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退職世代へのアドバイスなど課題=「確定拠出年金に関する意識調査2024」-野村アセット

2024年12月24日 11時00分

梶田幸作主席研究員

 野村アセットマネジメントの資産運用研究所は「確定拠出年金に関する意識調査2024」をまとめた。記者会見した同研究所の梶田幸作主席研究員は、調査結果から示唆されることとして「金融リテラシーを高める情報提供の必要性に加え、『指定運用方法』の活用や、退職後の運用・取り崩しニーズへの適切なアドバイスに課題がある」と分析した。

 調査は11月上旬に、全国の20~69歳の男女約9000人に実施した。回答者について確定拠出年金(DC)の加入状況を見ると、企業型DC加入者が43%、個人型DC(iDeCo、イデコ)が38%、未加入者が30%だった。

 確定拠出年金は2001年10月に、日本に導入された年金制度だ。会社が掛金を拠出し従業員が自分で運用する企業型DCと、個人が掛金を拠出し自分で運用する個人型DCがある。掛金が所得控除されるなどの税制優遇措置を利用しながら、老後に向けて資産形成できる。2024年3月末時点で、企業型DCに830万人、個人型DCに328万人が加入している。

◆指定運用方法に、ターゲットイヤーファンドの活用を

(出所)野村アセットマネジメント「確定拠出年金に関する意識調査2024」(出所)野村アセットマネジメント「確定拠出年金に関する意識調査2024」(クリックで表示)

 調査の中で「DCで運用している商品」を尋ねたところ、若い世代でも元本確保型商品を選択している人が多いことが分かった。元本確保商品を保有している理由は「リスク資産を持ちたくないから」が半数を占め、「何を買うのが良いか分からないから」とする回答も3割程度あった。

 梶田氏は「インフレ下では掛金を元本確保型商品で運用すると十分な利回りが得られないばかりか、場合によっては利回りが物価上昇率を下回り実質的に資産が目減りするリスクをはらんでいる」と指摘。加入者が運用する商品を選ばなかった場合などに、事業主や運営管理機関が決めた商品で運用する「指定運用方法」として「ターゲットイヤーファンドを組み入れることの有効性について、事業主の理解を促進する取り組みが必要ではないか」と述べた。

 ターゲットイヤーファンドは、国内外の株式や債券等に分散投資するバランスファンドで、退職年齢に向けて自動的にリスク資産の配分を減らしてくれる。過度なリスクを取らず、年齢に合ったリスク許容度で資産運用を継続することが期待できる。

◆制度理解促進へ、情報提供に工夫の余地あり

(出所)野村アセットマネジメント「確定拠出年金に関する意識調査2024」(出所)野村アセットマネジメント「確定拠出年金に関する意識調査2024」(クリックで表示)

 調査の中で「企業型DCをどの程度知っているか」尋ねたところ、企業型DC加入者では「制度について理解している人」が67%を占めたものの、理解が不十分なまま利用している人も33%いた。また、今後配分指定したい商品の種類について、「よく分からない」「特にない」と回答した人も多かった。

 梶田氏は「事業会社による継続投資教育は行われているものの、それだけでは加入者の理解促進は不十分だ。制度の理解を促す情報提供に工夫の余地がある」と指摘した。

◆退職世代へ、資産寿命を延ばす運用・取崩しのアドバイスを

 調査の中で「今後受けてみたい投資教育の内容」を尋ねたところ、「税制メリット」「制度の基本的な内容」「金融商品の特徴」「受取時の受け取り方法」の四つがそれぞれ3割程度の回答を集めた。年齢別に分析すると、20代では「転職・離職時の資産移転の方法」、60代では「老後の資産運用や資産の取り崩し」とする回答が、ほかの世代に比べて高かった。

(出所)野村アセットマネジメント「確定拠出年金に関する意識調査2024」(出所)野村アセットマネジメント「確定拠出年金に関する意識調査2024」(クリックで表示)

 梶田氏は「少子高齢化が進む中、老後の運用や資金ニーズにいかに応えるかが課題だ。資産寿命を延ばすための運用・取り崩しについてアドバイスを求める声が大きいことがうかがえる」と話している。

 

 

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