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制度改正が進む確定拠出年金=「見える化」など控え、運営内容を確認するステージ-人材確保、インフレ対策に役立つツールに

2026年11月04日 10時00分

(左から、中浜氏、斎藤氏、大江氏、小泉氏)(左から、中浜氏、斎藤氏、大江氏、小泉氏)

 「DCグッドスタート認定制度」の記者会見に出席した4人の有識者に、確定拠出年金(DC)の役割や、制度改正が進む中で企業に求められることを聞いた。

 キャピタル・インターナショナル社長の小泉徹也氏は「DCを導入する企業に入社すれば、誰でも半自動的に資産形成をスタートできる点が、大きなメリットだ。老後に向けた長期の資産形成を国民全体に広げていく上で、大きな役割を果たすことが期待されている」と述べた。

 バリューマネジメント社長でIFAの中浜祐士氏は「DCでは、制度を導入するだけでなく、従業員がDCをしっかり活用していくことが重要だ。『DCを活用して、長期投資でしっかりと退職金を作ろう』という意識を、社員に持ってもらうことが大切だ」と話した。

特定非営利活動法人 確定拠出年金教育協会 理事兼主任研究員の大江加代氏は「DC制度の『見える化』や拠出限度額の引き上げを控えて、労使で制度の内容を確認するステージにあるように思う」と述べた。

 同協会 理事長の斎藤順子氏は「DCは、中小企業の喫緊の課題である人材確保に貢献する制度であり、インフレに負けない購買力を確保するためのツールの一つになりうる」と指摘した。主なポイントは以下の通り。

◆「半自動的」に長期の積立投資をスタートできる=小泉氏

-企業型DCの優れた点は

小泉徹也氏(キャピタル・インターナショナル社長) 確定拠出年金(DC)を導入する企業に入社すれば、誰でも半自動的に資産形成をスタートできる点が、大きなメリットだ。企業には従業員に対して投資教育を継続的に提供することが義務付けられており、老後に向けた長期の資産形成を国民全体に広げていく上で、大きな役割を果たすことが期待されている。

 企業型DCでは、企業が掛金を拠出してくれる。さらに、従業員自身が掛金を追加するマッチング拠出もできる。自分のポケットからではなく、企業の拠出で老後の資産形成をスタートできる意義は、大きいと思う。日々の生活の中で資産形成について意識する機会が少ない人でも、企業型DCが老後に向けた資産形成に取り組むきっかけとなる。

 最近では雇用の流動化が一段と進んでいる。DCはポータビリティ(持ち運び)に優れており、企業型DCのある企業に転職すれば、そこの企業型DCに加入して資産形成を継続できる。企業型DCがなくても、個人型確定拠出年金(iDeCo)に移管して長期にわたる資産形成を続けることができる。

 DCは、60歳まで引き出すことができない。少額投資非課税制度(NISA)との大きな違いだが、老後に向けた長期の積立投資を迷うことなく継続できるという点において、有意義な仕組みだと思う。また、税制面でも、掛金の拠出時と運用時に非課税のメリットを享受できるほか、受取時も退職所得控除や公的年金等控除を利用することで税負担を軽減できる。

 このようにすばらしい制度があるのだから、1社でも多くの企業に採用してもらい、1人でも多くの勤労者がDCを活用できるようにすることが、日本にとって大切なことだと考えている。

◆コンサルティングに強み、長期の時間軸で生涯のお付き合い=中浜氏

-ファイナンシャルアドバイザー(IFA)の役割は

中浜祐士氏(バリューマネジメント社長、IFA) DCでは、制度を導入するだけでなく、従業員がDCをしっかり運用していくことが重要だ。IFAは運用コンサルティングをビジネスとしているので、「社員がどのようにDCに向き合って、どのように掛金を運用するか」について、説得力のある話ができる。「DCを活用して、長期投資でしっかりと退職金を作ろう」という意識を、社員に持ってもらうことが大切だ。

 社員がDCを通じて積極的に資産形成に取り組むことは、会社に財務上のメリットをもたらす可能性がある。会社が「選択制」もしくは「選択制+会社拠出」という制度設計をした場合、従業員が追加する掛金は、社会保険料を算定する所得から外れるので、労使折半で負担する社会保険料が若干減少するケースもあるためだ。DCの運営にはコストがかかるが、企業の負担を減らす効果を生み出す面もある。

 IFAは、長期の時間軸でお客さまと生涯のお付き合いができる。人生のさまざまな局面でアドバイスを提供できるので、長期の資産形成を行う上で、安心感を持ってもらえるだろう。また、DCに加入した当初から個々のリスク許容度に応じて成長資産を組み入れて長期の資産形成を行うことで、退職時に適切な運用成果を獲得することが期待される。

◆「見える化」で比較可能に、制度内容を確認するステージに=大江氏

-制度改正が進む中で企業に求められることは

大江加代氏(特定非営利活動法人確定拠出年金教育協会 理事兼主任研究員) 企業型DCでは、2027年度中に、企業ごとの運営状況を「見える化」する取り組みがスタートする。具体的には、厚生労働省が事業会社ごとに「採用している商品」や、「その商品で運用している加入者の人数」などを開示することが決まっており、他社と比較しながら運用改善がなされることが期待されている。

 「従業員が、運用商品を選べているかどうか」が、外部から見えるようになるので、事業主としては自社のDCの運営状況をチェックして、足りない部分があれば、改善することが必要だろう。例えば、元本確保のみで運用している従業員に対しては、改めて継続教育の機会を設けて、「インフレによる実質価値の目減り」や「長期投資の効果」について情報提供し、後悔のない資産配分に変更してもらうサポートをすることが考えられる。また、インフレが定着する中で、デフォルト商品のあり方も検討課題になるだろう。

 企業型DCをめぐっては、4月にマッチング拠出の制限が撤廃された。12月には拠出限度額が引き上げられる。当協会が調査したところ、半数の企業が「マッチング拠出の額が増えた」と回答した。また、「掛金の増額を検討している」とする企業は3割程度あった。企業型DCの制度改正をきっかけに、労使で制度の内容を確認するステージにあるように思う。

◆DCが人材採用に奏功、インフレに対応するツールに

-DC導入企業の状況は

斎藤順子氏(特定非営利活動法人確定拠出年金教育協会 理事長) 確定拠出年金が日本に導入されて、今年で25年になる。導入の狙いの一つに「中小企業など、企業年金を持たない企業が、初めて採用する企業年金にしたい」という思いがあった。しかし、中小企業の導入はなかなか進んでこなかった。今回、『DCグッドスタート認定制度』を通して、中小企業への普及という課題に取り組めたことは、とても良かった。

 DCは人材マネジメントの側面を持っている。企業は人手不足に直面し、人材確保が喫緊の課題だ。従業員にとって働きやすく、長期にわたって働き続けたいと思わせる環境づくりが必要とされている。DCのような従業員にメリットのある制度を積極的に取り入れ、社内外に説明していくことが重要になるだろう。DCは、その企業の良さをアピールするツールに使えるだろう。

 昨今、物価が上昇する中で、インフレに負けない購買力をどう確保していくか、が重要な課題になっている。企業にとって賃金を上げ続けることは決して容易なことではない。しかし、支払った賃金を従業員が自ら殖やして有効活用できるよう、ツールや基礎的な知識を提供することで、それをサポートし補うことはできるのではないか。そうしたツールの一つとして、DCを提供することは、意味のあることだと思う。

◆DC導入、「採用面でさっそく効果」と喜びの声も

中浜氏 DC導入が人材マネジメントに与える影響については、昨年「DCグッドスタート認定」を受けた企業の経営者から、「さっそく採用面で成果があった」と喜びの声をいただいた。「採用面接の際に、退職金制度を聞かれて、それに対してきちんと答えることができた。また、DC制度がある大手企業の転職者から応募があり、初めて面接ができた」と話していた。

 

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