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〔マーケット見通し〕インフレに備える資産運用を=フィデリティ投信・重見氏

2020年12月11日 10時17分

重見吉徳フィデリティ・インスティテュート マクロストラテジスト

 重見吉徳フィデリティ・インスティテュート マクロストラテジスト=「『インフレに備える』ということを、個人の資産運用の根本的なテーマに据えなければいけない」と考えている。具体的には、長期的な目線で、株式や不動産投信(REIT)等のエクィティを保有することを推奨したい。インフレを回避する資産として、インフレ連動債や金(ゴールド)、仮想通貨なども考えられるが、それぞれに固有のリスクもあるので、それを理解したうえで投資すべきだろう。

 私は「投資家はインフレのリスクを直視すべき」と考えている。言い換えれば、先進国の貨幣価値の下落リスクであり、為替の下落リスクと考えてもよい。米国の債務残高は第二次大戦時の水準に上昇しており、所得格差が広がっている。富裕層への増税がこの2つへの対処の手段だが、富裕層は外に資金を持ち出すなどするため、それは難しい。一方で、社会保障費を含む財政支出を絞れば、格差が拡大するため、政府はその財源を通貨発行に頼る状況が続くためだ。実際、今年も富裕層に負担をお願いすることはなく、貨幣の発行に依存した。

 来年(2021年)の米国経済は、今年マイナス成長になる分だけ、成長率は高めになり、企業業績についても景気敏感銘柄を中心に回復するだろう。リスクの一つは、新型コロナワクチンの普及や、米国の経済対策の動向だが、たとえ遅れたとしても、「いつかは普及するだろう」「いつかは合意するだろう」という期待がマーケットを支えるのではないか。

 もう一つのリスクは、米国のインフレ率の推移だ。来年の半ばには上昇してもおかしくないと見ている。そうなれば、米連邦制度準備委員会(FRB)がテーパリング(量的緩和の縮小)を行うとの見方が広がり、長期金利が上昇するかもしれない。これが株式市場の波乱要因になる可能性がある。ただ、こうした状況に対しては、FRBはさらに踏み込んだ緩和策を実施すると考えられるため、株価への影響は一時的なものにとどまるだろう。(了)

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