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スマホを通じて資産運用を当たり前に=「投資の民主化」を推進-PayPay証券の栗尾社長

2025年06月06日 08時00分

栗尾圭一郎氏

 スマートフォン専業大手PayPay証券の社長CEOに4月1日付で就任した栗尾圭一郎氏は、時事通信社のインタビューに応じ、「スマートフォンを通じて資産運用を日常生活の当たり前にすることで、『投資の民主化』を推進したい」と抱負を述べた。主なやり取りは以下の通り。

◆グループのシナジーを最大化、最新のテクノロジーを活用

-社長就任の抱負は

栗尾社長 私はかつて、ソフトバンクの投資部門でPayPay証券の前身であるスマホ証券「One Tap BUY」への出資を担当した。ゆかりのある会社で、社長として事業をリードできることに、やりがいを感じている。「こうなって欲しい」と考えていたPayPay証券の姿を実現していきたい。

 QRコード決済最大手のPayPayは、金融グループとして拡大していくことをメッセージとして発信し始めたところだ。PayPay証券はグループの中で、証券と資産運用の役割を担っている。PayPayのユーザー数は6900万人以上だ。一方、PayPay証券のユーザー数は約140万人であり、まだまだ拡大の余地がある。グループのシナジーを最大化して、お客さまを広げていきたい。

 当社は、「資産運用は一部の富裕層の方々だけでなく、誰にとっても当たり前にあるもの」と考えている。スマートフォンを通じて、資産運用が当たり前に取り入れられた日常を作り出すことで『投資の民主化』を推進していく。

 昨年1月に新しいNISA(少額投資非課税制度)がスタートしたことで、投資がより多くの人に広がり始めた。さらに、テクノロジーの進化を活かして、最先端の「ユーザー接点・体験(UI/UX)」を通じて資産形成の様子や魅力を分かりやすく伝えることで、投資家の裾野を拡大していきたい。

◆口座数は137万を突破、NISAは1年で42万口座

-PayPay証券の現状は

栗尾社長 2025年3月末で、開設口座数が137万口座を突破した。また、昨年から取り扱いを開始したNISAについては、約1年間で42万口座を超えた。少額から積立投資ができて、使いやすいという当社の特徴が、個人投資家に評価された結果だと考えている。

 当社のお客さまには、投資初心者も、投資リテラシーの高い人もいらっしゃるので、ワン・トゥー・ワンで、それぞれのお客さまに合った商品を提供できるように、商品ラインナップの拡充にチャレンジしていく。また、100円から投資ができて、日常生活で使っている決済アプリのPayPayからシームレス(つなぎ目なし)で証券取引ができるという手軽さについては、まだまだ磨きをかけ、高めていく。

◆ポイントで運用を疑似体験、少額から金額指定で投資ができる

-取り扱いサービスは

栗尾社長 ポイントを使って疑似運用体験ができる「ポイント運用」は、利用者数が5月に2000万人を突破した。私はソフトバンク時代に、このサービスの商品設計に携わった。興味のある商品を選んでもらい、ポイントで疑似体験してもらうことで、投資のハードルを下げることを目指した。実際に証券口座やNISAで投資を始めてもらえるように、さらに内容を充実させていきたい。

 「PayPayおまかせ運用」は、「毎日500円の投信積み立て」を簡単に始められるサービスだ。「何を選んでいいか分からない」という投資初心者の声に応えて、厳選した2ファンドから選択する仕組みにした。PayPayのアプリから、シームレスで、数ステップに設定できる。昨年10月にスタートしたが、当初の予定通り、順調に利用者数や資産額が拡大している。

 「PayPay資産運用」と「PayPay証券アプリ」の特徴は、少額から金額指定で株式を購入できることだ。「PayPay資産運用」なら100円から、「PayPay証券アプリ」なら1000円から購入できる。

 一般的に株式売買では、銘柄ごとに注文単位が決まっていて、数十万円から数百万万円といった大きな資金が必要だ。しかし、 PayPay証券では、取引所に注文を取り次ぐのではなく、PayPay証券が相手方になって「相対取引」するため、お客さまの投資額に応じて株式を購入できる。お客さまからは「自分の投資したい金額で、株式を購入できる。注文単位を調べたり、大きな資金を用意したりといった手間もかからず、便利だ」という声をいただいている。

◆お客さまに寄り添った対応、双方向のコミュニケーションを目指す

-お客さまのアフターフォローは

栗尾社長 4月にはトランプ米大統領の相互関税の発表を受けて、世界の株価が急落した。当社は、ただちに、お客さま向けに情報を発信し、冷静な対応を呼びかけた。

 ネットにはさまざまな情報が溢れたが、お客さまは適切に情報を選択し、相互にシェアして、各自で意思決定している様子がうかがえた。お客さまの金融リテラシーも向上しており、良い方向に向かっていると思う。

 当社のスタンスをアプリ上でタイムリーに届けるとともに、SNS上に掲載された投稿を読んで、お客さまが何を求めているかを把握するように努めることで、双方向のコミュニケーションが以前よりも、やりやすくなっている。

 お客さまからはコールセンターに、当社の急落時の対応について感謝のコメントをいただいた。お客さまの声を聞き、寄り添った対応を行うことの重要性を、改めて実感することができた。

 当社はお客さまにお集まりいただき、対面で「ファン・ミーティング」を開催している。お客さまそれぞれの投資経験歴に応じて、さまざまなご要望をいただくことができる。また、オンライン証券の中でどうして当社を選んだかについて、ご意見をうかがったりする。今後もお客さまの声を大切にして、PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回すことで、サービスを向上させていきたい。

◆セキュリティー対策に万全を期す

-オンライン取引で口座乗っ取りなどが発生しているが

栗尾社長 当社としては被害の報告はないが、モニタリングを強化し、セキュリティー対策を強化していく。当社は、全てのユーザーに多要素認証を入れている。サービスの中で、多要素認証を適切に活用して、お客さまに安心してお取引いただける環境を提供していく。

 

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