「投資を始めない理由」を一つ一つ消していく=初心者向けイベントを企画-ファイナンシャル・アドバイザー協会の尾口理事に聞く
2023年09月22日 12時00分
金融商品仲介業者(IFA)の業界団体、一般社団法人ファイナンシャル・アドバイザー協会(理事長、中桐啓貴GAIA社長)はこのほど、投資未経験者や初心者向けのイベント「長州小力さんと考える 豊かな老後に向けて知っておきたいお金のこと」を開催した。このイベントを企画した尾口紘一理事(Fan代表取締役)にイベントの狙いや工夫、投資初心者に伝えたいことなどを聞いた。
-イベントがターゲットとした人は。
尾口氏 証券会社に口座を開設したが、そこから取引開始へと進めていない人が、かなり多いと聞いている。このように投資の最初の1歩でつまずいている人や、これから資産形成を始める若年層を想定して、協会のメンバーとイベントの内容を検討した。
-ゲストの選定は。
尾口氏 イベントには、こうした世代の人たちと一緒に楽しく投資を学べる人として、お笑いタレントの長州小力さんをお招きした。タレントという職業は、人気がブレイクして収入が急増する時期がある一方で、人気が下がれば仕事が減る。将来に向けてライフプランニングを立てにくい職業だが、自分たちとまったく違う職業の方の人生経験の方が、興味を持って聞いていただけるのではないかと考えた。また、毎月給与を受け取る自分たちだったら、ライフプランを立てやすいと感じてもらえたと思う。
-初心者に伝えたいことは。
尾口氏 「積立投資を始めてもらうこと」をメインテーマにした。イベントでは、老後資金として2000万円を資産形成する目標を実現する例をシミュレーションで見てもらった。30年という時間をかけても、運用をしなければ毎月5万6000円の積み立てが必要になる。しかし、年率3%程度という無理のない運用を実行すれば、毎月3万4000円で目標を達成できることを見てもらった。
基礎知識として、リスクをコントロールしながら時間をかけて資産を増やす「投資」と、運と勘で金融商品を売ったり、買ったりして、短期間で資産を増やす「投機」の違いを説明した。また、「積立投資」では、相場が下落する局面があっても、相対的に安い価格でより多くの口数が購入できているため、将来的に資産形成にプラスに働く可能性があることなど、「一括投資」との違いを紹介した。
-投資詐欺も取り上げたが。
尾口氏 若年層が投資詐欺に合うことが増えているそうだ。長期投資を勧める一方で、投資詐欺に関する注意喚起も盛り込みたいと考えた。実際に生活の中で、投資の話をしているのに「絶対もうかる」といった断定的判断を表す言葉が相手から出てきたら、「怪しいな」と感じてもらえればと考えた。
-工夫した点は。
尾口氏 動画にして二次配信することを計画している。クスッと笑える動画でないと、一般の方に再生してもらえないと聞いたので、ゲストの力を借りて、笑いを取れる部分を設けた。
また、クイズを通じて「投資と投機」の違いに気付いてもらったり、積立投資のシミュレーションに触れてもらったりすることで、例えば「投資は怖い」とか「まとまったお金が必要だ」といった「投資を始めない理由」を一つ一つ消していくことを目指した。
-今後の活動は。
尾口氏 新しい少額投資非課税制度(NISA)のスタートを前に、ネット証券の口座開設数が大きく伸びているようだ。多くの人が、新NISAをきっかけにして、投資に取り組もうとするのは間違いないと思う。より多くの人が、投資をスタートできるように、これからも学びの機会を積極的に提供していきたいと考えている。投資を継続していると、いろいろ疑問が出てくると思うので、その時はアドバイザーに相談するなど、次のステップに進んでいただきたいと思う。