スタートラインに立つ学校法人の資産運用=ラッセル・インベストメントの山本社長兼CEOに聞く
2026年09月09日 08時00分

政府が、年金基金や学校法人等の資産運用・管理に関する行動原則「アセットオーナー・プリンシプル」を公表してから、約2年が経過した。文部科学省が7月に、大学の資産運用実態調査や、経済産業省と共同作成した運用ガイドブックを公表するなど、大学法人が資産運用に取り組むための環境整備が進んでいる。
ガイドブックでは「昨今のインフレ環境下では、預金・債券中心の運用のみでは実質的な資産価値が目減りする。株式等のリスク性資産への投資を含め、資産運用の促進・高度化が必要」と指摘された。
グローバルに資産運用、コンサルティング、執行・ソリューション・サービスを提供している米系資産運用会社ラッセル・インベストメントの山本圭志社長兼CEOは、「元本保全を重視してきた大学法人の資産管理が、変化していくことが期待される」と話している。主なポイントは以下の通り。
◆36法人が受け入れ表明
-アセットオーナー・プリンシプルの受け入れ状況は
山本社長 政府は2024年8月、年金基金や学校法人などの資産保有者の行動原則「アセットオーナー・プリンシプル」を公表した。国立大学法人や学校法人(私立大学)を合わせると、2026年7月1日現在で、36法人が受け入れを表明している
「アセットオーナー・プリンシプル」は、五つの原則で構成されている。<原則1>は、「受益者等の最善の利益を勘案して運用目的、運用目標および運用方針を定め、環境変化に応じて見直すこと」だ。例えば、「研究費の確保」や「インフレに負けない購買力の確保」など運用目的を定めると、そこから運用目標が明らかになり、アセットアロケーションなどの運用方針が見えてくる。
◆文科省が「大学の資産運用実態把握等調査」
-大学の運用状況は
山本社長 文部科学省の調査は7月に「大学の資産運用実態把握等調査」を公表した。大学の資産運用の全体像を幅広く集計した調査は初めてだ。
それによると、国立大学(85法人)の運用額は比較的小規模で、運用内容も国債や社債が中心だ。私立大学も、全体としては国立大学と同じ傾向が見られたものの、500億円以上の運用資産を持つ学校法人の一部では、上場株式やオルタナティブを使ってポートフォリオ運用を実施していた。
◆3大学を国際卓越研究大学に選定
-大学ファンドの状況は
山本社長 政府は2022年に、10兆円規模の大学ファンドを創設した。世界と肩を並べて競争しうる「国際卓越研究大学」を選定し、長期的・安定的な支援を最長25年実施する。これまでに、「国際卓越研究大学」には、東北大学、東京科学大学、京都大学が選定されており、今後の選定状況が注目される。こうした大学では、提供される資金で基金を作り、資産運用に取り組むと見られている。
◆運用目的を明確にし、目標を立てる
-大学法人の今後の取り組みは
山本社長 文科省の調査によると、国立大学では、「運用目標が設定されていない」と回答した大学法人が約半数に及んだ。具体的に目的や目標を明確にすることで、将来必要になる資金額が分かり、そのための資産運用方法を見極めることができる。まずは、こうしたところからスタートすることが望ましいだろう。
また「今すぐ使うお金」と「将来必要になるお金」を整理することも大切だろう。将来の資金については、例えば、プライベート資産のように流動性の低いアセットで運用することも可能になる。大学法人は、将来必要となる資金の予見性が高いからである。
ガバナンスについては、受益者に説明責任を果たすことと、運用状況を検証する能力の育成が必要となるだろう。少人数でも、しっかりと運用するために、大きな方針は自分たちで設計し、執行は外部機関を利用するなど、メリハリのある運用も大切になるだろう。
◆「運用」「執行」「コンサルティング」を合わせ持つ運用会社
-ラッセル・インベストメントの取り組みは
山本社長 米国で1936年に創業したラッセル・インベストメントは、世界中の運用会社と幅広い運用戦略を継続的に調査しその運用力をレーティングする「運用機関調査」を、世界に先駆けて手がけてきた。その調査の幅広さと深さは、現在も当社の事業の核となっている。私たちは、こうした知見を生かし、機関投資家の運用目的に寄り添いながら、運用戦略や運用機関の選定をともに考え、実現を支援している。
当社は「運用」「執行」「コンサルティング」の三つの機能を組み合わせ、お客さまの課題に応じたソリューションをともに構築するユニークな資産運用会社だ。コンサルティングを通じてお客さまの運用目的や課題を整理し、その上で、運用機関調査(レーティング)を活用して、お客さまが単独ではアクセスしにくい世界の優れた運用機関や専門性の高い運用戦略も含めて組み合わせた、マルチ・マネージャー型の運用ソリューションも展開している。さらに、直接投資およびポートフォリオの一元的な管理・運営や為替管理などの執行機能を通じて、運用戦略を実際のポートフォリオとして着実に実行できるよう支えている。
企業年金では、過去40年間をかけて運用自由化が行われ、厳しい運用環境の下で運用収益の向上に取り組んできた。その成果もあり、積立不足がほぼ解消された現在は、ガバナンス強化や持続的な運営体制づくりが重要なテーマとなっている。この間、ラッセル・インベストメントは、公的年金や企業年金基金の資産運用を支援してきた。こうした経験や知見を生かし、大学法人それぞれの目的や課題に寄り添いながら、理論面と実務面の両方で、資産運用を通じた財務基盤の強化と、日本の大学の持続的な発展に貢献していきたいと考えている。



![オペレーションF[フォース]](https://financial.jiji.com/long_investment/img/opf_banner.jpg)