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デキュムレーションの啓発活動を展開=「資産を運用しながら取り崩す」、リタイアメント層に新たな文化創造-野村アセットマネジメント

2026年07月23日 07時00分

中村浩司部長

 野村アセットマネジメントは、リタイアメント層を対象に、デキュムレーションの啓発活動を展開している。「資産を運用しながら取り崩し、有効に使って豊かな生活を送る」ことが日常化した、新たな文化創造を目指す。

    具体的には、セミナーやオンライン・オフラインの媒体を通じて、現役時代の「長期・分散・積立」の投資スタイルを、退職後は「リスク管理型ポートフォリオ」に切り替え、計画的に取り崩すことを提案していく。

 リタイアメントソリューション部の中村浩司部長と、金融リテラシーソリューション部の酒道亜希部長に、リタイアメント層の抱えている課題や両部の取り組みを聞いた。

◆お客さま起点の商品提案をサポート

-リタイアメントソリューション部を新設した背景は

中村部長 当社は2025年4月にリタイアメントソリューション部を設立し、デキュムレーションの啓発活動をスタートした。その背景には、主に四つの理由がある。

 一つ目は、日米の家計金融資産の差に対する反省だ。米国は、年金などを通じて投資信託への投資が進み、家計金融資産が大きく伸びた。一方、日本は現預金が中心だったことで、金融資産の伸びや緩やかだった。

 二つ目は、資産運用立国の実現だ。国民の資産を増やし、日本経済を発展させる「成長と分配の好循環」の中で、当社は、良質な運用商品を提供することに加えて、お客さまにふさわしい商品を提案する仕組み作りについて販売会社のお手伝いをしたいと考えた。お客さまを起点とした、お客さまに寄り添った商品を提案したい。

◆リタイアメント層に偏重する資産

中村部長 三つ目は、日本の金融資産がリタイアメント層に偏重していることだ。50歳以上で8割超を保有している。資産運用立国を実現するには、高齢層の金融資産を市場に取り込むことが欠かせない。今後、団塊ジュニア世代が退職を迎える。40代後半から60代の世代に、投資を日常化していくことが重要になっている。

 四つ目は、高齢者が資産をうまく利用できていないことだ。世帯当たりの金融資産保有額を見ると、60代前半でピークを迎え、その後減少に転じるが、そのペースは緩やかだ。一方、NISAの利用率は、年齢に上がるにつれて低下傾向だ。高齢者が、資産運用しながら消費を増やせば、投資と消費の両方が拡大し、資産運用立国の実現に貢献できるだろう。

◆退職で大きく変化する家計収支

-高齢者の現状は

中村部長 野村アセットマネジメント資産運用研究所は昨年10月、「Investor Insights 2025(リタイアメント)-リタイアメントに関する意識調査-」を実施し、50歳以上の約1万1000人の回答を集計した。調査結果で注目している点が四つある。

 一つ目は、退職前後の収入・支出の変化だ。50~59歳の就労者に「現役時代の収入を100%として、退職後の想定収入と支出」を尋ねたところ、どちらも約6割になると予想した。一方、60歳以上の非就労者に実施の収入と支出を尋ねると、収入は3~4割に大きく低下した。セカンドライフになって収入が予想以上に大きく減ってしまうため、慎重になって、資産を取り崩して使いにくいという心理が働いている可能性がある。

 二つ目は、「生命寿命」と「資産寿命」の予想の比較だ。それによると、50代の平均値では「生命寿命よりも資産寿命が短い」と予想している。「自分の資産の状況が見えておらず、健康な時にお金を使えていない」ことが懸念される。また、投資家と非投資家を比較すると、投資家の方が「生命寿命」と「資産寿命」のギャップが小さかった。お金への向き合い方を見直すことも重要だ。

 三つ目は、資産承継について「考えていない」とする回答が、多いことだ。「自分で使う」ことを選好する人が、リタイアメント層で約4割を占めた。

 四つ目は、取り崩しの方針だが、「計画的に考えている人」はごくわずかだ。必要な時に利用する「都度引き出し」や「まだ具体的に考えていない」という回答が多い。

◆まずは資産の棚卸しから

-リタイアメントソリューション部の活動方針は

中村部長 現役時代は勤労収入があり、その中でやり繰りしていた。ところが、退職後は、勤労収入や年金収入では生活費をまかなうことができず、解決策が見当たらない状況に陥っている人が多いように思う。

 当部では、なるべく早い段階から退職を控えたお客さまにアプローチして、「現在の資産状況の棚卸しから始めれば、怖いことはありません」と話すことから発信している。

 リタイアメントソリューション部のミッションは、「リタイアメント層に『資産を活用しながら取り崩し、有効に使って豊かな生活を送る(デキュムレーション)』という文化創造を起こす」ことだ。

 さらに「ニーズに応じたソリューションを開発し、販売会社を通じて広く提供していくことで、資産運用の普及・拡大に貢献する」ことを目指している。当部では、リタイアメント層のお客さまと向き合うコンサルティング手法などを、勉強会やセミナーを通じて伝えている。

◆共感を生むセミナー、お客さまとの間をつなぐ

中村部長 金融機関のアドバイザーは、年齢的に若い人が多い。一方で、リタイアメント層のお客さまは「自分と同じ目線でお金のことを相談したい」という気持ちを持っており、両者の間に隔たりがある。当部のメンバーは、私以外、全員60歳以上で定年を経験し、生活の見直しを経験しているので、この隔たりを埋める活動を進めていく。

 具体的には、お客さま向けセミナーは、同窓会の雰囲気で行い、共感を持ってもらう。その上で、資産形成期の「長期・分散・積立」型の投資スタイルを「リスク管理型のポートフォリオ」に切り替えて、計画的にお金を取り崩していくことを提案している。同時に、その計画を定期的に見直すことを推奨している。

 取り崩しの方法も、分配型の投資信託を利用する方法もあるし、金融機関によっては投資信託の定率解約や定額解約を活用できることを伝えている。

 最終的に「リタイアメント層のお客さまの状況は個人個人でまったく違うので、一つの解決策があるわけではない」ことをお伝えして、その後の相談につなげている。

◆シミュレーションで「見える化」

-金融リテラシーソリューション部の活動は

酒道部長 当部は、幅広い世代の金融教育に貢献することをミッションにしている。その中で、リタイアメントソリューション部の文化創造活動を推進するため、オンラインとオフラインで情報発信を行っている。

 まずオンラインだが、退職前後世代に必要な情報やお金との向き合い方をホームページのスペシャルサイト「わたしの自由時間」で発信している。9月末をめどに、サイトをリニューアルする計画だ。

 この中で、特に力をいれているのが、シミュレーション機能だ。資産運用を山登りに例えると、頂上を目指す「資産形成期」のシミュレーションは数多く存在するが、貯めたお金を使って人生を楽しむためのシミュレーションは少ない。年齢、収入、支出、資産などを入力するたけで、生涯の収支を把握する「資産寿命のチャート」が表示される。心理的なハードルを下げるため、入力項目はできるだけ簡素にした。

 このシミュレーションを使うと、例えば「人生を楽しむためにいくら使えるか」を算出したり、「資産運用するとどの程度の増額になるか」を試算したりできる。「分からないから使えない」という人が多いことから、生涯に使えるお金を「見える化」することで、安心して自分のためにお金を使っていただくことを目指している。

◆他業種とタイアップ

酒道部長 オフラインの発信では昨年、冊子「60代からのお金のコーディネート術」と「わたしらしいお金のコーディネート術」を作成した。退職前後に知っておきたいことや、リタイア世代が気を付けなければいけない運用のポイントを中心に情報発信した。セミナーや販売会社を通じて配布した。

 さらに、より広いお客さまに情報発信するため、シニアの会員数が多い出版通信業や旅客業の企業とタイアップしたセミナーを開催した。来場したお客さまからは「今まで聞いたことのない話を聞けた」などのコメントをいただいた。

 

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