企業年金の資産運用、「国内債券へ回帰」が始まる=今後の配分で、純増比率が過去最大に-JPモルガンAM調査
2026年09月08日 08時00分

JPモルガン・アセット・マネジメントがまとめた「第18回企業年金運用動向調査」によると、運用計画である政策アセットミックスの「国内債券」の比率について、「増加させる」から「減少させる」を差し引いた純増率は8.6%となり、2008年の調査開始以来、最大になった。調査は4~6月に、82の確定給付企業年金(DB)等を調査した。
国内債券の配分比率は、2010年に38.2%と政策アセットミックスの中で最も大きかったが、昨年は14.3%に低下していた。一方で、日本の長期金利は上昇基調をたどっており、9月1日に約30年ぶりに3%台に上昇した。
グローバル運用商品部 マルチアセット投資戦略室長の國京彬氏は、調査結果について、「国内金利の上昇を受けて、企業年金基金が国内債券市場に戦略的に回帰しつつあることが明らかになった」と分析している。主なやりとりは以下の通り。
◆長期目線で運用計画を点検
-企業年金の資金運用とは
國京室長 DBは、企業の財務部や年金基金の担当者が予定利率にもとづいて掛け金を運用し、会社として将来の給付額を保証する私的年金制度だ。DB基金では、3年に1度程度の頻度で予定利率の達成可能性を点検し、運用計画である「政策アセットミックス」の資産配分比率を見直している。
ちなみに、最近増加している確定拠出年金(DC)は、企業が拠出した掛け金を従業員一人ひとりが投資信託等で運用する仕組みになっている。
◆「一般勘定」が増加、「外国債券」が減少
-政策アセットミックスの概要は
國京室長 今回の調査では、生命保険会社が提供する最低利回り保証の金融商品「一般勘定」の配分比率が11.9%(前年調査は11.3%)に上昇した。金利上昇を受けて、組み入れを増やす動きが見られる。一方で「外国債券」は29.5%(同30.0%)に低下した。為替のヘッジコストが高止まりしており、運用環境が厳しいためだ。
「国内債券」は14.3%で横ばいだったが、一般勘定を活用しながら、二段階シフトで国内債券の配分を増やしていくものと見られる。このほか、プライベート・エクイティ(PE)などの「オルタナティブ」は、24.6%(同24.5%)で、引き続き増加している。
◆純増率が調査開始以来最大に
(出所)JPモルガン・アセット・マネジメント(クリックで表示)
(出所)JPモルガン・アセット・マネジメント(クリックで表示)-国内債券の今後の動向は
國京室長 調査の中で、政策アセットミックスに占める国内債券の配分を「増加させる」と回答した基金は9.8%、「減少させる」と回答した基金は「1.2%」だった。差し引きの純増率は8.6%で、2008年の調査開始以来、最大になった。量的・質的緩和によって日本の長期金利は低迷していたが、日銀の政策転換により日本の長期金利は3%台に上昇しており、国内債券の利回りは魅力的な水準になっている。
ただ、ここまでの金利上昇ペースが急だったことや、さらなる利上げが見込まれることから、中期債を償還まで保有する「持ち切り型」や、運用に制約を設けない「アンコンストレインド型」、「インフレ連動型」など、今後の金利上昇やインフレに対応した商品が選択されている。
◆パッシブ化が進む
-国内株式は
國京室長 政策アセットミックスに占める国内株式の割合は3.9%と低水準に留まっている。運用目標である予定利率の平均が2.28%なので、年率6~8%の高いリターンが期待される一方で、ボラティリティも大きい国内株式に対する関心は低い。ESG投資や対話重視等の解約が進む一方で、パッシブ型の採用が進んでいる。
◆長期目線で増加傾向
-オルタナティブは
國京室長 オルタナティブには、PEやインフラ投資などさまざまな商品がある。プライベート・デッドについては、ファンダメンタルズの悪化や償還請求の増加などを伝える報道が増えたが、企業年金は長期目線で政策アセットミックスの配分を増やしている。ただ、今後の方向性については、償還を迎えたプライベート・デッドを再投資しないなど、慎重な姿勢も見られた。
◆インフレに対応、引き上げに転じる
-予定利率は
國京室長 企業年金の運用目標である予定利率は、「引き上げを実施した」と回答した基金が7.9%、「引き上げを検討中」が5.3%に達した。予定利率は、リーマン・ショック以降、一貫して低下していたが、今回の調査では、平均値が2.28%に上昇した。
引き上げの背景には、従業員の資産形成や福利厚生に資する運用を行うため、インフレ率を超える運用をしたいと考える基金が増加していることがある。国の政策目標である3%のインフレが実現すると、仮に2%台の予定利率を達成しても、資産の実質的な購買力が目減りしてしまうためだ。



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