中小型株を対象にインパクトファンド=新興企業を育成、社会課題の解決を促す-かんぽ生命とアセットマネジメントOne
2026年08月27日 09時00分
(左から岩本氏、小林氏) アセットマネジメントOneは昨年12月、国内上場企業の中小型株を対象とした私募投信「AMOne国内中小型株式インパクト戦略ファンド」の運用を開始した。インパクト投資とは、社会課題の解決と投資リターンの向上の両立を目指す運用戦略だ。このファンドでは、アセットオーナーのかんぽ生命 が定義した「社会・環境課題」に沿って、課題解決に役立つ事業を展開して持続的な成長が期待される30~50社に投資している。
かんぽ生命 運用企画部 責任投資推進室 室長の小林巧氏と、アセットマネジメントOne 運用本部 株式運用部 国内株式担当ファンドマネジャーの岩本誠一郎氏に、インパクト投資に取り組む狙いやその意義について聞いた。
◆保険商品に加えて、投融資を通じた貢献を目指す
-かんぽ生命のインパクト投資の取り組みは
小林氏 生命保険会社の保険料の運用は、長期間にわたる。また、日本の津々浦々にお住まいのお客さまからお預かりした保険料が原資になっている。このため、保険商品の付加価値だけでなく、投融資を通じてお客さまが保険金を受け取られる際に豊かな社会が築かれているように、サステナブル投資に取り組んでいる。
具体的には、アセットクラスの特性に応じてESG(環境・社会・ガバナンス)に配慮した投融資を行っており、当社が直接、投融資している大企業を中心に、ESGの取り組みを促すエンゲージメント(対話)を行っている。ただ、環境や社会に悪影響を及ぼすものを除外するネガティブスクリーニングやESG要素を投資判断に組み込むESGインテグレーションが中心になっていて、投資と社会課題解決のつながりを実感しにくいことが課題だった。
そうした中でインパクト投資に出会い、2022年に運用部門が一体となって、インパクトの創出を企図した社内認証制度「インパクト“K”プロジェクト」を立ち上げた。「Well-being向上」「地域と社会の発展」「環境保護への貢献」をインパクトテーマとして設定している。
具体的には、投融資を行うチームがインパクト投資の案件を選別し、申請書を企画部門に提出し、社内での議論を経て、認証を行っている。「インパクト“K”認証」を受けた投資は、2026年3月末で504億円に達した。中期経営計画では、29年3月末までに1000億円に積み上げることを目指している。
◆IPO後の上場企業を支援
-「AMOne国内中小型株式インパクト戦略ファンド」の設定の経緯は
小林氏 当社はインパクト投資で、信頼できる外部の運用会社を活用している。インパクト投資は、社会課題に対する理解やリサーチ力が必要になるためだ。
インパクト投資をスタートした当初は、ベンチャーキャピタルの「プライベート・エクイティ(未上場株式)ファンド」を活用した。社会課題を解決したいという強い思いで起業した創業者が多く、かつ単一事業なので、社会課題解決を自社の成長に結び付けて、ビジネスモデルを構築している会社が多い。
ただ、こうした未上場企業が成長して上場したときに、時価総額が小さいなどの理由で、株式市場の主要な資金提供者である機関投資家からの投資やエンゲージメントを通じた伴走を受けにくいケースがあることなどを知った。
このため、上場株式市場においても、社会課題の解決に貢献する企業の受け皿になるマーケットの育成に貢献したいと考え、中小型株式に高い知見を持つアセットマネジメントOneとインパクト投資に取り組んだ。
◆攻めの対話
-アセットマネジメントOneの取り組みは
岩本氏 アセットマネジメントOneはコーポレート・メッセージとして「投資の力で未来をはぐくむ」を掲げており、事業活動を通じてサステナブルで豊かな社会の実現を目指している。投資判断の際にESGを組み込む「ESGのインテグレーション」を行っているほか、2022年からは、インパクト投資に取り組んでいる。
私の運用チームは、ほかの運用会社と差別化を図り、より良いリターンを上げるために、対話を活用して企業の変革を促す「攻めの対話」に取り組んできた。例えば 数億円だった営業利益を、10億円、100億円と伸ばしていくにはどうしたら良いか-といった観点で対話を行う中で、社会課題を解決する市場への参入についてもアドバイスしてきた。
対話を通して、企業が自ら経営理念を明確にし、社会課題を解決して、大きく成長する姿を見てきた。こうした投資スタイルは、インパクト投資に合致するものだと考えている。
アセットマネジメントOneは、エンゲージメントを含むスチュワードシップ活動に注力しており、「エンゲージメント強化型パッシブファンド」の受託や、「オールジャパン・カーボンニュートラル戦略」など、独自の対話力を活用した投資商品を提供している。
◆インパクトを業績につなげる、マーケットを広げる
-ファンドの運用状況は
(クリックで表示)岩本氏 投資先企業の中には、インパクト投資によって得られた付加価値を計測して、私たちに開示するだけでなく、ほかのお客さまとの価格交渉のベースとして横展開することで、収益向上に役立てている好事例が見られた。
また、対話を進める中で、その企業の持つ革新的なサービスを、より大きな市場に展開することで成果を上げる企業も出てきている。
このほか環境関連の企業の中には、照明のLED化によってCO2排出量を削減するだけでなく、よりきめ細かな調光により人間の「Well-Being向上」させるサービスに発展させることで、新たな市場を開拓したところもある。
地方にも高い技術を持った企業は多く、地域を活性化したいという強い思いを持っている。全国を回って、「地域と社会の発展」を実現することで成長している企業を見出している。
◆社会課題解決を軸に、成長戦略を描く
-インパクト投資の見通しと意義は
小林氏 日本のインパクト投資は、黎明期を少し抜け出した時期に来ている。今後については、インパクト投資が一般化することで担い手が増える一方、社会課題解決へのコミットメントが薄れていくことはないか-と危惧している。投資家に対する認知度を高めつつ、社会課題の解決とリターンの向上を両立させる、健全な発展を遂げてほしいと思っている。
インパクト投資を、成長戦略の一つとして、社会課題の解決を軸に企業の成長を描いていくことは、日本経済・社会にとって意義のあることだ。企業の既存の事業の延長線上ではなく、次の成長戦略の種として、新たなビジネスモデルやイノベーションを起こしていく。そうした強い日本経済を築き上げていく上で、インパクト投資の概念は役立つと思う。
◆「日本経済の成長」と「健全な個人の資産形成」の実現めざす
岩本氏 インパクト投資によって「日本経済の成長」と「健全な個人の資産形成」を実現していくことが大切だ。投資家にインパクト投資を理解してもらい、その資金を成長企業に向かわせることで、企業を育成し、日本経済の成長につなげることができればと思う。
証券会社の主催するセミナーなどで、インパクト投資の普及に努めている。その際、分かりやすい言葉で、インパクト投資の意義や成果を伝えることで、草の根的にファンを増やすことを目指している。
多くの新興企業と面談しているが、上場がゴールではなく、そこからが勝負だ。IPO(株式公開)後の企業に伴走して成長を促しながら、社会課題の解決と投資リターンの向上を実現させていきたい。



![オペレーションF[フォース]](https://financial.jiji.com/long_investment/img/opf_banner.jpg)