新興国株式、今後も堅調な動きが続くだろう=活発なAI設備投資やエネルギー価格を背景に-BNPパリバAMのジーカイ・チェン氏
2026年11月04日 08時30分

仏大手運用会社BNPパリバ・アセットマネジメントのアジア/グローバル新興国株式部門責任者のジーカイ・チェン氏が来日し、時事通信社のインタビューに応じた。
新興国株式は2025年以降、上昇に転じ、先進国株式を上回るリターンを上げている。チェン氏は、「活発な人工知能(AI)関連の設備投資や高止まりするエネルギー価格を背景に、今後も値上がりを続けるだろう」と述べた。
その上で「多様な国々がそれぞれに成長ドライバーを持っており、株価のボラティリティも大きい。アクティブ運用でリスクを避けることが、パフォーマンスを向上させるカギになるだろう」と指摘した。主な発言は以下の通り。
◆AI関連の設備投資やエネルギー価格が追い風に
-新興株株式の運用体制は
チェン氏 私は、香港、クアラルンプール、ロンドン、ボストンに拠点を置く9人のメンバーと共に、グローバルな新興国株式とアジア株式を運用している。また、ブラジル、インドネシア、トルコ、ポーランドなどの100%子会社の運用も統括しており、新興国を幅広くカバーしている。
-新興国株式の上昇要因は
チェン氏 新興国株式は、2025年以降、非常に順調に上昇している。新興国の代表的な株価指数である「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」の上昇率は、先進国株式の指数「MSCIワールド・インデックス」を上回っている。
要因の一つは、活発なAI関連の設備投資だ。データセンターの建設が進んでいるが、韓国や台湾、日本は、サプライチェーンの大きな部分を占めており、AI半導体などの素材の多くがアジア地域から供給されている。このため、台湾のTSMC(台湾セミコンダクター)や、韓国のサムスン電子、SKハイニックスは、収益やキャッシュフローの観点で、世界のトップ企業に名を連ねるような活況が続いている。
二つ目は、中東情勢の緊迫化に伴う、エネルギー価格の上昇だ。ラテンアメリカの産油国の株価は、大きく上昇した。この二つがキードライバーになって、新興国株式を上昇させている。
新興国は、過去にはアジア金融危機など痛みを伴う苦しい時期を乗り越えてきた。新興国の政府や企業は財政の立て直しを行い、バランスシートはかなり健全な状態になっている。GDPに対する債務比率は、先進国より良い状態だ。
過去30年の設備投資によって、アジアの新興国は「世界の工場」として成長してきた。AIブームも、台湾、韓国、日本からの部品が無ければ進まない。製造業の拠点として、テクノロジーの提供者として、アジア新興国の役割がますます高まったと言えるだろう。
◆グローバルなサプライチェーンを支える
-台湾と韓国の半導体企業の注目点は
チェン氏 台湾のTSMCは、世界最大の半導体受託製造企業として、AI半導体を供給している。データセンターで使用するAI半導体の製造には、最先端の技術力が不可欠だ。半導体製造装置を購入することは誰でもできるが、TSMCが実現している製造過程の歩留まりの良さは、すぐにまねのできるものではない。そうしたソフトスキルは、他社には追随できないものだ。
韓国は、HBM(広帯域メモリー)の供給で高いシェアを持っている。AIには、広帯域メモリーが不可欠だ。AIの世代が進むごとに、必要とされるHBMの容量が大きくなっており、メモリーの需要を押し上げている。また、携帯電話やパソコン、テレビ用などの従来型メモリーの需要も増加している。製造能力に占めるHBMの割合が高まると、従来型メモリーの供給も不足し、メモリー価格が全体的に上昇している。
ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)は、今後もAI関連の設備投資を積極的に進めると発表しており、アジアの半導体メーカーの収益に追い風になるだろう。
◆中国、独自のモデルで安価で高性能なAIを追求
-中国のAI半導体企業の注目点は
チェン氏 中国のAI産業は、米国のアンソロピックやオープンAIと並行しながら、異なる方向からAIを開発している。中国では、米国の輸出規制により最先端のAI半導体等を入手できないので、こうした半導体を使わずに、安価で高性能なAIモデルを独自に開発することに挑戦している。
中国のAI産業では、設計からAI半導体やメモリーまで、中国版の製品が育ってきている。ただ、高品質のAI半導体を大量生産するには制約がありそうだ。
◆多様な国々があり、アクティブ運用が有効
-新興国株式の見通しは
チェン氏 私は、26年間、新興国株式を運用してきたので、新興国のファンダメンタルズの変化を見ており、新興国は今後も堅調な動きが続くと見ている。
過去の長期の実績で見ても、1999年の設定以来、新興国の株価指数である「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」は、先進国株式市場の「MSCIワールド・インデックス」を上回るリターンを残してきた。
新興国にはさまざまな国があり、異なる成長ドライバーや下支え要因を持っている。新興国は急速に成長しており、イノベーション(技術革新)を生み出す企業もある。また、世界の製造業の拠点としての役割を確立してきた。一部の新興国は、エネルギーの輸出国であることもプラスに働くだろう。
投資家の立場でみると、先進国の株価指数「MSCIワールド・インデックス」と、新興国の「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」は相関性が高くないので、分散投資の効果を得ることが期待される。
新興国株式は、価格変動が大きい。アクティブ運用を活用すれば、各国の状況を詳細に検討して、リスクを避けることができる。パフォーマンスを向上させるカギとなるだろう。



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