「インパクト企業の対話・情報開示」でガイダンス=好循環で持続的成長を実現-GSG国内諮問委員会
2024年05月21日 08時30分
GSG国内諮問委員会は、「インパクト企業の資本市場における情報開示及び対話のためのガイダンス第1版」を発表した。経営戦略やKPI(重要業績評価指標)を含め、投資家との対話や情報開示の在り方を総合的にまとめた。
「社会課題の解決(インパクト)」と「経済収益の創出」を資本市場の高評価に結び付け、円滑な資金調達を可能にすることで、さらなるインパクトや経済収益を生み出す好循環(ポジティブ・フィードバック・ループ)を実現し、持続的な成長をめざす。
◆GSGとは
GSGは、インパクト投資を推進するグローバルなネットワーク組織で、2013年に当時の先進国首脳会議(G8)の議長国であった英国・キャメロン首相の呼びかけで創出された。
◆インパクト企業の現状
インパクト企業とは、事業成長を伴いながら、ポジティブで測定可能な社会的・環境的インパクトの創出を意図する企業だ。脱炭素、災害への対応、少子高齢化など、社会・環境課題の解決に向けて、インパクト創出と同時に事業成長を遂げる企業の支援・育成が喫緊の課題になっている。
こうした中、国内のインパクト企業は増加しており、2022年10月に発足した一般社団法人インパクトスタートアップ協会の会員数は、発足当初の23社から、2023年8月には83社に拡大している。
◆インパクト企業の課題
ただ、こうした企業が株式を上場し、資本市場を活用して持続的成長をめざすには、さまざまな課題が存在する。
一般社団法人社会改革推進財団インパクト・エコノミー・ラボの菅野文美所長は、「インパクトの評価に関わる視点やツールが未整備で、建設的な対話に寄与する情報開示の在り方などが発展途上の段階にある。また、インパクト企業の経営マネジメントにインパクト創出の観点を組み込むことについて共通概念が存在していない」と指摘する。
◆ポジティブ・フィードバック・ループ
今回のガイダンスは、情報開示等を通じてインパクト企業と投資家が共通理解を醸成し、建設的な対話を促すために作成された。未上場の段階から、上場を経て、上場後もインパクトを創出しながら、持続的な企業価値向上をめざす環境を整備する。そのポイントとなるのが「ポジティブ・フィードバック・ループ」だ。
インパクト・エコノミー・ラボの田原純香インパクト・カタリストは、このループについて「インパクト企業がインパクトと経済収益を創出しながら、企業価値の向上を実現していくイメージ図だ」と指摘。「資本市場からの評価を高めながら企業価値向上を実践し、それが次の『インパクトの創出』や『経済収益の創出』につながることで、持続的な成長を可能にする好循環サイクルが回っていく」と説明した。
◆四つのステップで好循環を加速
ガイダンスでは、この「ポジティブ・フィードバック・ループ」を加速させるため、四つのステップとして、①戦略策定 ②事業計画とKPI(重要業績評価指標)の設定 ③経営プロセスへの組み込み ④情報開示/対話-に分けて、企業の対応を詳細にまとめている。
◆資本市場にフィードバックし評価高める-白石座長
GSG国内諮問委員会の白石智哉座長は、同ガイダンスを振り返り、「30人近い産学官の関係者が集まり、インパクト企業をテーマに議論した意義は大きい」と評価した。その上で「インパクト企業が活躍することで、社会課題が解決され、投資家に報いることができる。さらに、資本市場にフィードバックし評価を高めることで、次の活躍に向けて経営資源を調達する好循環を生んでいくことができる」と指摘した。
同委員会は、説明会等を開催してガイダンスの普及を図るとともに、ガイダンスを参照した取り組みを推進していく。また、取り組み事例や活用フィードバックが十分に積み上がった段階で、ガイダンスの見直しを行う予定だ。