社会課題の分析ツール「SMDAMインパクトマップ」を開発・公開=インパクト投資に使用、日本に即したマップは初めて-三井住友DSアセットマネジメント
2026年07月30日 08時30分
(出所)三井住友DSアセットマネジメント(クリックで表示) 三井住友DSアセットマネジメントは、インパクト投資で使用する社会課題の分析ツール「SMDAMインパクトマップ」を開発した。日本の社会課題を包括的に分析したツールは初めて。
インパクト投資を始める投資家だけでなく、企業のディスクロージャーにも役立ててもらうため、一般に公開した。
マップでは、人工知能(AI)を活用して、日本の社会課題を29個の「インパクトテーマ」に分類し、59個の目標「ストラテジックゴール」を設定した。さらにボトムアップで「社会課題解決に至る経路」を詳細に整理している点が大きな特徴だ。
運用部バリューグループ企業価値型プロダクト シニアファンドマネジャーの芳村俊平氏と責任投資推進室室長の熊谷茜氏に話を聞いた。
◆日本の社会課題を捉えたインパクトマップ
-「SMDAMインパクトマップ」を開発した経緯は
芳村氏 私は、インパクトファンドを運用している。インパクト投資では、「投資先企業が生み出すインパクトを把握して定量化すること」を求められるのだが、日本では十分な分析ツールがないため、実行することが難しかった。
グローバルに見れば、GIIN(グローバル・インパクト投資ネットワーク)が開発した国際的な分析ツール「IRIS+(アイリスプラス)」がある。ただ、国連のSDGs(持続可能な開発目標)にひもづいているため、日本において重要度の高い、例えば「少子高齢化」や「インフラの老朽化」などの社会課題を十分にとらえきれていない。
インパクト投資が日本で普及していくためには、日本社会に即した社会課題の分析ツールが必要と考え、「SMDAMインパクトマップ」の開発に取りかかった。
◆AIで社会課題を整理、独自のコンテンツを追加
-「SMDAMインパクトマップ」の内容は
芳村氏 グローバルに使用されている「IRIS+」と整合性を持たせるため、設計思想を読み込み、カテゴリーを一致させた。
その上で、AI(人工知能)に日本の政府・省庁が出している白書等の膨大な文章を読み込ませて、日本の社会課題を29個の「インパクトテーマ」に整理し、53個の「ストラテジックゴール(目指すべき姿・目標)」を設定した。
ここまでの構成は「IRIS+」と合わせたが、これだけだと「インパクト投資の実務に落とし込みにくい」という課題を感じた。そこで、ストラテジックゴールの達成するために、どのような事業が、どのような経路で貢献するか-をまとめたコンテンツを追加した。
具体的には、AIに約4000社の有価証券報告書を読み込ませて、「ストラテジックゴール」ごとに、「アウトプット(企業の製品・サービスが生み出すもの)」、「アウトカム(製品・サービスを通じて生じる変化)」、「パス・トゥ・ゴール(社会課題解決に至る経路)」をまとめた。これは、「IRIS+」にはないオリジナルなものだ。
この結果、「SMDAMインパクトマップ」は、146ページの膨大な内容になった。
◆投資家と企業の双方に利用価値
-「SMDAMインパクトマップ」の利用方法は
(出所)三井住友DSアセットマネジメント(クリックで表示)芳村氏 投資家の立場でこのマップを見ると、それぞれのテーマに対して、どのような事業が貢献するか-を調べることができるので、投資先企業を探す手掛かりになるだろう。
一方、多くの企業経営者は、財務データだけでなく、自社の事業の社会的価値を投資家にアピールしたいと考えている。ただ、開示例が少ないために、どうやっていいか分からないと頭を悩ませている。このマップでは、テーマごとに「社会課題解決に至る経路」を整理しているので、企業の情報開示の参考にしてもらえればと考えている。
◆継続的にブラッシュアップ、企業との対話に活用
-今後の対応は
(左から、熊谷氏、芳村氏)熊谷氏 責任投資推進室では、企業との対話のなかで、サステナビリティに関連する対話を行っている。マテリアリティ(優先して取り組む課題)や統合報告書の開示について、企業とディスカッションすることも多いので、今後は、「SMDAMインパクトマップ」を活用することを考えている。
当社は、継続的に続けることを得意としている。継続的にブラッシュアップして、時代に即した内容に見直して、使い続けていきたい。
芳村氏 「SMDAMインパクトマップ」は、AIで作成した上で、責任投資推進室が人の目でチェックしている。主にAIを使用しているので、アップデートは比較的容易にできる。白書や有価証券報告書が更新されたタイミングで、メンテナンスを行っていきたい。
◆インパクトの創出に役立つ
―「SMDAMインパクトマップ」を公開した狙いは
芳村氏 「SMDAMインパクトマップ」を開示することで、インパクト投資のハードルが下がり、新しくインパクト投資を始める人の企業探しに役立てばと思う。
インパクト投資家は、「インパクトの創出に役立つこと」を求められている。その一つは、エンゲージメントを通じて企業のインパクト創出を後押しすることだが、これに加えて、「SMDAMインパクトマップ」を公表して、インパクト投資の普及と企業開示に貢献することで、インパクトの創出に役立ちたいと考えている。
投資家・金融機関、企業、自治体などの幅広い関係者が参加するインパクトコンソーシアムでも、「SMDAMインパクトマップ」を発表して、さまざまな意見をいただいた。
◆社会的課題は事業機会、投資で企業を応援
-インパクト投資の魅力は
芳村氏 生活している中で、社会的な課題を感じることがあると思う。みんなが困っているのであれば、それを解決する製品・サービスは、ニーズがあるだろう。また、一朝一夕に解決するものではないので、長期にわたって需要が見込めるだろう。
こうした製品・サービスを生み出す企業を見つけて、投資によって応援することで、社会的課題が解決に向かい、企業業績が伸び、株価も上昇するだろう。インパクトを生み出す企業に投資することで、社会的課題の解決だけでなく、経済的なリターンの獲得も期待される。
ただ、大きな社会的課題であれば、事業機会としても大きいので、いろいろな企業が参入してくるだろう。その中で、競争力があり、社会的課題の解決にしっかり貢献する企業を見分けることが、ファンドマネジャーの仕事だ。個人投資家にとって、インパクトファンドを通じて投資を行うことも、選択肢の一つになるだろう。



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