バランス型「はぐくむニーサ」を設定=「資産形成」と「子育て支援」を同時に目指す-三井住友DSアセット
2024年02月16日 08時00分
三井住友DSアセットマネジメントは、バランスファンド「三井住友DSインカムバランスNISAファンド(成長投資型)/(予想分配金提示型)愛称:はぐくむニーサ」を設定した。このファンドへの投資を通じて「長期の資産形成」と「子育て支援」を同時に目指す仕組みにした点が特徴だ。
具体的には、国内外の株式・債券・不動産に投資するアクティブ運用の各マザーファンドを組み入れてシンプルな分散投資を行いつつ、信託報酬の一部を国が運営する「こどもの未来応援基金」に寄付することで継続的に子育てを支援する。ソリューション営業部統括部長の馬岡憲治氏と営業推進チーム長の足達舞氏に、設定の経緯や狙いを聞いた。
◆NISAファンドのスタンダード目指す
-検討の経緯は。
馬岡氏 「新しいNISA制度のスタンダードとなるファンドを目指そう」というコンセプトを掲げて、1年ほど前に新ファンドの検討を始めた。NISAは、岸田文雄政権の資産所得倍増プランの柱となる制度だ。当社は、50以上の地域金融機関などの担当者と「NISAで投資するファンドに必要な要素は何か」「どのような商品が求められているか」を議論して、商品設計を練り上げた。
◆アクティブ運用のバランスファンド
-設計のポイントは。
馬岡氏 地域金融機関とのコニュニケーションの中で、設計のポイントとして「資産形成のコア(中核)を担うファンドは、バランス型が望ましい」という意見や「対面営業の付加価値を実現するには、アクティブファンドが良い」という指摘をいただいた。
お客さまにアクティブファンドを説明し、インデックスファンドを上回るリターンを受け取っていただくことで、その対価として販売手数料や信託報酬をお支払いいただく。「中長期的にNISAを推進することは、アクティブファンドを見直すきっかけになる」という声もあった。
◆しっかりした実績と運用体制
-苦労した点は。
馬岡氏 地域金融機関からは「トラックレコードが無いファンドは採用しづらい」とする声もいただいた。当ファンドは、アセットごとに当社が自社運用する、運用実績のあるアクティブ運用の「看板ファンド」をマザーファンドとして組み入れた。このため、新規設定ファンドではあるが、しっかりとした運用実績を持ち、運用体制が確立しているファンドになった。
◆中リスク帯のアクティブ型、1%を下回る信託報酬
-リターンやコストの考え方は。
馬岡氏 NISAは運用益が非課税になる制度なので、一定程度の収益を目的とするお客さまが多いだろうと考えた。運用業界全体の現在の公募投信ラインナップを見ると、低リスク帯のバランスファンドはかなりあるが、中リスク帯以上のバランスファンドは少なく、しかもアクティブ運用となるとほとんど無い。
アクティブファンドは相対的に信託報酬が高めだが、新ファンドはマザーファンドを当社が自社運用するアクティブファンドにすることで、年率0.957%(税込み)と、1%を下回る信託報酬にできた。
◆超長期の世界経済の成長をとらえる
-ポートフォリオの構築の考え方は
足達氏 新NISAは非課税期間が無期限化された。これにより投資家が想定する運用期間は、20~30年に長期化することが想定される。こうした超長期の世界経済の成長をとらえることを考えると、新ファンドの期待リターンは、信託報酬控除後で年率7%程度に設定した。
この水準を決める際に、全世界株式に投資する人気のインデックス「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス」と比較した。このインデックスのパフォーマンスを30年程度のトラックレコードで振り返ると、リターンは年率7%強だ。一方で、リスクは同14%程度と高い。
当ファンドは、期待リターンを年率7.4%、想定リスクを同9.5%に設計した。アクティブ運用ファンドを組み入れたバランスファンドにすることで、人気の全世界株式のインデックスと同程度の期待リターンを確保しながら、分散投資で価格変動を抑制し、リスクを当該インデックスの3分の2程度に抑えた効率的な運用を目指す。
◆インカム重視、固定配分型に
-運用の工夫は。
足達氏 マザーファンドは、高配当株式やREIT(不動産投信)などインカム収入を重視した資産に投資する。インカムを積み上げることで安定的な収益を獲得して、短期的な下落による総合収益の減少を抑制することが期待される。また、運用の成果を実感しやすい。
ポートフォリオは固定配分方式にした。アロケーションを変動させるものに比較して、相対的にコストを抑えることができる。また、急落した相場が反転上昇したときに、ファンドのリターンの戻りも早いことが期待され、基準価額の変動が分かりやすいと考えた。
◆二つの選択肢を用意
-分配の考え方は。
足達氏 「成長投資型」と「予想分配金提示型」を用意した。お客さまはそれぞれに、さまざまなニーズをお持ちなので、二つの選択肢をお示しすることにした。
このファンドは年率7%程度の成長を目指しているので、「予想分配金提示型」については、パフォーマンスに応じた分配金を出していきたい。資産の成長も総合的に勘案して無理のない分配を行っていく方針だ。
◆みんなが共感できるテーマ
-子育て支援がコンセプトに浮上した経緯は。
足達氏 岸田政権は、「投資の拡大」と「子育て支援」を政策の2本柱にしている。私たちは、この二つの柱を当ファンドでつなぎたいと考えた。新NISAで生まれる収益を「子育て支援」に使う方法について、こども家庭庁と相談する中で、「こどもの未来応援基金」に寄付するというスキームが浮上した。
金融機関の窓口で投信を購入される方は、お孫さんを持つシニア世代や子育て世代も多い。また、金融機関の投信担当者も当社の社員も、多くが子育て世代だ。老若男女を問わず多くの人に、ご賛同いただきやすいスキームだと考えた。収益の一部を寄付するファンドを購入することで、自然と「子育て支援」に参加できる。
NISAの普及によって、投資家の裾野はミレニアル世代やZ世代に広がることが想定される。社会貢献に関心の高い世代なので、寄付を行うファンドに対する注目も高まるのではないかと考える。