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「ひふみマイクロスコープpro」を19日設定=国内小型株の「見えない価値」を見つける-レオス・キャピタルワークス

2024年03月11日 09時00分

(出所)レオス・キャピタルワークス、左・藤野氏、右・渡邉氏(出所)レオス・キャピタルワークス、左・藤野氏、右・渡邉氏

 投資信託「ひふみ」シリーズを運用するレオス・キャピタルワークス(本社東京)は、国内株式ファンド「ひふみマイクロスコープpro」を19日、設定する。

 小型株を投資対象としており、「見えない価値」を見つけるアクティブ運用の特長を、顕微鏡(マイクロスコープ)になぞらえて命名した。投資に更なるワクワクを求める人を想定した「ひふみproシリーズ」の第1弾となる。

 藤野英人会長兼社長CIO(最高投資責任者)と渡邉庄太ファンドマネジャーがこのほど記者会見し、設定の狙いや特徴などを話した。主なポイントは以下の通り。

◆ファイナンシャル・インクルージョン

(出所)レオス・キャピタルワークス、藤野氏(出所)レオス・キャピタルワークス、藤野氏


-レオス・キャピタルの戦略は。

藤野氏 当社のミッションは「ファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)」を実現することだ。日本人の大多数が「資産形成に投資は必要ない」と考えているが、このままでは「投資をしている人」と「投資をしていない人」の金融資産が二極化し、金融格差が広がるだろう。これを防ぐには「金融サービスの恩恵を全ての人が享受できる世界」の実現が不可欠だ。

 当社は「ファイナンシャル・インクルージョン」にアプローチする手法として、三つの多様化を推進している。具体的には、①性別・年齢・地域・資産状況に関係なく金融の魅力をあらゆる人に伝えることで「お客さまの多様化」を進める ②大企業からベンチャー企業まで挑戦するあらゆる人をお金で応援することで「投資先の多様化」を進める ③投資信託以外の手法へ展開することで「投資手法の多様化」を進める-だ。

◆「basic」と「pro」

(出所)レオス・キャピタルワークス(出所)レオス・キャピタルワークス


-新ファンドは。

藤野氏 新ファンドの「ひふみマイクロスコープpro」は、グロース(成長)市場や、中堅中小企業に特化したファンドだ。ずっと作りたいと考え、タイミングを狙っていた。ファンドマネジャーの渡邉は、当社に入社して以来、約17年間にわたって1000社以上の新規上場(IPO)企業を調査・面談してきたIPOの職人だ。

 企業を微細に調べて「見えない価値」を見つけ出すアクティブ運用の特色を、肉眼では見えない微小なものを観察・分析する顕微鏡(マイクロスコープ)になぞらえて、ファンド名に入れた。

 このファンドは、新たに設定する「proシリーズ」の第1弾となる。

 既存の「ひふみ」シリーズのファンドは「basic」であり、投資が初めての方から経験者まで日本中のすべての人にご活用いただくことをめざしている。

 一方「pro」シリーズは、投資に更なるワクワクを求める方や次の一本をお考えの方を、お客さまに想定している。今後も、国内外のさまざまなアセットクラスで、proシリーズのファンドを設定していきたい。

◆「死の谷」をファンド資金で埋める

-新ファンドの社会的意義は。

藤野氏 政府は、日本経済の活性化に向けて、スタートアップ企業の育成を打ち出している。しかし、IPO後の企業に投資する投資家が不足しているため、成長資金を十分に確保できず、IPO後に成長が伸び悩む「死の谷」に陥る企業が多くみられる。

 当社は「ひふみマイクロスコープpro」を通じて、成長の期待できる企業を選別して資金供給したいと考えている。「死の谷」をファンドの資金で埋めることで、日本の新興企業の育成に貢献し、世の中の役に立つことができる。同時に、企業の成長により、投資家の皆さんには、リターンをお返しすることができる。

◆「これから勝負の新興企業」「忘れられた中小企業」

(出所)レオス・キャピタルワークス 渡邉氏(出所)レオス・キャピタルワークス 渡邉氏


-運用の考え方は。

渡邉氏 小型株市場には二つのタイプが存在する。当ファンドはそれぞれに合わせた目線で投資する。

一つ目は「これから勝負の新興企業」だ。IPOを経て上場マーケットにデビューし、元気良くどんどん成長することが期待される。当ファンドは、そうした企業を長期目線で詳しく分析し、IPO後に訪れる「死の谷」を乗り越える成長を後押しする。

 二つ目は「忘れられた中小企業」だ。上場から時間が経ち、ポテンシャル(潜在成長力)はあるが注目度が低かったり、安定成長フェーズに入ったりしている企業だ。当ファンドは、市場参加者が見落としている「新たな変化」をとらえて、さらなる成長を後押ししたい。

◆「ダイヤの原石」、足で稼いだ情報で企業を発掘

-ファンドの特長は。

渡邉氏 小型企業は、機動力があり小回りが利くなど、小さいことがむしろメリットになりうる。あまり知られていないニッチな市場や他社が真似できない得意分野に経営資源を集中して高い利益成長を追求したり、ニーズの変化に素早く対応したり、技術革新を促進したりできると考えている。

 小型株は、大型株に比べてアナリストが調査対象としている銘柄が少ない。卓越した製品・技術・サービスを持つ「ダイヤの原石」が隠されている可能性が考えられる。当ファンドは、IPO企業のほぼ全てに可能な限り個別面談することで、定量的なデータとは違う角度から企業価値を判断していきたい。

 また当ファンドは「1株当たり利益(EPS)」を、企業経営者と従業員の「情熱」「工夫」「頑張り」ととらえている。その企業が「本質的な力を持っているか」「長期的に成長する企業なのか」を見極める重要な指標なので、EPSに着目して企業を発掘していく。

 さらに、足で稼いだ情報で成長企業を掘り起こしている。電話取材やWebミーティングに加えて、現場で直接、企業に取材することで、取材先の熱意や実際の雰囲気を体感したうえで、深みのあるディスカッションを行っている。

◆設定来で基準価額は10倍に

(出所)レオス・キャピタルワークス(出所)レオス・キャピタルワークス(クリックで表示)


-過去の運用実績は。

渡邉氏 このファンドは、ファミリーファンド方式で、「レオス日本小型株マザーファンド」に投資する。

 このマザーファンドは、年金基金などの資金を預かり、2011年11月に運用を開始した。約12年の運用実績を持っている。設定来の基準価額は約10倍に拡大しており、東証株価指数(TOPIX)を大幅に上回る成果を残している。

 セクターや業種にとらわれず、多様な価値観で分散投資を行い、世界情勢や経済の変化に対応して保有する株式の比率を柔軟に変化させることで、効率性の高い運用を行っている。

◆中小型株は大きく出遅れ

-市場環境は

渡邉氏 日本の株式市場の投資環境を見ると、中小型株市場は大きく出遅れている。コロナ禍以降、市場を主導しているのは、大型株だ。とりわけ、半導体関連株や商社、銀行等の金融セクターなど、ごく一部の業種に偏っている。大型株が上伸する中で、小型株は放置されている状況だ。

◆自由で創造的で野心的な血をたぎらせる

-4月1日から持ち株会社体制に移行するが。

藤野氏 レオス・キャピタルワークスを「もっと自由で、もっと投資会社らしくしていきたい」と考えている。持ち株会社「SBIレオスひふみ」の傘下に、アセットマネジメント会社の「レオス・キャピタルワークス」とベンチャーキャピタルの「レオス・キャピタルパートナーズ」を擁する形になる。

 ファイナンシャル・インクルーションを達成するには「さまざまな仲間がいていい」と考えている。具体的な候補があるわけではないが、金融サービスをさまざまに展開する会社とファイナンシャル・インクルーションを推進することを考えている。

当社に流れる「自由で創造的で野心的な血をたぎらせることができたらいいな」と考えている。

 

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