ラッセル、日本の年金基金に「包括的資産運用サービス」を本格展開=アセットオーナーシップ改革で関心高まる
2025年05月27日 07時00分
米大手運用会社の日本法人、ラッセル・インベストメント(東京、山本圭志社長兼CEO)は、日本の年金基金や学校法人に、欧米で広く普及している包括的資産運用(OCIO)サービスを本格展開する。投資家ごとにコンサルティングを行い、国内外の優れた運用戦略を組み込んだポートフォリオを提案、売買執行からその後の運用・レポーティングまでを請け負うことで、トータル・ポートフォリオ・ソリューション(TPS)を提供する。
政府が推進する「資産運用立国実現プラン」では、年金基金などのアセットオーナーに対して運用力の向上や加入者のための「見える化」を求めており、OCIOサービスに対する関心が高まっているという。ラッセル・インベストメントはこのほど、メディア勉強会を開催し、山本社長らが説明した。主なポイントは以下の通り。
◆運用機関の調査で先駆者、OCIOサービスに発展

山本社長 米国のラッセル・インベストメントは、シアトル市に1936年に設立された。日本には1986年に拠点を開設し、主に年金コンサルタントとして、大手公的年金や大手企業の年金基金をサポートしてきた。
ラッセルの特徴だが、1969年に世界で初めて、運用機関を評価するサービスを始めた。機関投資家に評価結果を提供し、ポートフォリオ運用に役立ててもらっている。当社は、世界中の優れた運用機関を投資家に紹介してきた。
さらに、ラッセルはこのサービスを発展させ、実際に複数のマネージャーを組み合わせたマルチ・マネージャーのポートフォリオを構築し、売買取引の執行からコスト管理まで、一元的に管理するOCIOサービスの提供を始めた。Outsourced(外部委託された)Chief Investment Officer(最高投資責任者)の頭文字をとったものだ。
日本では、政府が2024年8月に「アセットオーナー・プリンシプル」を策定し、アセットオーナーが受益者などの最善の利益を勘案して、その資産を運用する責任(フィデューシャリー・デューティー)を果たしていく上で有用と考えられる共通の原則を定めた。これを受けて、日本でもOCIOサービスに対する関心が高まっている。
◆OCIOサービス、お客さまの三つの課題を同時に解決
山本社長 ラッセル・インベストメントは、日本のお客さまが挑戦する三つの課題の解決をお手伝いすることを目指している。
一つ目の課題は、世界中の良いアクティブ運用のマネージャーにアクセスすることだ。ラッセルは、世界中の1万6000超の運用戦略をモニターし、このうち247戦略をラッセルのファンドで採用している。世界の機関投資家に良いファンドマネージャー紹介したり、複数ファンドマネージャーを組み合わせたマルチ・マネージャーの運用ポートフォリオを提案したりしている。
二つ目の課題は、コストの管理だ。海外の機関投資家に比べて、日本の機関投資家は高いコストを支払っていることがあるので、グローバルな水準に引き下げる挑戦をお手伝いしたい。
三つ目の課題は、リスク管理だ。一般的に機関投資家が運用状況の報告を受けるのは数カ月先になる。相場が急落した場合でも、直ちにポートフォリオの状況を確認できない。また、複数のファンドで運用しているので、ポートフォリオ全体の状況を包括的に把握することは難しい。リアルタイムで包括的に管理することが課題だ。
当社は、これら三つの課題を同時に解決するソリューションをOCIOサービスと定義している。
ラッセルは「Invest without Boundaries」をグループのスローガンに掲げている。つまり「投資の限界からの開放」を目指している。ラッセルは「コンサルティング+運用+執行」の全ての機能を併せ持つユニークな資産運用会社だ。これらの機能を総動員して、お客さまにトータル・ポートフォリオ・ソリューション(TPS)を提供していきたい。
◆運用哲学は「分散投資」

アダム・ゴフ執行役員 チーフ・クライアント・ストラテジスト ラッセルの運用哲学は「分散投資」だ。それは簡単な洞察に基づいている。一つの資産クラス、一つの運用スタイル、一つの運用機関の商品が、常にアウトパフォームすることはないからだ。
ラッセルは、「分散投資」を最大限有効活用するために五つの機能を整備してきた。①資産配分 ②運用機関調査 ③マルチ・マネージャー ポートフォリオ構築 ④リスク管理ツールキット ⑤執行サービス-だ。
資産配分に当たっては、マーケットの市場環境に加えて、お客さまごとの運用目的や、運用状況、ニーズなどを反映するカスタマイズが、重要性を増している。投資対象は、パブリック(上場市場)からプライベート(非上場市場)まで、幅広い選択肢の中から、お客さまに最適なポートフォリオを構築することができる。
運用機関調査において、当社はパイオニアであり、世界中の運用戦略を徹底的に調査して、最も超過収益の獲得が見込まれる戦略を紹介している。
ポートフォリオ構築において、お客さまがどのようなリスクを取りたいか、リターンの源泉を何に求めるか-、といったコンサルティングに基づいて作成している。リスク特性の異なる戦略を組み合わせて、ポートフォリオ全体のダウンサイド・リスクを抑制するなど、さまざまな工夫を凝らしている。
さらに、複数の運用戦略を組み合わせたポートフォリオ全体について、リアルタイムにリスク状況などを把握できる管理ツールを、当社独自に構築し、お客さまに提供している。
実際の運用に当たっては、マーケットで売買を執行することが不可欠だ。ブローカーやカストディアンに任せるとコストがかかり、リスク管理にも課題があった。当社自身で売買を執行し、無駄を無くすことで、コストを削減している。
◆アセットオーナーの6割強が、外部のプロの活用を希望

金武伸治執行役員 トータル・ポートフォリオ・ソリューション本部長 当社は2024年10~11月、企業年金を対象にアンケートを実施した。政府が8月に「アセットオーナー・プリンシプル」を策定したことを受けて、64%が「外部の運用のプロのスキルやリソースを活用したい」と回答した。また、39%が「モニタリングとリスク管理」を主な課題に挙げた。
こうした調査結果から、日本のアセットオーナーは、四つ分野で「Boundaries(限界)」を感じていることが分かった。(A)グローバル運用の限界 (B)リスク管理の限界 (C)低金利国の為替管理の限界 (D)プライベート資産投資の限界-だ。
日本のアセットオーナーは広くグローバルに投資しているが、「世界中の優秀な運用者へのアクセス」や「運用コスト」に課題を感じているようだ。プライベート資産投資では、「運用者へのアクセス」に加えて、「ポートフォリオ管理の難しさ」が課題になっている。
リスク管理については、「包括的でタイムリーな把握」を望んでいる。さらに為替管理では、「世界的に株価が急落した時に為替が円高になるリスク」があるほか、「為替ヘッジのコストが高い」といった問題がある。
当社は、世界有数のOCIOマネージャーであり、さまざまな機能を持っているので、これらの課題へのソリューションを提供していきたいと考えている。