Fintech協会、「ベンチャーデットの教科書」を出版=東証グロース市場改革でIPOまでの期間が長期化、スタートアップへの資金供給が課題に
2026年10月01日 08時00分

一般社団法人Fintech協会は、「ベンチャーデットの教科書」(金融財政事情研究会)を出版した。黎明期にある日本のベンチャーデット(スタートアップへの融資または社債による資金供給)について、第一線で活躍する実務家が共同で執筆し、活用事例から法制、リスク管理、会計・税務まで、簡素かつ網羅的にまとめた。
東証のグロース市場改革で、新規上場(IPO)までの期間が長期化する中で、「スタートアップへの資金供給をどう円滑に実行するか」が課題に浮上している。
出版を記念して、同協会の髙尾知達常務理事(ファンズ取締役 海外事業管掌COO兼CLO/弁護士)が「成長企業への資金供給の在り方に関する制度動向について」をテーマに勉強会を開催した。主な発言は以下の通り。
◆実務の論点や実務了解を概観
-企画の経緯は
(髙尾氏)髙尾氏 ベンチャーデットという言葉は、2023年6月に閣議決定された「新しい資本市議のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」において登場した。
黎明期にある日本のベンチャーデットについては、スタートアップのエコシステムの中で、共通の実務了解が不在となっている部分がある。例えば、新株予約権(ワラント)付き融資・社債については、メガバンクでも取扱いが分かれていた。本書では、どこまでが共通の実務了解で、論点がどこにあるかを整理した。
また、東証のグロース市場改革により、2030年以降「上場5年経過後から、時価総額100億円以上」を目指す方針が示されたことで、早期に小規模のまま上場するのではなく、「ベンチャーデットをうまく活用して事業を作り込んだ上で、IPOを行った方がいいのではないか」といった問題意識が広がっていることも、本書を企画した背景にある。
◆企業価値担保権、新株予約権付融資
-本の中に盛り込まれた重要なトピックは
髙尾氏 一つ目は、全国銀行協会が2025年2月に、会員行向けに公表した「スタートアップ融資実務ハンドブック」だ。ベンチャーデット市場に新規参入や拡充を検討している金融機関に対して、スタートアップ融資について基礎的な項目を整理して取りまとめた。本書では第3章で取り上げている。
二つ目は、2026年5月の企業価値担保権の施行だ。ベンチャーデットは無担保で、事業性に着目した融資になるので、企業価値担保権と相性がよいはずであり、ベンチャーデットとともに普及することが望ましいと思われる。第5章に盛り込んだ。
三つ目は、2026年2月に公表された全銀協の「新株予約権付融資に関する検討会報告書」だ。この報告書は、新株予約権付融資について、可能な限り明確化を図った画期的な内容になっており、新株予約権部分の利息該当性などについて考えを整理している。第8章で取り上げた。
四つ目は、EY Japanが2024年10月に公表した「企業における最近の会計上のトピックス~ストック・オプション、ベンチャーデットの留意点~」だ。会計基準上の「複合金融商品」の該当性などの方向性を提示している。第9章で取り上げた。
◆実務をブラッシュアップする段階に
-今後の動向は
髙尾氏 ベンチャーデットは制度面について、ある程度の到達点に達したと考えている。今後は、ディープテックのスタートアップにどのような評価軸で、どのタイミングで融資すべきか、あるいは、どのような特約条項(コベナンツ)でリスクヘッジすればよいかなど、制度を運用する中で実務了解をブラッシュアップしていく段階になると考えている。



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