投資家はまだ3割、格差拡大を懸念=レオス・キャピタルワークス前社長でHEVN STAGE会長の藤野英人氏に聞く
2026年08月28日 10時00分

日本最大級の日本株アクティブファンド「ひふみ投信」を運用するレオス・キャピタルワークスの創業者で前社長の藤野英人氏は、時事通信社の取材に応じ、国民の資産運用の現状について、「証券口座を持つ人の割合は3割程度にとどまっている。『投資をしている人』と『投資をしていない人』の格差が開いてしまうことを危惧している」と述べた。また、起業家育成の重要性についても指摘した。
藤野氏は、アニメーション制作会社「HEVN STAGE」を3月に創設し、会長に就任した。10月にも独自のキャラクターを使った新作アニメーション作品を公表する見通しだ。
また、会員制オンラインコミュニティ「FLOWフッシー」を主宰し、コンテンツの発信やリアルイベントでの交流を通じて、「心と懐の両方を育む場」を提供している。主な発言は以下の通り。
◆「長期・分散・積立」を推進
-レオスを振り返って
藤野氏 2003年にレオス・キャピタルワークスを創業し、26年6月に社長を退任した。その間、会社を作り株式の上場を果たした点では、広い意味で成功と言えるだろう。「まだまだやれることはあったかな」という思いはあるが、運用残高1兆8000億円を集め、お客さまに直接、投資信託を販売する「直販」というスタイルを普及させるなど、他の人が成しえなかったことができたことは評価できると思う。
レオス・キャピタルワークスでは、「長期・分散・積立」を掲げて、積み立てを中心にコツコツ投資するスタイルを推進してきた。現在では、国が推進するスローガンになっており、一定の役割を果たすことができた。
◆投資の普及は道半ば、格差拡大を懸念
藤野氏 ただ、株式や投資信託を購入できる口座を持っている人は、国民の3割程度にとどまっている。国民の過半数が証券口座を持って、投資をしている状況でないと、「貯蓄から投資へ」が成功したとは言えないだろう。
レオス・キャピタルワークスのお客さまに対しては、日経平均株価が7000~8000円台から6万~7万円台に上昇する中でリターンをお届けすることができたが、国民全体で見るとまだ道半ばだ。
「『日経平均10万円時代』に備えろ」(日経ビジネス人文庫)を7月に出版した。まだ証券口座を持っていない人に「危ないな」と感じてもらいたい。「投資をしている人」と「投資をしていない人」の格差が開いてしまうことを懸念している。
日本経済は、デフレからインフレ経済になりつつある。デフレ時代は、現金を持っていると(物価が下落する中で)自動的に現金の価値が上昇した。だから、今も「何もしない」という行動バイアスが強い。
しかし、インフレ時代は、何かに挑戦しないと(物価が上昇する中で)現金の価値が低下していく。「リスクを取ること」が「攻め」ではなく「守り」になる。自分のポートフォリオの一部に株式や投資信託を組み入れないと、相対的に価値が目減りしてしまう。
◆コミュニティ「FLOWフッシー」を主宰
藤野氏 日本には3割の壁がある。パスポートの普及率が3割に届いていない。また生成AIを日常的に活用している人も3割に達してない。証券口座を持っている人も3割程度だ。これらは象徴的な事象であり、共通する問題があるのではないか。
そうした問題意識から、私は昨年11月、会員制オンラインコミュニティ「FLOWフッシー」を主宰した。パスポートを持ち、生成AIを活用し、証券口座を開設している人、すなわち「知的にチャレンジする人」や「アクティブに世の中と向き合う人」を増やしたいと考えた。「大人のおけいこ場」を掲げており、投資に限らず、世の中に関するあらゆることを学ぶ場を提供している。現在は、1000人以上の人が参加している。
◆金融経済教育では、起業家の育成も重要
-金融経済教育の課題は
藤野氏 金融経済教育では、投資家とともに、リスクを取って挑戦する起業家を育成することも重要だ。
日本では、仕事を「会社や役所に所属すること」と考える傾向がある。労働者は労働時間を会社に提供して、その対価を得る。こうした考え方からは、起業家は生まれないだろう
仕事とは「世の中の需要に対して財やサービスを提供し、そこからフィー(料金)をいただくこと」だ。金融経済教育を通じて、こうした仕事観やキャッシュフローを生み出す仕組みを頭の中に入れることで、起業家の素地が育まれるだろう。
◆アニメーション制作会社「HEVN STAGE」を創設
-現在の取り組みは
藤野氏 アニメーション制作会社「HEVN STAGE」を3月に設立した。アニメーターやクリエイターなど社員約25人のスタートアップ企業だ。私は、会長として参画する。
「なぜ、投資家ではなく、事業会社の経営者になるのか」と不思議に思われるかもしれない。私はこれまでに、ミネラルウオーター宅配事業のウォーターダイレクト(現プレミアムウォーターホールディングス)や、運用会社レオス・キャピタルワークスを創業し上場させてきた。私は、投資家であると同時に実業家だ。
日本のアニメーションは、海外にもファンが多く、世界的に知名度も高い。優秀なメンバーとチームを組むことで、「アニメ王」になる可能性を持った分野だ。
「HEVN STAGE」は、マンガ誌などで人気の作品をアニメ化するだけでなく、自ら生み出したキャラクターを使った作品を制作する。10月にも第1号の作品を発表する予定だ。内容はまだ話せないが、オリジナルのキャラクターを使った作品になる。作品とともに「HEVN STAGE」を売り出していきたい。
◆スタートアップ育成、クロスオーバー投資も
-今後の活動は
藤野氏 スタートアップ企業の育成や、上場株と未上場株の境を越えて投資するクロスオーバー投資にも取り組みたいと考えており、準備を進めている。
「HEVN STAGE」を育てることで、10年後に「アニメ王の藤野さん」と言われるようになれたらうれしい。



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