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三菱UFJアセットの「オルカンカフェ」、登録者が1万人を突破=投資家同士で声を掛け合い、長期投資を支える

2025年06月27日 08時30分

オルカンカフェ

 三菱UFJアセットマネジメントが運営する、長期投資を実践するためのコミュニティサイト「オルカンカフェ」の登録者数が、1万人を突破した。開設から5カ月弱で達成した。

 純資産総額6兆円超と国内公募株式投信(除くETF)で最大級の規模の人気ファンド「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(以下「オルカン」)の投資家を中心に、相場急落時に声を掛けて支え合ったり、日ごろの情報交換を通じて資産運用に関する理解を深めたりしている。

 このサイトの推進メンバーの一人であるカスタマー・コミュニケーション部の武部仁美氏に、4月の相場急変時の対応や投資家の反応などを聞いた。

◆運用会社が運営、「情報の信頼性」がメリット

-オルカンカフェとは

武部氏 長期投資を実践するためのコミュニティサイトだ。登録は無料。「オルカン」で長期投資を目指す人に向けて情報発信し、皆で語り合える場を提供している。「オルカン」に関心がある人や、「オルカン」に限らず長期投資を実践している人も、参加している。

 運用会社の三菱UFJアセットマネジメントが運営しているサイトなので、信頼できる情報に触れ、金融や資産運用について安心して語り合える。当社では「発信内容に誤ったものはないか」をチェックするなど、しっかりとした体制でサイトを管理している。

 サイトでは、三菱UFJアセットマネジメントが、長期投資を啓蒙(けいもう)するトピックを掲載したり、「オルカン」を運用するファンドマネジャーの思いを掲載したりしている。

オルカンカフェは、企業・自治体と生活者をつなぐオンラインコミュニティの構築・運営を行うクオン(本社東京)の「“絆”(きずな)のコミュニティ」を利用している。

◆登録者の増加ペース、4月の株価急落で加速

-登録者数の拡大状況は

武部氏 オルカンカフェは、2025年1月15日に開設した。約5カ月後の6月9日に登録者数が1万人を突破した。当初の想定を上回るペースで拡大している。4月にトランプ米大統領が関税政策を発表し、世界の株価が下落した。このときは登録者の増加ペースが速まった。

 長期投資を実践していると、株式相場の下落局面を経験することは避けられない。4月の下落時に寄せられたコメントを見ると、「『オルカン』を保有し続けます」「静観します」という声が多かったが、不安に思う気持ちも強かったように思う。

 これに対して、オルカンカフェでは、三菱UFJアセットマネジメントから相場急落時の心構えなどを積極的に発信するとともに、投資家同士が声を掛け合って不安な気持ちを低減する場を提供した。

 コミュニティサイト開設以降、初めての大きな株価下落だったが、「情報がほしい」「誰かと話し合いたい」という投資家のニーズに、オルカンカフェの機能がうまくマッチした。

◆投資家の発信を引き出すトピックを工夫

-三菱UFJアセットからの情報発信の内容は

武部氏 オルカンカフェ設立当初より、投資家が長期投資について相互に励まし合うコメントが集まるように「マーケットが下落した時のあなたの心得や長期投資についての座右の銘は?」というテーマでトピックを発信した。

 また、「オルカン」を知ってもらうことを中心にファンドマネジャーの思いやファンド設定の経緯などをトピックにまとめて掲載している。

 4月の下落局面では、相場下落時に慌てないことの大切さを認識し合えるように「金融市場が動揺、その時どうする?-資産運用における心理マネジメント」や「つみたて投資のポイントと相場変動時のシミュレーションを見てみよう」などのトピックを提供した。

 オルカンカフェの登録者には、投資初心者も、ベテラン投資家もいる。お互いに交流することで、ベテランが初心者をひっぱり、経験を共有してもらうことを考えた。ベテラン投資家の発言には、運用会社の専門家の発信とは異なる、納得感や安心感があると思う。

 投資家の声を引き出し、相互の情報交換の中で新たな知見が生まれるように、トピックを質問ベースにするなどの工夫を凝らした。

 登録者からは、「みんなの座右の銘を読んでいると、激動する世界情勢から一歩下がって静観できそうだ」とするコメントが寄せられた。語り合うことで、不安な気持ちを整理しているようすがうかがえた。

 また、「リーマン・ショックのときはかなり下落したが、気にせず継続して持ち続けた。とにかく、一喜一憂しないことだ」「短期的な感情を起点にして意思決定をしないこと。感情的になったら少し待つ。この言葉を忘れずにいたいと思う」など、ベテラン投資家からは投資初心者にとって参考となるコメントをいただいた。

◆オルカンカフェ、「迷った時に立ち返る場所」に

-オルカンカフェの今後は

武部氏 オルカンカフェは、「オルカン」購入者のアフターフォローとしてスタートした。ただ、登録者にアンケートを実施したところ、「投資初心者」や「投資を始められないでいる人」も参加していることが分かった。こうした人たちが気軽に話せるような資産運用のトピックも提供していきたい。

 また、引き続き、「オルカン」の運用会社ならではの情報を、参加者のニーズに合わせて発信していきたい。

 オルカンカフェは、投資家が「迷った時に立ち返る場所」になれればいいなと思う。普段から資産運用についてずっと考えている必要はないが、相場が下落して不安になったり、資産運用について疑問が出てきたりしたときに、オルカンカフェをのぞいて、気軽に気持ちを発信してほしいと思う。

 月次レポートや運用報告書に加えて、オルカンカフェやSNSで、運用会社と継続的な接点があれば、投資家の皆さんに安心感を持ってもらえると思う。ファンドは買って終わりではなく、その後の長期投資をフォローしていくことが大切だ。

 当社の調査によると、「オルカン」の保有者は、2024年12月末時点で473万人に拡大している。今後も、SNSやホームページなどのタッチポイントで、オルカンカフェの利用を呼び掛けていく。「オルカン」を保有している投資家には、購入後のアフターフォローの一環だと考えて、オルカンカフェを利用していただきたいと思う。

◆「人生を自分でデザインしたい」という若者気質にマッチ

-武部さんは、三菱UFJアセットマネジメントの20代社員が同世代に情報発信する「20代から始めるつみたて投資project(通称:つみプロ)」に参加し、これまでも継続的に若年層に接しきた。行動に変化を感じるか。

武部氏 若い人に長期投資が「根を張りつつある」と思っている。新NISAがスタートしてメディアやネットで、資産運用について目にする機会が増えたので、資産運用自体のハードルは下がってきている。

 現在の若い世代は、働き方や生き方など、自分の人生を自分でデザインしたいという欲求が強いように思う。例えば、筋トレなどの運動習慣、資格を取得するための勉強習慣と同じように、より良いライフスタイルを保つ一つの手段として、資産運用が選ばれてきているのではないか。衣食住の基礎となる「お金」について自分でデザインし、資産形成によってコントロールすることが、若い世代の価値観とうまくマッチしていると感じる。

 ネット等を通じて、情報を取得することは普通になっている。ただ、情報の取得先が広がり過ぎると、何を信じていいか分からないという状況に陥ることも懸念される。オルカンカフェなど、信頼できる運用会社や金融機関が運営しているサイトをチェックすることで、必用な情報を補完してもらえると思う。

 「オルカン」は、2024年のヒット商品に選ばれるなど、知名度が向上した。ただ、オルカンカフェに寄せられる声を見ていると、「『オルカン』を初めて知った」「怖くて資産運用を始められない」といった声は、今も寄せられている。もう少し違う角度からアプローチすることで、投資家の裾野をさらに広げていけることが実感できて、オルカンカフェから大きな学びを得ている。

◆「オルカン」は、投資家の声で生まれたファンド

-「オルカン」の誕生と投資家の関わりは

武部氏 「eMAXIS Slim」シリーズは、2017年2月にスタートした。この時の商品ラインナップに「オルカン」は入っていない。「オルカン」は、お客さまに強い要望をいただいて、2018年10月に設定したファンドだ。

 オルカンカフェを推進していくうえで、「『オルカン』がお客さまの声で生まれたファンドだ」ということが、とても重要な要素だと思っている。投資家に意見をいただき、情報交換することが、「オルカン」のソフト面での良さになっている。「eMAXIS Slim」シリーズについては、ファンミーティングやブロガーミーティングを継続して開催しており、投資家と直接触れ合う機会を大切にしている。

 

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