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高配当日本株でアクティブETF=インカムと値上がり益の獲得目指す-三菱UFJ国際の佐藤氏

2023年09月04日 13時00分

佐藤尚慶グループマネジャー

 国内初となる「アクティブ運用型ETF(上場投信)」6銘柄が9月7日、東証に上場する。株価指数など特定の指数に連動せず、ファンドの運用方針に従って銘柄を選定し、投資成果の実現を目指す。新たに「MAXIS高配当日本株アクティブ上場投信」の運用を始める三菱UFJ国際投信 法人投資家営業部 ETF事業グループの佐藤尚慶グループマネジャーに話を聞いた。

◆連動対象が存在しないETF

-アクティブETFとは。

佐藤氏 「連動対象が存在しないタイプのETF」と定義されている。インデックス型ETFのように指数に連動せず、運用目標を運用会社が自由に設定するファンドが、アクティブETFに分類される。多種多様な商品の登場が期待され、ETFのバリュエーションの拡大が見込まれる。

-世界の動向は。

佐藤氏 米国を中心に各国でアクティブETFを上場する動きが広がっている。2022年末の純資産総額は全世界で約60兆円、銘柄数は約1800銘柄にそれぞれ拡大した。米国では、低コストで手軽にアクティブ運用戦略にアクセスできる点に魅力を感じる投資家が多いようだ。日本では今年6月、東証がアクティブETFの制度要綱を公表したことで、アクティブETFの上場が可能になった。

◆品質・透明性を高める

-東証の上場ルールは。

佐藤氏 東証は、品質と透明性を向上させるため、アクティブETFに三つの独自ルールを設けた。一つ目は、情報開示だ。日次でポートフォリオの全組入銘柄を公表することと、月次で運用実績等を開示することを義務付けた。

 二つ目は、デリバティブの使用制限だ。「つみたてNISA」と同様の基準で、ヘッジ目的等に限定した。三つ目は、上場廃止基準を設けた。残高の少ないファンドを廃止することで、陳腐化された運用テーマや不芳なパフォーマンスのファンドが撤退する仕組みとし、市場の健全性を確保する。

◆リアルタイムで売買、約定価格を確認

-ETFの特徴と強みは。

佐藤氏 一つ目は、市場に上場しているので、リアルタイムで売買できる点だ。株式などボラティリティの大きい商品は、取引時間中に取引できる点がメリットとなる。二つ目は、約定価格を確認して売買できる点だ。特に海外資産に投資する場合、非上場の公募投信なら翌日の基準価額で取引されるが、ETFは東京時間に動いている先物等に連動した今の価格を確認して取引できるので、翌日にリスクを繰り越さずに済む。三つ目は、金融法人にとって株式と同じように取引し会計処理できるメリットがある。

-三菱UFJ国際投信のETF戦略は。

佐藤氏 当社の上場投信「MAXIS」シリーズでは、自社に運用リソースがあり、顧客に付加価値を提供できる運用戦略について、アクティブETFを提供していきたい。一方、低コストのニーズが強い商品では、従来型のインデックスETFを展開していく。

◆高配当日本株をアクティブ運用

-新ファンドの運用方針は

ファンド概要ファンド概要(クリックで表示)


佐藤氏 7日に新規上場する「MAXIS高配当日本株アクティブ上場投信」は、ボラティリティの高い日本株というカテゴリーで、高配当株の銘柄バスケットを、少額からリアルタイムで取引できる。相場環境に応じてより適切な銘柄を組み入れたり、信用リスク懸念や無配懸念のある銘柄を除外したりすることで、投資家に高い付加価値を提供していく。


-具体的な運用プロセスは。

佐藤氏 東証に上場する大型株・中型株から、配当動向や信用リスクを勘案し、予想配当利回りの上位銘柄を選定する方針だ。30銘柄以上の流動性の高い株式でポートフォリオを構築する。信用リスク懸念や無配懸念がある銘柄については、定性判断で除外する。

◆魅力増す高配当株

-高配当に着目した理由は。

佐藤氏 日本企業では近年、配当総額が増加している。株主還元の浸透などを背景に、1株当たり配当総額は過去20年間で約5倍に増加している。また、予想配当利回りが年率4%を超える銘柄も、ここ数年で急増している。配当に着目した日本株投資の存在感が高まっている。

◆先回りを防ぐ

-運用で工夫する点は

佐藤氏 インデックスETFの運用には課題がある。銘柄入れ替えルールを事前に決め、入れ替えタイミングや銘柄を公表しているので、「先回り取引」をする市場参加者が出てしまう。先回りされと、価格が下がったところで銘柄を除外したり、価格が上がったところで新規組入れを行ったりと、投資家に不利な売買をせざるを得なくなってしまう。しかし、このファンドは、リバランスのタイミングを固定化したり、公表したりせず、運用者の判断で適時適切に売買する。

 アクティブETFは、東証のルールにより、前日の残高や組入銘柄を翌朝に公開することが義務付けられている。このファンドは、流動性の高い銘柄でポートフォリオを組み、リバランスを短期間で済ませておくことで、銘柄入替途中であることを市場参加者に気付かれないようにし、先回り売買を防ぐ。

◆インカム収入に魅力

-想定する投資家は。

佐藤氏 インカムをしっかり取りたい投資家を想定している。ETFは商品の仕組み上、ファンドの中にたまった株式からの配当金を決算のたびに、経費控除後の全額を分配することになっている。このため、分配金をしっかり得たいと思っている個人投資家や、インカムゲインが収益として認識される金融法人に適した商品だと考えている。来年1月にスタートする新しい少額投資非課税制度(NISA)の成長投資枠ファンドの対象になる予定だ。

 

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