低コスト・インデックスF、信託報酬で引き下げ競争=新NISAのスタート控え
2023年08月17日 09時00分
新しい少額投資非課税制度(NISA)のスタートを来年1月に控え、低コストのインデックスファンドで、信託報酬など運用コストの引き下げが活発になった。個人投資家から見ると、手数料が低ければ将来の運用成績にプラスに働く。ただ、運用コストの開示方法は、各社によって異なることから注意が必要だ。
例えば、世界株式の指数である「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(MSCI ACWI)」に連動する投資成果を目指す低コストファンドでは、アセットマネジメントOneと三菱UFJ国際投信が業界最低水準の信託報酬を引き下げ、野村アセットマネジメントと日興アセットマネジメントがさらに信託報酬の低い新ファンドを設定した。
ただ、信託報酬は、運用会社によって計上する内容が異なる。野村アセットなどは、信託報酬に指数使用料や目論見書等の作成費用を入れているが、日興アセットは入れていない(図)。日興アセットは、指数使用料等の諸費用を精査し、その上限を年率0.03%に引き下げることで、コストの予見性を高め、ほかのファンドと比較しやすくした。
投信業界では来年4月から、コストの開示について、これまで運用報告書に掲載してきた総経費率を目論見書にも掲載する。そうした動きを先取りして目論見書に総経費率を掲載する運用会社も出ている。ただ、総経費率は過去のデータであり、ファンドごとに計算期間が異なる上、直近の信託報酬の変更が反映されていないなど、使いにくい点もある。
このため、ファンドの運用成績の評価については、トータルリターン(分配金込み基準価額の騰落率)を重視すべきだとする声も聞かれる。
楽天証券資産づくり研究所副所長兼ファンドアナリストの篠田尚子氏は「これらのファンドの信託報酬等の差は、小数点第2位以下の小さなものになっているので、10年、20年の長期投資を行って、ようやく運用成果に多少の差が出る程度」と指摘。「それぞれのファンドがどの販売会社で購入できるかを確認し、純資産総額などを調べて決めることが必要だろう」とアドバイスしている。
一方、総経費率については「総経費率の大きくなりやすい、純資産総額の小さいファンドや、新興国ファンドなどで同一カテゴリーのファンドを比較したりするときに有効だ」(篠田氏)と指摘した。また、「トータルリターンは、全てのコストを差し引いた後の運用成績を表しているので、重要なチェック指標だ」(同)と述べた。