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「中国式現代化」「安全」「科学」が浮上=共産党大会が閉幕-日興AMホンコンの山内副社長

2022年10月27日 12時00分

日興AMホンコンの山内副社長

 中国共産党大会が10月22日、閉幕した。日興アセットマネジメントは「現地マーケットから見る中国共産党大会」をテーマに記者勉強会を開き、日興アセットマネジメント ホンコン リミテッドの山内裕也副社長がポイントを解説した。

 山内氏は、党大会報告について「マーケットの視点で見ると、無難な内容で、大きな変化はなかった」と分析した。その上で「『中国式現代化』『安全』『科学技術教育立国』などのキーワードが出てきた。今後、注目されるだろう」と指摘した。

-党大会の注目点は。

山内氏 今年の中国共産党大会は10月16日から22日に開催された。「党大会報告」が採択され、新指導部が発表された。政治の観点では「習近平総書記の体制がどの程度、盤石なのか」「対外政策はどうなるのか」といったことが注目された。

 マーケットの観点からは、「経済政策の大方針に変化はないか」「習総書記の下で実動部隊の顔ぶれがどうなるのか」が注目された。

-党大会報告とは。

山内氏 党大会報告は、中国共産党の文書の中でも、最も大切なものの一つだ。中身は非常に幅広く、内政から外交、軍事まで幅広くカバーされている。今後の方針が書かれているが、その内容は大まかな方向性にとどまっており、具体的な数字を材料に投資判断できるほど細かい話は、ほとんどない。

 今年の党大会は、マーケットの注目度が高かった。共産党が、経済に大きな影響力を持っており、党が主導する構造改革を国のあらゆる分野で進めているためだ。過去5年間を見ても、例えば2018年の「デレバレッジ(金融行政規制)」、2020年からの「教育産業・プラットフォーマー・不動産産業に対する規制」、さらに「ゼロコロナ政策」などが、株価に大きな影響を与えてきた。

-今回の党報告の評価は。

山内氏 16日に習総書記が報告したダイジェスト版を見る限り、経済の面からは、無難な内容で、びっくりするような大きな変化は無かった。事前に懸念されていたような内容は出ず、反対に特別に目新しいものも無かった。その中で、キーワードとして「中国式現代化」「安全」「科学技術教育立国」が注目される。

-長期目標のポイントは。

山内氏 現在の目標である「ゆとりある生活の実現」は達成されたので、それに代わるものとして「中国式現代化」が掲げられた。重い位置付けを与えられた目標であり、現地の専門家も今回の党大会のポイントとして「中国式現在化」を挙げるほどだ。

 党報告では、中国式現代化のポイントとして、「巨大な人口規模」「全人民の共同富裕」「物質文明+精神文明」「人と自然の共生」「平和的発展」が掲げている。ただ、現時点では、抽象的な内容にとどまっており、これからその内容を見ていくことが必要だ。マーケット的には、この中に盛り込まれた「共同富裕」が気になるところだ。

-共同富裕の扱いは。

山内氏 「共同富裕」は、長年にわたり党報告に入っている言葉だ。あまり気にされてこなかったが、2021年になって積極的に使われ始めた。同じ時期にIT企業に対する規制が始まったことから、民営企業に対する規制をイメージさせる言葉になっている。共同富裕は、「格差の縮小」を掲げているので、高級消費に関係する株式銘柄が値を下げることが一般的だ。

 今回の党報告で、共同富裕は独立した項目にならず、「民生」の中にとどまった。共同富裕に関連すると思われるものとして、新たに「資産蓄積の構造を改める」が追加された。ここからは、不動産などの資産に対する課税が想像される。

-発展戦略は。

山内氏 前回の党報告では「経済発展が党の最も重要な任務」とされ、「質の高い発展のための施策」が記載されていた。今回の党報告も、この戦略を踏襲した。このことは、マーケットに安心感を与えた。

 質の高い発展のための施策として、「産業高度化」「イノベーション」「農村振興」「地域別政策」「各種制度改革」「対外開放」に加えて、新たに「内需拡大戦略の重要性」が指摘された。具体的な中身が出てくれば、注目されるかもしれない。

-追加された項目は。

山内氏 国家の「安全」と「科学技術教育立国戦略」が、独立した項目になった。

まず、国家の「安全」だが、産業面では「食料」「エネルギー」「重要産業サプライチェーン」が取り上げられた。業種で言うと、エネルギー技術、エネルギー輸送、バイオ技術、種苗会社などが注目を集めやすくなるだろう

また、新たに「科学技術の安全」が追加された。米国による、テクノロジー面での中国排除に危機感を抱き、安全という観点からも、先端のテクノロジーに力を入れる方針が示された。

-科学技術教育立国戦略は。

山内氏 党報告では、科学技術強化については「挙国体制を構築する」「国家戦略を強化する」「中核となる技術開発を実現する」といった、力の入った文言が記載されている。

ここからは「国産技術のキャッチアップ」というテーマが考えられる。海外技術に依存している分野について、政府の支援で中国企業の成長を加速させる。現地のアナリストは、例えば半導体、ソフトウエア、航空機、製造加工機器といったアイデアを発掘している。

-事前に関心が高かったが、扱いが小さかった項目は。

山内氏 ゼロコロナ政策、不動産、台湾問題については、市場に新たな反応を呼び起こすものがなかった。まず、ゼロコロナ政策だが、これまでの成果を評価する一方で、今後については「重大な感染症の予防・治療体制、緊急体制の構築を通じ、感染症の拡大を抑制する」と書かれただけで、ゼロコロナ政策の先行きを予想する材料にはならなかった。

 不動産も、前回と同じ記載だった。足元では、不動産市況の回復の遅いことが懸念されているが、党としては既に対策を講じているということだろう。

 台湾問題については、党報告の中でも「この問題を解決する」という意志が、いろいろなところに記載された。ただ、中国の本土市場の観点で言えば、緊張が高まりそうだという印象は持っていないようだ。海外の投資家と中国の投資家では受け止め方が異なっている。

-次期指導部の人事は。

山内氏 習総書記に近い人で一色の構成になった。市場がここから読み取ることは、「従来の方向性がさらに強化される」ということだ。今後は「政府の新しいスタイルを見極める」というステージになる。

 来年3月の全国人民代表大会で次期政権が発足することになるが、それより早く、今年12月に開催される経済工作会議で、新しい政府のカラーが出てくる可能性があり、注目される。

-中国本土市場と香港市場の動きは。

山内氏 香港市場は、党大会後の10月24日に株価が大きく下落した。中国政府の動向が不透明なときは、中国本土市場と香港市場のパフォーマンスに違いが出ることが多い。ただ、香港市場の値動きだけでマーケットの評価を判断するのは早計で、中国本土市場と香港市場の両方を、時間をかけて見ていくことが大切だ。

 

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