長期分散投資を補完するアクティブ戦略を提案=BNYメロン・インベストメンツ・ジャパンの榊原社長に聞く。
2025年08月27日 08時00分

米系運用会社大手BNYメロン・インベストメンツ・ジャパンの榊原正章社長は、時事通信社のインタビューに応じ、個人投資家の「貯蓄から投資へ」の流れを後押しするため、分散投資を補完し、社会課題の解決に貢献する、息の長いテーマのアクティブファンドを提供していることを紹介した。主なやり取りは以下の通り。
◆傘下の運用会社の独立性を尊重
-BNYインベストメンツの特徴は
榊原社長 BNY(ザ・バンク・オブ・ニューヨーク・メロン・コーポレーション)は、240年以上の歴史を誇る金融プラットフォーム企業だ。世界最大のグローバル・カストディー銀行を中心に、専門的な金融サービスを提供する総合的なプラットフォームを通じて、世界の投資家のニーズに応えている。
BNYインベストメンツは、グループの資産運用部門だ。マルチブティック型を展開することで、傘下にあるそれぞれの運用会社の優れた人材、独自の運用哲学、高いパフォーマンス実績、長い時間をかけて証明された運用力などを活用している。
BNYインベストメンツは、傘下にある運用会社の運用哲学やブランドを大切している。BNYインベストメンツが有するグローバルな販売網やビジネス基盤を活用することで、それぞれの運用会社がその能力を発揮し、他と一線を画す運用戦略を、世界のお客さまに提供することが可能になるためだ。
◆分散投資を補完
-日本における展開は
榊原社長 BNYインベストメンツは、グローバル市場において約2兆1000億米ドルの資産を運用しており、日本でも、機関投資家から個人投資家まで幅広い投資家に対して投資ソリューションを提供している。
日本においては、傘下の運用会社のうち、主にグローバル株式のウォルター・スコット社(英国エジンバラ)、グローバル債券のインサイト社(英国ロンドン)、株式やマルチアセット運用のニュートン社(英国ロンドン)のアクティブ戦略を、提供している。
日本では、少額投資非課税制度(NISA)を中心に、個人のお客さまの資金が市場に流入している。その内容を見ると、外国株式やグローバル株式のパッシブファンドや、一部のアクティブファンドに資金が集中する傾向が見られる。
当社は、個人投資家に向けて、ポートフォリオの偏りを補正し、分散投資を進めることの重要性を発信している。
例えば、外国株式のインデックスファンドは、「マグニフィセント・セブン」と呼ばれるような米国の大型ハイテク株式に大きく資産配分している。これまでは、こうした運用でうまくいったが、将来については、疑問が残る。
◆社会課題の解決に貢献
-具体的には
榊原社長 当社は2024年7月に米国株式に投資するアクティブ運用の「BNY米国エクセレント・バリュー・ファンド」を設定した。大型ハイテクのグロース(成長株)の反対側にあるバリュー(割安株)に投資する運用戦略だ。現在のポートフォリオに加えることで、分散投資を補完する役割を担うことが期待される。
また、2024年10月には、三井住友DSアセットマネジメントが、日本を含む世界株に投資する「ニュートン・パワー・イノベーション・ファンド 愛称:電力革命」を新規設定した。主として、電力需要の拡大や電力市場の変革にともなって恩恵を受けることが期待される、世界の株式に投資する。実質的な運用は、ニュートン社が行う。
このファンドを通じて伝えたいことの一つ目は、アクティブ運用の魅力だ。今後、何十年にわたって人類が直面する課題の解決に向けて、どのようなソリューションが提供できるかを考え、それに貢献する企業を応援することができる。
二つ目は分散投資だ。このファンドは、公益株や資本財、インカムが期待される銘柄、発電・送電・蓄電に関する新技術に関する銘柄など、大型のハイテク・グロースとは異なる銘柄を組み入れている。4月に世界の株価が急落したときも、市場全体に比べて下げ渋るようなポートフォリオ特性を示した。
個人投資家の「貯蓄から投資へ」という大きなトレンドを後押ししつつ、長期のつみたて投資で株式のリスクプレミアムをしっかりと享受してもらうため、ポートフォリオの分散効果を高める一助になるソリューションを提供していきたいと考えている。
◆長期投資で、投資成果を享受
-投資家へのアドバイスは
榊原社長 テーマ型と言うと、一般的にお客さまの中には、値上りしたら短期間でも売却しようと考える方がいるかもしれない。
しかし、これらのファンドは、10年、20年と長期に投資することができる、息の長いテーマを取り扱っている。じっくり保有することで、その間の株式のリスクプレミアムを十分に獲得することが期待される。投資家の皆さんがNISAを利用しようと考えているのと同じような期間で、長期投資を実践してほしい。
人工知能(AI)や暗号資産、電気自動車などの分野が発展するほど、電力が不足することは明らかだ。テクノロジーの進化が不可逆的と考えるのであれば、それを支える基盤として「電力革命」は不可欠だ。さまざまなイノベーション(技術革新)が実現し、それらが成果を上げるには、時間が必要だ。そうした投資の果実は、長期投資によって享受することができるだろう。