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2026年の株式市場、「慎重ながらも楽観」=欧米の景気回復で-BNPパリバAMのモリス氏

2025年11月26日 08時00分

ダニエル・モリス氏

 欧州の大手金融グループ、BNPパリバ・アセットマネジメントのチーフ・マーケット・ストラテジストのダニエル・モリス氏がこのほど来日し、2026年のマクロ経済とマーケット見通しを語った。この中で「米国と欧州経済の回復や成長が予想される中、株式市場の見通しについては、慎重ながらも楽観している」と語った。主なやりとり以下の通り。

モリス氏 2025年は、4月にトランプ米大統領が相互関税政策を公表し、経済への悪影響が懸念されたが、交渉が進む中で大きなショックにはならなかった。米国以外の各国には追加の関税コストが発生したが、米国経済には大きな負担にならなかった。

 来年(2026年)は、ポジティブな投資環境を予想している。債券より株式がアウトパフォームするだろう。株式については、IT銘柄とそれ以外の銘柄の差が広がっていくと見ている。債券市場では、ドル安や米国債利回りの上昇などを心配する声が出ているが、懸念には及ばないだろう。

◆米国経済の注目点

モリス氏 米国経済で注目しているのは、個人消費だ。「関税は消費税と同じなので消費需要が大きく減少するだろう」と言われていた。しかし、個人消費は大きく落ち込むことはなかった。今後についても大きな下落はないと予想している。

 二つ目は、設備投資だ。AI関連を中心にかなりしっかりしており、今後も継続するだろう。製造業の設備投資がマイナスになっているが、関税を避けるために米国内での生産が拡大することで、来年は製造業の設備投資もプラスに転じると見ている。

 労働市場では、移民規制の影響が懸念されている。現状を見ると移民労働者の数は減っているが、全体の労働者数は横ばいになっている。今後、賃金が上昇すれば、労働参加率が上昇することが予想されるため、移民労働者の減少分は補うことができるだろう。

 米国の財政状況だが、これ以上、悪くなることはないと見ている。トランプ大統領の目玉政策である「One Big Beautiful Bill Act(一つの大きく美しい法案)」により減税が行われるが、関税による税収増加によって相殺されることで、財政赤字が大きな問題になることはないと見ている。

 米国経済は、スローダウンしているが、来年には回復に向かうだろう。AI投資が継続し、製造業の設備投資も増加する。政策金利が引き下げられ、規制緩和が進む。さらに、関税のマイナスの影響が減少してくるためだ。

 インフレは、3%近辺に高止まるだろう。ただ、こうした状況は、株式マーケットにとっては良好な環境と言えるだろう。

◆欧州経済の注目点

モリス氏 欧州各国の購買担当者景気指数(PMI)を見ると、サービス業は、判断の基準となる50を超えており、景況感は総じて良好だ。一方、製造業は全体的に50を下回っており、景況感は良くない。

 ただ、欧州では来年、インフラ関連や防衛投資が拡大する見通しで、製造業にとってプラスに働くと見ている。欧州はインフレが落ち着いているので、欧州中央銀行(ECB)は利下げを継続するだろう。欧州企業は輸出依存度が高いため、引き続き、米国の相互関税は大きな課題になる。規制緩和を進めていくことが重要だろう。

◆株式市場の注目点

モリス氏 2026年の株式相場は、今年ほどのリターンは期待できないものの、良好な市場環境が続くと見ている。株式市場のボラティリティが大きくなり、調整が入ることも考えられるが、株価が下がった局面はむしろ買いのチャンスになるだろう。

 米国では、数社のAI銘柄が市場全体をけん引する相場になっており、テクノロジー銘柄とそれ以外の銘柄の差が広がっている。来年は、米国だけでなく新興国市場においても、AI銘柄が株価上昇のけん引役になるだろう。

 AIバブルを懸念する声があるが、今のところ、AIはバブルにはなっていないと見ている。AI関連の設備投資が拡大しており、投資に対して収益が期待できるかという点が重要になる。製薬会社がAIを使って創薬の成功確率を高めたり、テクノロジー以外の企業がAIによって人件費を引き下げたり、売上高を伸ばしたりするのであれば、投資に見合った成果を上げていると言えるだろう。

 株式のバリュエーションは高いが、利益成長も同様に伸びており、株価上昇が鈍化することで、バリュエーションが縮小し、調整が進むことも考えられる。

 米国のバリュー株、欧州株、日本株を比較すると、それぞれの利益成長の見通しはそれほど変わらない。ただ、欧州株のバリュエーションが割安で、魅力的に見える。

 

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