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資産所得倍増へ、地銀の強みを生かせ=職域、無関心層、生活設計-日本総研・大嶋氏

2023年01月31日 08時15分

大嶋秀雄主任研究員

 日本総研調査部金融リサーチセンターの大嶋秀雄主任研究員は「岐路に立つ地銀のビジネス戦略」をテーマに記者勉強会を開催した。地銀の現状について「日銀のマイナス金利政策で金利収入が減少するなど経営環境は厳しさを増しており、ビジネス戦略の再考を求められている」と指摘。「既存ビジネスの収益基盤を強化しつつ、新ビジネスを育成して収益構造を多様化していくことが重要だ」として、各ビジネスを考察した。

■資産所得倍増プラン

 この中で、個人投資家向けの資産運用ビジネスについては、「政府が推進する『資産所得倍増プラン』と連携していくことが重要だ」と指摘した。同プランでは、5年間で少額投資非課税制度(NISA)口座数や累積買付額を倍増する目標を掲げている。また、①NISAの抜本拡充 ②中立的なアドバイス ③雇用者の資産形成強化 ④金融経済教育の拡充-といった「七つの柱」を立てている。

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■雇用者支援

 大嶋氏は、投資家の裾野拡大に向けた地銀の戦略について「ネット証券はNISA口座獲得に向けて攻勢を掛けてくると思われるが、地銀は同じ土俵では戦わず、例えば企業における資産形成の支援や金融教育といった幅広い取り組みを展開し、地銀の強みを生かす戦略を立てることが重要になる」と述べた。

■無関心層の取り込み

 また「資産倍増プランのボトルネック(重要課題)は、『投資に関心のない層』への対応だ。約7割とも言われる無関心な世帯は、NISAの拡充だけでは投資を始めないだろうし、ネット証券もアプローチは難しいだろう。地銀が地道に後押しすることが必要だ」と指摘した。

■生活設計

 その上で「資産形成に関心のない人でも『老後に対する不安』は強い。同プランでも公的年金シミュレーターと民間サービスとの連携が示されたが、生涯設計のサポートを通じて、資産形成を後押しすることも考えられる」と紹介した。

 さらに、「地域住民は、地銀に対して、証券会社等にはない、高い信頼感を寄せている。『資産形成の素朴な疑問に答える』『生活設計を支援する』といった取り組みを進める中で、顧客とのリレーションを強化し、預かり資産の拡大や、住宅ローンなど他のサービスにつなげていくことが必要だろう」と述べた。

 

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