新NISA、投資拡大のきっかけに=投資先企業の価値向上に注力-アセマネOneの杉原社長
2023年08月03日 09時15分
アセットマネジメントOneの杉原規之社長は、時事通信社とのインタビューに応じ、来年1月にスタートする新しい少額投資非課税制度(NISA)について、「預貯金を投資に振り向ける大きなきっかけになるだろう」と期待を表明した。また、「運用力に磨きをかけ、投資先企業の価値向上に努めていきたい」と語った。主な内容は以下の通り。
-就任の抱負は
杉原社長 アセットマネジメントOneは2016年10月に、みずほフィナンシャルグループの資産運用部門や子会社を統合して設立された。私は、この統合プロジェクトを担当し、その後も企画部門などで資産運用業に従事してきた。
資産運用業が力を発揮すべき時代を迎えている。4月に社長に就任したことを天命と受け止め、当社と業界の発展に力を尽くしていきたい。
◆投資家層の拡大、企業価値向上に注力
-運用会社の役割は
杉原社長 二つあると考えている。一つ目は「個人金融資産の半分以上が預貯金に置かれている状況を改善し、投資に振り向けること」だ。新しい少額投資非課税制度(NISA)が大きなきっかけになるだろう。当社は、しっかりとした運用商品を投資家に提供するとともに、その裏付けとなる運用力を磨いていきたい。
二つ目は、お客さまからお預かりした資金を運用する機関投資家として「スチュワードシップコード(責任ある機関投資家の諸原則)にのっとり、投資先企業の価値向上をしっかりと後押しすること」だ。企業との対話(エンゲージメント)に、もう一段ギアを高めて取り組む。東証が「株価純資産倍率(PBR)1倍割れ企業」に改善を求めたことで、企業は構造改革を加速している。投資家の立場でアドバイスし、企業価値向上に貢献していく。
◆投資イメージの改善に向け情報発信
-投資家層の拡大に向けた課題は
杉原社長 投資に関するアンケートを見ると「自分には関係ない」「お金持ちがやることだ」などネガティブなイメージが強い。当社は、大学で投資教育の授業を行い、ホームページに投資の基礎をまとめたコンテンツを掲載してきた。国民の金融知識の向上に資する情報発信を拡大し、投資に対する抵抗感を払拭する機会を提供していきたい。
また、運用会社の認知度が低いことも課題だ。取引口座を開設するのは銀行や証券会社なので、運用会社にまで投資家の関心が向いていない。こうした状況を改善するため、投資信託を運用するファンドマネジャーが、投資家に直接、運用哲学や運用状況を伝える機会を増やし、運用会社を身近な存在にしていきたい。
◆投資の力で未来をはぐくむ
-投資の社会的な重要性は
杉原社長 当社のコーポレート・メッセージは「投資の力で未来をはぐくむ」だ。投資は、単にお金を増やすためだけでなく、企業に資金を提供し、その成長を促す効果が期待される。その企業がサステナビリティ(持続可能性)を重視した経営を推進すれば、社会全体のサステナビリティも高まる。投資を「リターンを伴う社会貢献」と理解してもらうことで、若い世代にも受け入れられるのではないか。
◆運用リソースを強化分野に投入
-プロダクトガバナンスの取り組みは
杉原社長 今年度から3年間の中期経営計画をスタートさせた。重点施策の一つが、運用力の強化だ。再現性と競争力のあるパフォーマンスを実現するため「ファンドの選択と集中が必須だ」と考えている。既存ファンドの整理・統合を進め、お客さまに最良の商品を提供できるようにするためだ。
アセットマネジメントOneは設立以来、既存ファンドの早期償還や見直しを進めてきたが、さらに一段、踏み込んで取り組んでいく。また、戦略が似ているファンドについて、運用体制をまとめたり、管理部門の事務フローを効率化したりすることも進めていく。こうして捻出した運用リソースを強化分野に投入することで、運用力を高めていく。
◆入門のインデックス、身近なアクティブを提供
-新NISAへの対応は
杉原社長 当社は、低コストのインデックスファンド「たわらノーロード」シリーズを展開している。こうした商品は、投資をしたことない人に対するエントリー・チケット(入門商品)として必須だと思っている。今春、信託報酬をさらに引き下げることなども実施した。販売会社は全国の地域金融機関など約200社超に達しており、連携しながら普及に努めていきたい。
さらに、少し投資に慣れた人に、しっかりとしたアクティブファンドを提供していく。当社は、企業調査やファンドマネジャーの力量を高めてきた。その強みを全面に出してファンドの特徴や魅力を伝えていく。「アクティブファンドの第一歩」を踏み出してもらえる商品ラインアップを提供していく。
アクティブ運用の日本株ファンドについては、中小型株を中心に複数の優良ファンドを擁している。さらに新規ファンドとして、大型株を含めた成長期待銘柄を投資対象にするオールキャップの日本株式ファンドや、構造改革の途上の日本企業を応援するバリュー株(割安株)ファンドなどを検討している。こうしたファンドは、投資家にとって身近で分かりやすく、投資への参加意識を持つことができるだろう。
◆インハウス運用、ゲートキーピング機能を強化
-そのほかの強化分野は
杉原社長 二つある。一つは、インハウス(自家運用)で、日本株式やマルチアセットなどの強みを持つ運用力にさらに磨きをかけていく。日本企業の成長を後押しするという観点からも力を入れていきたい。
もう一つは、オルタナティブ(代替資産)やグローバル資産などに関するゲートキーピング(目利き)機能を強化し優良プロダクトのソーシングに力を入れる。今後、富裕層や年金基金向けにニーズが高まると思われることから、海外とのネットワークを生かして取り組んでいく。