの「らくらく投資」は、簡単な質問に答えると自分のリスク許容度に合った運用コースを提案してくれ、各コース専用のバランスファンドで投資ができる。る。「自分で商品を選ばなくて済む」「簡単で手軽に始められる」という点が、これから投資家デビューしようとする多くのお客さまに、選ばれている一番の理由だと感じている。

 次に多い理由は、提案する商品がバランスファンドなので、自分でポートフォリオを組んでリバランス(ポートフォリオの資産配分の調整)をする必要がないことだ。「お任せ・安心」と感じて投資していただいている。

◆シミュレーションで目標を「見える化」

-「らくらく投資」を選択した若者の声は。

増満氏 「投資は難易度が高くてできなかった」といった初心者のお客さまから、「『らくらく投資』は、投資を始める、きっかけになった」という声をいただいた。「口座はとりあえず何年か前に開いたのだが、銘柄選びで挫折していた。久しぶりにログインしたら、『お買いものパンダ』が目についた。『らくらく投資は、手軽で簡単』とあったので、診断を受けてみたら、自分も投資デビューできた」というお客さまもいた。

 一から自分で調べて、SNSなどを駆使して自力で銘柄を探し出して、投資を始められる方ばかりではない。「らくらく投資」は、「投資は難易度が高い」と感じている方に、デビューのきっかけを与えるサービスになっていると思う。

 当社のサイトには、資産形成のシミュレーションツール「積立かんたんシミュレーション」がある。「毎月の積立金額」と「積立期間」「目標リターン」を入力すると「最終積立金額」を計算できる。あるいは、「最終積立金額」と「積立期間」「目標リターン」を入力すると、「毎月の積立金額」を計算できる。資産形成のイメージがつかみやすく、積立投資を始める際の後押しになっていると思う。

「らくらく投資」の各コース専用のバランスファンド「らくらく投資」の各コース専用のバランスファンド(クリックで表示)


 「らくらく投資」の各コースは、それぞれ「目標リスク水準」を掲げている。これだけでは、具体的な資産形成のイメージがわかないが、シミュレーターを利用することで、積立投資を続けた場合の将来の資産予想が「見える化」されるので、それが目標となり、投資をするモチベーション(動機付け)になっていると思う。

◆「公式キャラクター」で親しみ、導線に工夫

-「らくらく投資」に目を向けてもらう工夫は。

増満氏 「らくらく投資」は、「まだ投資を始められていない方」にご利用いただきたいサービスなので、口座を開設した直後のお客さまが当社サイトにログインしたタイミングや、口座開設後に最初にお送りするメールといった最初のタッチポイントに、必ず「らくらく投資」をご紹介している。そのほか、「らくらく投資」を知ってもらい、選んでもらう導線も工夫をしている。

 「らくらく投資」には、楽天の公式キャラクター「お買いものパンダ」を使っており、楽天市場など楽天グループのサービスを利用するお客さまにも親しみやすいのではないかと考えている。

(出所)楽天証券ホームページ(出所)楽天証券ホームページ

 また「らくらく投資」のスマホ用のメインページをリニューアルした際に「投資未経験者」と「投資経験者」の2パターンに分けて情報を出せるようにした。投資初心者と上級者では知りたい情報が異なるので、それぞれに合った情報を提供するためだ。初心者のお客さまには、簡単な診断で手軽に投資を始められる点、購入後の運用も自動でお任せできる点をアピールし、経験者のお客さまには、各コースの運用のリスク・リターンやパフォーマンスといった運用実績をアピールし、ファンドの良さを理解していただけるようにしている。

◆アフターフォローで、しっかりサポート

-分散投資の重要性は。

増満氏 当社のホームページでは。運用タイプ別に人気ファンドを検索できる。積立投資のランキングを見ると、引き続き「S&P500」に連動するインデックスファンドが人気だが、バランスファンドを選ぶお客さまも増えている

 市場のボラティリティが上昇する中で、分散投資の必要性・重要性を体感している方が多いのではないか。2020年にコロナショックを迎えるまで株式相場が右肩上がりに上昇する展開が続いていたので、2018年にスタートした「つみたてNISA」で投資を始めた方の多くは、それまで資産がマイナスになることなく、増えることしか知らなかった。ただ、株価が下落局面に入り、初めて資産がマイナスになることを体験して、「このままで大丈夫かな」という考える方も増えている。

 こうしたお客さまの中には、「らくらく投資」を使って、バランスファンドを選択し、投資商品のリスク水準を引き下げる方もいるし、自分自身でほかの資産に投資するファンドを組み入れてポートフォリオのリスク水準を下げる方もいる。

「つみたてNISA」銘柄の買付額ランキング (楽天証券)「つみたてNISA」銘柄の買付額ランキング (楽天証券)(クリックで表示)

 ただ、投資初心者の中には、怖くなって「投資を止めよう」「積立額を減らそう」と考える方もいるかもしれない。こうしたお客さまの不安を解消するために、相場が大きく下落した際にはフォローアップのメールをお送りして、「投資を継続することの重要性」をお伝えしている。また、「らくらく投資」専用ファンドをお持ちの方には、四半期ごとに運用レポートをお送りして、「安定的にファンドの運用ができていること」を報告して安心していただくといったサポートなどを実施している。

-新NISAでの展開は。

増満氏 「らくらく投資」は、多くの方の投資家デビューのきっかけになり、楽天証券の「つみたてNISA」口座の拡大に貢献できていると感じている。2024年に新NISAが始まることで、投資に対する注目度が高まっている。投資家デビューする人はますます増え、「どの商品を選んでいいか分からない」と悩む方も増えるだろう。しっかりと投資初心者のお客さまをサポートしていきたいと考えている。

 

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