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サンプル(過去記事より)

WEEKLY 2021年2月21日号

中国に採掘を依存するビットコインをめぐる懸念

Bitcoin Mining Is Big in China. Why Investors Should Worry.

人権侵害が指摘される新疆ウイグル自治区が最大の産出地

ビットコインの約2割は新疆ウイグル自治区で採掘

Illustration by Peter Reynolds

ほぼどこででも存在し使える電子通貨ビットコインの批判者は、その環境への影響に焦点を当てることが多い。電気自動車大手のテスラが15億ドル相当のビットコインを購入したと最近発表し、この暗号資産(仮想通貨)の価値を急上昇させると、サステナブル投資家は「ビットコイン採掘(マイニング)によって発生する二酸化炭素排出量の水準」を声高に非難した。確かに、「マイニング」(コンピューターで複雑なアルゴリズム問題を解くことによってブロックチェーン取引の正確性を検証し、報酬として電子通貨を得る、エネルギーを大量に消費するプロセス)が環境に害を及ぼすのは否定できない。

しかし、ビットコインには投資家が倫理的な投資戦略の一部とする上で慎重にならなければならない側面が他にも存在する。大量の新しいビットコインが、100万人を超えるウイグル系イスラム教徒や他の少数民族が強制収容所に収容されている中国北西部の新疆ウイグル自治区で産出されている。ケンブリッジ・ビットコイン電力消費インデックスによると、2020年4月時点で、全ビットコイン採掘量の65%を中国が占めていた。そのうち36%を同自治区が占め、最大の生産地となっている。安価な石炭によって、マイニングをするコンピューターを動かす電力を安価に得られることがその理由だ。同地は石炭を豊富に産出するが、遠隔地にあるため、中国国内の他の地域に輸送するよりも現地で消費する方がはるかに安上がりになる。問題は、中国政府が現地の炭鉱で強制労働させていることではない。この情報自体は確認は取れていない。だが、より重要なのは、新疆ウイグル自治区で起きている残虐行為のため、同地域で生産される製品全てが高い倫理上および規制上のリスクを伴うことだ。

中国政府が「職業教育・訓練センター」と呼ぶ収容所では、警備員がウイグル人を、長衣を着た、豚肉やアルコールを避けた、あるいは祈りをささげたなどの罪で罰し、急進的な動きを抑えようと試みている。現地からの報道は困難なため確実な証拠は少ないが、収容所の生存者が組織的な拷問、強制的な不妊手術、および強姦について語っている(中国政府は残虐行為を否定している)。今年の1月、離任する直前に、ポンペオ国務長官は中国政府が同地域で大量虐殺(ジェノサイド)を行っていると言明した。後任のブリンケン国務長官も同様の見解だ。

要するに、新しいビットコインの約20%は、世界で最も深刻な人権侵害が行われている場所で産出されていることになる。

社会的な批判を受けるリスク

現在ビットコインと新疆ウイグル自治区の関係はほとんど議論されていないが、それも変わる可能性がある。ビットコイン投資を検討する一般投資家向けのファンドにとっては、悪名高いボラティリティの高さ以外にも検討すべきリスクがさらに二つある。

第一に、米国民が新疆ウイグル自治区における人権侵害を懸念していることから、同地域に関係のある資産を保有することにより、社会的な評価に深刻なダメージを受けるリスクがある。既にアクティビストが2022年の北京冬季オリンピックを「大量虐殺五輪(ジェノサイド・オリンピック)」として、これに参加するスポンサー企業を批判している。新疆ウイグル自治区をグローバルなサプライチェーンから切り離すための複数年にわたる活動も既にかなり進展している。昨年7月には、米労働総同盟産業別組合会議を含む190の団体が衣料品ブランドに対し、同自治区からの調達を12カ月以内に停止するよう要請した(2020年の世界の綿花の約20%が同地域で生産されている)。ビットコインがこうした活動の次の標的になるのは容易に想像できる。

規制リスク

投資家は規制当局の動きにも注意が必要だ。ビットコインと新疆ウイグル自治区の関係から、米国政府がさらなる監視または規制を打ち出す可能性もある。アナリストはバイデン政権がビットコインを注視していくと予想する。2月中旬にイエレン財務長官は暗号資産がマネーロンダリングやテロリストの資金調達手段として「悪用」されていると批判した。同時に、同自治区とのつながりから、ビットコインは物理的および電子的な中国製品に対する米国の依存度低下を図る商務省、国務省、および国防省のさまざまな部門に注目される可能性もある。この傾向が強まれば、財務省が同自治区で大規模な事業を行うビットコイン採掘企業に対し制裁措置を取る、またはビットコインと同地域のつながりを「調査中」という勧告を出し、国際的な金融機関に対して暗号資産を保有するさらなるリスクについて示唆する可能性がある。

1月に米国の税関が新疆ウイグル自治区産の綿花とトマト製品の輸入を禁止し、サプライチェーンから強制労働を排除するよう米国企業に指示したが、同地域からビットコインを切り離すのははるかに困難かもしれない。ブラッドダイヤ(紛争地域産のダイヤモンド)やイラン産原油とは違い、ビットコインは電子的にしか存在し得ない。数十億のビットコイン取引の公的な記録がある一方で、特定のビットコインの原産地を特定するのは極めて難しい。このため、ビットコインの全ての保有者が人権侵害との関わりを否定することが可能だが、全ての保有者が関わりがあると見なされるリスクもある。

権力の集中をなくすために開発されたビットコインが、権力の集中に取りつかれた政府が支配する中国にこれほど依存しているというのは長年の皮肉だが、中国に依存することと、新疆ウイグル自治区に依存することは違う。ビットコインを購入しない倫理上、規制上の優れた理由は多く存在するが、これに新疆ウイグル自治区も加える必要がある。

 

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