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グローバル運用やプライベートアセットに注力=三井住友DSアセットマネジメントの荻原社長

2026年02月09日 08時00分

荻原亘社長

 三井住友DSアセットマネジメントの荻原亘社長はこのほど時事通信社のインタビューに応じ、今後の注力分野について「当社の目指す姿は、国内で販売する全ての商品を自社で運用することだ。グローバルに運用する商品や、プライベート(非上場)アセットに投資する商品など、体制を拡充していきたい」と述べた。主なやりとりは、以下の通り。

◆多くの人が資産運用に参加した1年に

-就任1年目の感想は

荻原社長 政府は、資産運用立国の実現に向け、少額投資非課税制度(NISA)をはじめとしてさまざまな制度を整備しており、昨年(2025年)は、非常に多くの人が資産運用に参加した年になった。また、マーケット環境を追い風に、競争力のある運用成果を残すことができた。

 一方で、多くの国民が、インフレによって現金の実質的な価値が目減りすることを実感した年になった。さらに「資産運用をすること」と「しないこと」の差が非常に大きいことを認識した年でもあった。

 運用環境を見ると、日本株のファンダメンタルズが強くなっている。企業の収益率が高まっていることに加えて、東証のカバナンス改革が多くの企業に浸透してきたためだ。また、日本債券も、金利の上昇とともに魅力を増している。

 こうした中で、運用会社の役割の重要性が増しており、期待も高まっている。良い意味で変化の大きい、またとない環境の中で経営のかじを取っている。

◆アクティブ運用の強みを生かし、グローバルに展開

-次期中期経営計画の柱は

荻原社長 一つ目の柱は、良い運用成果をお客さまに提供することだ。受託者責任を常に意識し、お客さまの資産の運用にベストを尽くすことを、最も大切な価値観として社内で共有している。

 二つ目は、グローバル体制の整備だ。当社の日本株や債券の運用商品を世界のお客さまに届けたい。また、自社で運用するグローバルな運用商品を、日本のお客さまだけでなく海外投資家にも提供したい。次期中期経営計画は、それに向けて準備する期間だと考えている。

 当社ではここ数年、海外投資家からの受託資産が最も伸びている。世界で日本株が注目され、当社のアクティブ運用戦略が良好な運用成績を上げているためだ。1月に、ドイツ(フランクフルト)に現地法人を設立した。まずは日本株と日本債券の運用戦略を幅広いお客さまに提供し、将来的にはグローバルの株や債券などにラインナップを拡大したい。今後も海外の販売力を強化していく。

 三つ目は、運用力の強化だ。当社は、伝統資産においては調査に基づいてファンドマネジャーが投資銘柄を選定するアクティブ運用を中心に事業を展開しており、非常に競争力がある。運用領域を拡大することで、10年後にさらに飛躍したいと考えている。

 オルタナティブ(株式や債券を代替する資産)、特にプライベートアセット(非上場資産)は、今後の成長が見込まれる注力領域だ。SMBCグループのケイパビリティを活用し、プライベートデット(銀行以外による貸し付け)などの運用商品を拡充していく。

◆AIで情報収集を効率化、過去データから運用提案

-AIの活用は

荻原社長 当社は昨年10月、自社開発のAIサポートツール「Assistant For Investment Research(AIR、エアー)」の業務利用を開始した。運用調査の高度化・効率化を実現し、AIをパフォーマンスの向上につなげることを目指している。

 例えば、運用チームは、毎日、経済データやマーケット動向など、膨大なデータを整理して投資判断に活用している。AIを利用することで、こうした作業が短時間で済む。効率化で生まれた時間は、チーム内の議論や人間が付加価値を加える作業に費やせる。

 AIを投資の意思決定にも活用している。例えば、現在の市場環境に関する情報と過去の運用チームの投資意思決定を読み込ませ、A I に投資方針のたたき台を出させている。AIによるたたき台を参考に運用チームが更に踏み込んだ分析を行うことでより深い検討が可能になる。

 当社は、社内にAIの開発チームを持っている。社内で、AIアシスタントを開発しているので、迅速に最適な開発ができる点も強みだ。

◆日本株アクティブ運用、全てインデックスを上回る

-アクティブ運用の魅力は

荻原社長 当社では、日本株の主要なアクティブ運用戦略のすべてが過去5年間で、費用控除後でインデックスを上回るリターンを上げてきた。アクティブ運用にこだわることで、お客さまにより良いリターンを提供できた。

 一番大切にしていることは、中長期にわたって安定的にリターンを生み出すことだ。そのために、リサーチ体制や人材に対する投資を行い、報酬制度を整備している。

 今後は、運用戦略の提案力を強化していく。お客さまに対して、市場見通しに基づいた戦略を提案していくことが大切だと考えている。

 例えば、日本債券であれば、さらに金利上昇が予想されている。残存3カ月程度の短期債に投資するファンドであれば、償還までの期間が短いので金利が上昇しても債券価格の下落幅は小さくて済む。

◆成長投資で企業価値を向上させる時代に

-企業改革の注目点は

荻原社長 コーポレートガバナンス・コードの改訂が予定されている。これまでは、配当を増やしたり、自社株買いを実施したりといった、財務戦略で企業価値を上げる提案が多かった。

 これからは成長投資やM&Aを含む事業ポートフォリオの見直しによって、本質的に企業の価値を向上させるアクションが、評価される時代に変わっていくだろう。

ファンドマネジャーやアナリストは、「何に投資し、どのような企業と提携すると価値が向上するか」を日々調査している。アクティブファンドが、さらに力を発揮する局面になることが期待される。

 アクティブ運用の役割は、成長する企業を選別し、リターンにつなげていくことだ。当社の責任投資推進室では、スチュワードシップ活動を継続的に行っている。議決権行使やエンゲージメント(企業との建設的な対話)により企業価値を高める活動を、さらに強化していく。

◆SMBCグループの力を生かし、プライベートアセットに注力

-プライベートアセットの取り組みは

荻原社長 SMBCグループは昨年12月、プライベートアセット運用ビジネスのビジョンを公表した。三井住友銀行の融資ノウハウや、三井住友ファイナンス&リースが有する航空機や不動産等のアセットに関する知見、三井住友DSアセットマネジメントの運用会社としての実績を活用し、プライベートアセットを、国内資産運用戦略に次ぐ第2の柱に育てていく方針だ。

 当社は、アジアの不動産と欧州のLBO(レバレッジド・バイアウト、融資を活用した買収)に関連するプライベートデットの運用を始めた。シンガポールとロンドンが運用拠点となるため、今後3年程度で人員を拡充していく方針だ。

プライベートデットでは、グループの金融機関が発掘・保有するローンを、投資家向けの商品に組成していく。その際、利益相反になることがないように、十分に注意を払って、厳格に管理していく。
 
 上場株式や債券などの伝統資産と異なる値動きをすることが多いため、分散投資の効果も期待される。さらに、伝統資産には無かったさまざまなアセットが対象となるため、資産クラスの多様化にも役立つだろう。

 価格変動が観察しにくい資産であることやボラティリティ(価格変動)があることを十分に認識した上で、景気循環のサイクルを超えて長期に投資することで、より高いリターンが期待される。

 

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